あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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落下の王国
2007 アメリカ 洋画 ファンタジー ドラマ
作品のイメージ:癒される、おしゃれ、スゴイ
出演:リー・ペイス、カティンカ・アンタルー、ジャスティン・ワデル、ダニエル・カルタジローン

とにかく映像が美しい作品(これは、劇場で鑑賞したかったです)。CGを使わず20カ国以上でロケを敢行、タージ・マハル、万里の長城やアンコール・ワットなどの13ヵ所の世界遺産の映像が織り込まれている。オレンジの木から落ちて怪我を負い入院している少女アレクサンドリアは、足の怪我でベッドから起きられない青年ロイと知り合う。ロイは自分の即興のおとぎ話をアレクサンドリアに聞かせ、アレクサンドリアはその話にたちまち夢中になる。しかし、ロイが企んでいたこととは・・。

なぜ原題が”The Fall(落下)“なのだろうということを考えてしまった。ロイもアレクサンドリアも落ちて怪我をしたことが原因で入院している、ということだけではない。これは、ロイが企んでいることも「落下」、ロイが途中で眠りに落ちてしまうのも「落下」、そしてロイの苦しみも「落下」ということになるのだろうか。ロイの物語というのは、6人の勇者が世界を駆け巡り、悪と立ち向かうという壮大な愛と復讐の叙事詩。時にはロマンティックで時にはコミカルな物語の中に、「落ちる」イメージが何度も出てくる。つまり、全篇に亘って「落下」がモチーフとなっている。アレクサンドリアは、物語の中で主人公の死を選ぼうとするロイに対して「殺さないでほしい!」と叫ぶ。つまり、アレクサンドリアは、ロイにとって生から死へと「落下」を阻止することができる「希望」の象徴なのだと思う。

アレクサンドリア役の少女を演じるカティンカ・アンタルーは、これがデビュー作なんだとか。お世辞にもカワイイとは言い難いけど、あどけない少女らしい演技が板についている。あと、物語の異空間の中での映像美と病院内での暗いイメージのコントラスト・・これはまさに幻想と現実の対比を表わしているかのよう。北京オリンピック開会式のコスチュームを手がけた石岡瑛子さんデザインの原色の衣装も、斬新で観る者を魅了する。音楽も映像に合わせて選んだという感じで、ピッタリとはまっている。

世界遺産をすばらしい映像で観れたことだけでも、かなりお得な感じ。ストーリーについては、ちょっとフワフワとした感じで自由発想的というか変貌自在というか。強烈な色彩と絶妙なカメラワークで、ストーリー自体が霞んでしまいそうな感はあるが、「落下」というモチーフがくっきりとした線で浮かび上がっている中に、摩訶不思議な独特の世界観が展開されていて、美しい映像と相まってまさに圧巻。物語の中の登場人物に感情移入するというよりも、映像の中からあらゆる心情を拾い上げていくような感じ。

鑑賞するたびに感じ方が違ってくるかもしれない。また、受け手によって魂の揺さぶられ方が違うといった作品なのだと思う。なので、「とらえどころがない」と感じられる方もおられるかもしれないが、観客が現実と虚構が交錯する中に「何か言葉にはできないもの」を感じ取れれば、監督の狙い通りなのであろう。現実が投影させた即興のおとぎ話がアレクサンドリアの存在によって、ポジティブな展開を見せていく・・それだけでも、勇気を貰うことができる。優しさと温かさで観る者を包み込んでくれるような良作に出逢うことができた。★3.8
キューブ■レッド
2007 スペイン 洋画 ミステリー・サスペンス
作品のイメージ:ためになる
出演:ルイス・オマール、サンティ・ミラン、アレホ・サウラス、エレナ・バレステロス、フェデリコ・ルッピ

正方形の部屋で生き残りを賭けた壮絶な知能戦ドラマと言いたいところだが、数学好きの方におススメなシチュエーション・ドラマ。数学者である四人は、フェルマーという男性から謎の招待状を受け取る。湖畔の山荘に集められた四人の前にフェルマーと名乗る男性が現れて、五人で夕食を共にする。しかし、フェルマーは急用ができたと言って山荘から立ち去る。しばらくして携帯にクイズが送信されてきて、制限時間以内にそれを解かないと正方形の部屋の四方の壁が押し迫ってくるといったお話。

「CUBE」シリーズのパクリというか便乗ものだということはよく言われているので、あまり期待はしていなかったものの、やはり切羽詰まった状況でもなぜか緊迫感があまり感じられない、クイズの内容も既にどこかで聞いたことのあるようなものばかりで斬新さが感じられない、などの不満な感想が残った。また、クイズの制限時間が一分なので、観ている方としては「あぁ、そんなクイズ聞いたことがあるかも」と思っているうちに誰かが答えを言ってしまって、観客が数学者と一緒にクイズを解いていくという醍醐味も味わえず、なんとなく置いてきぼりを食らったような感が。まぁこれじゃあ、DVDスルーになったのも仕方がないでしょう。

とは言え、数学に疎い私は、この作品を通じていろいろ勉強にはなった。まず、フェルマーは過去実際に存在した数学者(1601-1665年)で「フェルマーの最終定理」というものがあるということ、それから「ゴールドバッハの予想」という未解決問題が出てくるんだけど、「ナニソレ?」と思い早速wiki で調べてみたところ、加法的整数論の問題なのだとか。概要を読んではみたものの、あまりというかサッパリ理解できなかった(トホホ・・)。というわけで、数学好きの方は、この作品を楽しめるかもしれない。しかし、いくらなんでも一分でクイズを解くのは至難の業。クイズの内容を理解した後に、一時停止のボタンを押しながら解いていくとかいう楽しみ方もあるのかも。

原題は「フェルマーの部屋」。原題をそのまま邦題にした方が、数学好きの人をターゲットにできるような気がする。それに、その方が「CUBE」シリーズのパクリという汚名も返上され、結構レベルの高い数学的シチュエーション・ドラマとして評価されるのかも。だんだんと極限状態に追い込まれる四人の人間関係と犯人の意図も次第に明かされていくところは、普通のサスペンス・ドラマとしてまずまずの出来だと思ったけど、ラストはちょっと呆気ない感じが。★2.0

―ちなみに、携帯に送信されてくるクイズの一つを、ご参考に供します―
「天国と地獄の門があり、それぞれ門番がいる。一人は正直者で、もう一人は嘘つき。一つだけ質問して、天国の門を通るには?」(といった感じです)
悲しみが乾くまで
2007 アメリカ 洋画 ドラマ ラブロマンス
作品のイメージ:ほのぼの、切ない
出演:ハル・ベリー、ベニチオ・デル・トロ、デヴィッド・ドゥカブニー、アリソン・ローマン

デンマークの鬼才スサンネ・ビア監督が、ハリウッド進出を果たした作品。オードリー(ハル・ベリー)は、夫と二人の子供たちと幸せな日々を送っていた。ある日、夫は人助けをしようとして事件に巻き込まれ、帰らぬ人となる。夫の葬儀の日にオードリーは夫の幼馴染で親友のジェリー(ベニチオ・デル・トロ)の存在を思い出し、自分の弟に彼に連絡してくれるように頼む。かつて敏腕弁護士だったジェリーは、今はドラッグに溺れるジャンキー。そんなジェリーに対して、オードリーは一緒に暮らさないかと持ちかけるのだが・・。

スサンネ・ビア監督の作品は、「しあわせな孤独」「ある愛の風景」「アフター・ウェディング」と鑑賞し本作で四作目の鑑賞となるが、共通した特徴がある。目や口をクローズアップすることによって、人物の心の機微を繊細に捉えているという点。本作においては、演出に専念したビア監督。彼女の入念な心象描写は、これまでの作品にさらに磨きがかかったものと言えよう。ストーリーだけを考えると、夫を亡くした心の隙間をジェリーの存在で埋めようとするオードリーの身勝手さが気になるところではある。

そもそも、ビア監督の作品のストーリー自体は、首を傾げたくなるところが多い(「アフター・ウェディング」のラストもそうでした)。しかし、ビア監督の作品はストーリーに焦点を当てて鑑賞するものではなく、「動きのあるドキュメンタリー」として鑑賞するものなのだと思う。喪失感や悲しみから立ち直り再生へと向かうオードリーの雑草のような姿が、いろんな角度から撮られている。ハル自身も、主人公の女性の気持ちを多様なかたちで表現するように工夫したのだとか。オードリーがジェリーに、「あなたがどのように私の助けになるかは、わからない。でも、とにかく助けてほしい。今は眠りたい」と語る表情は、ハルの迫真の演技とビア監督の精巧な演出の賜物。

もう一つの共通点は、悲しみの中にも希望が必ず描かれていること。絶望の後に再生への一筋の光が差し込んでいるところは、本作も例外ではない。ジェリーの薬物依存症の克服とオードリーの悲しみからの回復が、”Accept the Good”(善を受け入れる)というフレーズで象徴されている。二人が生きることに少しずつ希望を見出していくところで流れが収束するかたちは、「ある愛の風景」の構図とほぼ同じ。しかし、他の作品においては、男女四人の人生がある一つの事件によって狂っていくというパターンであるのに対して、本作ではオードリーとジェリーの二人が完全主体に。ジェリーのドラッグによる現実逃避、禁断症状の苦痛、そして克服へのプロセスを、オードリーの悲しみからの再生への道とダブらせるという新しいパターンが、取り入れられている。

人間が絶望から再生へ向かうという普遍的なテーマを扱いながら、映像と構図に拘ったかたちで人物の心象をこれほど繊細に描けるのは、ビア監督の他にいないのではないだろうか。ありきたりなラブ・ロマンスに持っていっていないところも、評価できる。相変わらず派手さはないしプロットに意外性もないが、「喪失」と「再生」というテーマが骨太な感じで作品に埋め込まれていて、二大俳優の円熟した演技を通じて鮮やかな光を放っているような感じ。「人は独りでは生きていけない。時には誰かを必要とし誰かに寄りかかりながら立ち直るものなのだ」という飾り気のないメッセージが、ビア監督の独特のカラーでしっかりと伝わってきた。ハリウッドでビア監督の力量を証明する作品となったのでは(次回作が楽しみです。ぜひまたハリウッドでお願いします)。

特典映像として、未公開シーンがふんだんに収録されている。ビア監督が、時間を惜しんで主役の二人をカメラで追った証し。その中に、オードリーがジェリーに「あなたが車の中の現金を盗んだと疑っていたの。ごめんなさい。これは、お詫びのしるしよ」といって手作りのものをプレゼントするシーンがあるが、これは本篇に含めても良いような気がする。オードリーが心の鎧を解くモチーフにもなるので。★3.6
ジェリーフィッシュ
2007 イスラエル, フランス 洋画 ドラマ
作品のイメージ:ほのぼの、切ない、萌え、ためになる
出演:サラ・アドラー、ニコール・レイドマン、ノア・クノラー、ゲラ・サンドラー

美しくも哀しい詩のような作品。初見では、それこそクラゲ(jellyfish)のようにフワフワしていて捉えどころがない作品だと思った。しかし、監督のインタヴューやメイキングを見てから再度鑑賞したところ、作品の観方が変わった。新しい映画鑑賞のしかたを教えてもらったような気がする。

美しい海辺の町テルアビブを舞台に、三人の女性の日常が淡々と撮られている。結婚式場で働く粗忽なバティアは、海辺で浮輪をつけた何も話さない少女に出会う。また、ケレンは結婚式を挙げたばかりだったが、いろんな災難に遭い不平不満ばかりを言っている。そして、フィリピン人のジョイは、息子をフィリピンに残したままイスラエルにやって来て、ホームヘルパーの仕事に就いている。この三人の話はそれぞれ独立したもので、特に接点はない。しかし、大切な相手に自分の気持ちをうまく伝えることができないという共通点がある。何かを介して相手とコミュニケーションをとっていく・・そんな三人の不器用さが現実と非現実とが交錯するようなかたちで描かれている。

イスラエル大使館が後援しているということもあり、イスラエルの社会背景がしっかりと盛り込まれているところも見逃せない。シリア人に対する反感、多種多様な言語と文化の混合、フィリピンなどから出稼ぎに来る外国人労働者の急増などなど。また、映像については、無駄なものを削ぎ落として必要なものだけを被写体にすることを心がけたのだとか。なるほど、繊細なカメラワークが活きて、被写体だけに焦点が絞られている。色彩へのこだわりも、活きている。現実と幻想の世界を行き来する霞がかった雰囲気を醸し出すために、登場人物の演技のエネルギーをわざと抑えるような工夫も凝らしてある。そこまで計算された演出だったとは・・。詩的曖昧さという淡い光で、作品全体を照らしているよう。

ケレンとケレンの夫マイケルがホテルで出会う女性が遺書を残して自らの命を絶つのだが、その遺書がまるで作品のテーマの中核のようになっている。「瓶の中の船は沈まない・・船底に漂うクラゲがただ揺れるだけ・・」人は過去を受け入れることにより、自由に生きることができるのだろうか?「みんな何かの第二世代よ」というセリフが出てくるが、人は過去に縛られること、過去に押し流されること、過去から現在・未来に導かれるということを超越できるのか否か・・と問いかけられているような感じ。果たして、瓶の中の船は大海原へと漕ぎ出せるのか。

浮輪の女の子が、天使のようにかわいい。そう言えば、インタヴューで「将来は女優さんになりたいの?」と聞かれて、首を横に振って「もう女優だもん」と言っていた(・・ごもっともです)。「萌え」「切ない」「ほのぼの」「ためになる」のタグを一緒に付ける作品は、そう多くないのではないか。2007年カンヌ国際映画祭で賞をとった云々は抜きにして、心にぼんやりと明かりを灯してくれるような異色作品に出遭えた。★3.3
NOISE

NOISE

評価:star3

作品のイメージ:笑えるスゴイ
テー マが興味深い作品。都会の騒音が気になってしようがない男デイヴィッド(ティム・ロビンス)は、車の警報装置などを破壊して回っていた。警察に逮捕されて も、奥さんに呆れられても破壊活動を止めず、ついには・・。気持ちは、わからないではない。騒音って気になり出したら、どうしようもないくらい気になる。 気にならないときは、全然気にならないけど。些細な音でも気になるときは、気になるもの。なので、自分の生活から騒音を一掃するなんて無理じゃないのか なぁ・・なんて思ってしまった。完全な静寂なんてあり得ないし。騒音なんてお互い様、というところもある。奥さんが弾くチェロの音も、ご近所の迷惑になっ ているかもしれない。まして、マンハッタンに住んでいれば、逃れようがない気がする。イエロー・キャブのクラクションの音が始終鳴り響いているんだから。

どちらかというと騒音に悩まされる男のobsession(強迫)について描いたサイコものかと思ったら、コメディ・タッチの社会派ドラマであった。サイ コものだったらおもしろかったのに。普通の人間なら、騒音がうるさいと思っても「ま、いいか」と思ったり、「集中しなきゃいけない仕事は後でしよう」と 思ったり、我慢したり諦めたりするんだけど、デイヴィッドって自分を誤魔化せない人間なんだと思う。だから、自分のこだわることを徹底的に追及してしまう んじゃないかと。自分を「救世主」と思い騒音を排除することにハマっていく狂気には、もの凄いものを感じた。ぜひ、精神病理学的見地から描いてほしかっ た。

拘置所の中でやっと安眠できた、というところは皮肉が利いている。でも、その後署名活動をしたりする辺りから、急に退屈になった。「音も暴力の一つ」とい うところは共感できたけど、デイヴィッドが住民の代表のようにヒロイックになってしまったところで、せっかくのテーマのおもしろさが死んでしまったような 気が。後半は痛快ではあるんだけど、うまく納まってしまっている展開によって、少し興醒めな感じがある。強烈なテーマなんだから、強烈な展開を貫かない と。「騒音だけ消しても、社会悪は他にたくさんありますよ」と意地悪くツッコミを入れたくなってしまった。

作品自体にも騒音が盛り込まれているので、結構うるさい。ボリュームを思わず落として観たほど。劇場未公開作品だけど、劇場で観ていたらさぞかし騒々し かっただろうな・・と思う。それにしても、テーマが斬新、キャストも豪華であるだけに、惜しい気がしてならない。テーマはシリアスで、タッチはコミカル。 描き方が、そもそも難しいんだと思う。いっそのこと、「人間なんて何かを排除すれば、別のことが気になってしまう生きものなんだ」という終わり方をしてく れたらよかったのに(そうすれば社会派ドラマじゃなくなっちゃいますけど)。でも、そう言えば、「そういうシニカルな意味が込められているのかな」と思わ せるシーンはあるにはあったかも。★2.6
レールズ&タイズ
2007 アメリカ 洋画 ドラマ
作品のイメージ:切ない
出演:ケヴィン・ベーコン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、デイヴィ・ダナー

冒頭は、JR福知山線の脱線事故を思い出してしまった作品。特急列車を運転中の鉄道技師トム(ケヴィン・ベーコン)は、前方の踏切線路内に車が止めてあるのを発見する。急ブレーキをかけると脱線するリスクがあることから、ブレーキをかけずに列車を減速させるが、間に合わずに列車は車を跳ねてしまう。乗客は全員無事、運転席の女性の息子デイヴィは自力で脱出するも車中の女性は亡くなってしまう、といった出だし。女性は精神的に不安定で、自殺を図ったのだ。列車を運転する側にとっては、線路内に侵入されたらどうしようもない。急ブレーキをかけるかどうかの一瞬の判断が要求されるが、脱線のリスクがある以上、むやみにブレーキをかけるわけにもいかない。乗客の命を預かっている運転士の責任の重さと常に前方に注意していないといけないという任務の大変さが、すごくリアルに伝わってきた。

トムと妻のメーガン(マーシャ・ゲイ・ハーデン)の二人には子供はなく、メーガンは末期ガンを患っていた。デイヴィは母親を跳ねた列車を運転していたトムを探しあてトムを責めるが、トム夫婦とデイヴィはやがて心を通わせるようになり一緒に住むことになる。しかし、これは違法。被害者の家族と事故の責任者である審理中のトムが無断で会うことは、禁止されている。それを承知で、余命わずかのメーガンとデイヴィの親子のような関係を続けさせようとするトムだったが・・。

全体として、いろんな要素を詰め込み過ぎのような印象を受けた。鉄道技師としての仕事の大変さと妻の病気、そしてそこに現れた被害者の子供との関係。あまり結びつかない要素をうまく結び付け過ぎているような気がしてならない。それに、「人生白か黒かで片付けられないこともある」と言いつつ違法であることを承知で三人で住み始めたものの、結局は正規の方法でデイヴィを息子として育てることを選ぶというのであれば、最初からそうすればよかったのに・・と思ってしまった。

「時間は戻らないが、戻せたとしても自分は同じ行動をとる」と言い切るトム。仕事においてはいつも理路整然としているのだが、デイヴィのことに関しては理論的には片付けられない。きっと、病気の妻を思いやってのことなのだろう。家族への愛情に関しては、理屈では片付けられないということを謳っているようで、この辺りは心を揺さぶるものがあった。行方のわからないデイヴィを探していたソーシャル・ワーカーが、幸せそうな三人を見て通報を止めるシーンも、じんわりと心が温まった。しかし、「あの車に乗っていたのが私だったら、あなたはブレーキを踏んでいた?」というメーガンのセリフは愚問。まるで、「仕事と私とどっちが大事?」と聞く愚妻のよう。このセリフはカットすべき。

演技も然ることながら、ケヴィン・ベーコンの子供と一緒にいるときの笑顔が素敵。「あぁ、いい俳優さんだなぁ」と、素直に思ってしまった。デイヴィに関しては、妙に大人びた子供だなぁという印象。未公開シーンとして、列車が大好きだったトムの子供時代の回想やデイヴィが里親のところから抜け出してトムを探しに行くシーンが収録されている。これらは本篇に含めなくて、正解だったと思う。これ以上いろんな要素を増やしてしまうと、さらに内容が散漫になってしまう。

言わば、ケヴィン・ベーコンの演技力に助けられたようなドラマ。脚本も荒削りだし、プロットの構成も上述のように多岐に亘り過ぎている。でも、クリント・イーストウッドの娘で女優でもあるアリソン・イーストウッドの初監督作品ということであれば、将来への可能性を十分に見せつけた作品だと思う。DVDスルーになったのは残念。今後に期待したい監督さんである。★3.2
あの日の指輪を待つきみへ
2007 イギリス, カナダ, アメリカ 洋画 ラブロマンス ドラマ
作品のイメージ:切ない
出演:シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー、ミーシャ・バートン、スティーヴン・アメル

実話からヒントを得て制作されたドラマ。夫を亡くしたばかりのエセル(シャーリー・マクレーン/回想シーンはミーシャ・バートン)は、突然アイルランドの青年から電話を受ける。青年は、ベルファストの丘で、エセルとテディ(エセルの昔の恋人)の名前が刻まれた指輪を見つけたというのだ。そして、そのエセルの指輪の思い出が、50年前の過去と現在が交錯する感じで展開される。その展開のしかたは、「いつか眠りにつく前に」に類似。第二次世界大戦や北アイルランド紛争などを舞台背景にしている点や、アメリカとアイルランドという二つの国を跨いでの大がかりな設定が、本作に広がりを持たせている。と同時に、少し浮いた感じもする。もう少し、戦争・紛争とドラマの内容をリンクさせる要素が欲しいところ。

ストーリーは「哀しくも美しい愛の物語」という表現が似合うのかもしれないが、ヒロインであるエセルへの感情移入が難しい作品であった。まず、「私の人生は21歳のときに終わった」というエセルの言葉に、あまり共感できない。若い頃愛する人が亡くなって、ずっとその人への想いに囚われ続けているというのはわかる。が、その後再婚もして子供もいるわけだから、そんな自暴自棄なことを堂々と口にするのは家族に対して失礼なのでは・・。心の奥底に自分の想いとしてそっとしまっておく、というのであれば理解できるが。それに、夫のお葬式だというのに、夫の死を悼むのでもなく過去の思い出にずっと浸っているなんて、独り善がりのように感じられた。

本来こういったドラマでヒロインに感情移入できないと、ちょっとキツイ。しかし、本作では、脇の男性陣であるジャック(クリストファー・プラマー)とクィンラン(ピート・ポスルスウェイト)の気持ちが痛いほど伝わってきた。友人としてエセルを長年見守り続けたジャックは、どんな思いで50年間を過ごしてきたのか。そして、ベルファストの丘でかつて墜落した飛行機の残骸を掘り続けているクィンランと指輪とのかかわり合いは・・。二人の男性の悔恨と自責の念に、胸が締め付けられるような切なさを感じた。アッテンボロー監督の豊かな心情描写には脱帽。

ともかく、長い邦題。原題は、“Closing the Ring”で、”Ring”は指輪と年輪という意味を掛けているように思う。つまり、「指輪の思い出をふっ切る」ということと「50年という年輪にピリオドを打つ」ということを指しているのか。いずれにせよ、「囚われた想いや約束からの解放」という意味に解釈。キャスティングについては、三人の名優がドラマに渋い香りを加えているような感じ(また、アイルランドの青年の祖母役であるブレンダ・フリッカーも見たことがある女優さんだなと思ったら、「ホーム・アローン2」、「評決のとき」や「ヴェロニカ・ゲリン」などに出演していたんですね)。それぞれベテランの風格が滲み出ているような演技が、味わい深い。上述のように、ヒロインのキャラクターが気になるところではあるが、もう少し年を重ねてから再見してみたいような感じの作品である。それにしても、指輪の持ち主を必死で探し続けたアイルランドの青年の律義さには感服。★3.1
いつか眠りにつく前に
2007 アメリカ 洋画 ドラマ
作品のイメージ:感動、切ない
出演:クレア・デインズ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、メリル・ストリープ、グレン・クローズ、トニ・コレット

郷愁に満ちた、そして深い感慨を覚える作品。二人の娘に見守られながら最期のときを迎えようとしていたアン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ:娘時代はクレア・デインズ)は、40年前のことを回想する。アンの40年前の記憶が、美しい映像と音楽で、観る者の心の奥までゆっくりと降りていく感じ。

生きるって大変・・何を選択しても、後悔が待っている。後悔しない人生なんてないのかな。自分の死期が迫って、今までの人生で自分が選択した道が正しかったかどうかなんて考えても、答えなんて出ない。でも、最期には、そんなことを考えてしまうのか。死の床で、自分の人生を振り返り、自分は過ちを犯したのではないかと自問自答するというのは、誰もが通らないといけないことなのかもしれない。

40年後の100歳の人口は現在の約17倍とか。でも、いくら長寿化が進んでも、人間の死亡率は100%。みんないずれ死に直面するときがくる。そんなときに、何を思うのか?生涯忘れられない人のこと?それとも、自分の人生の分岐点を振り返るのか?空しさや過去に犯した失敗が自分を襲ってくるものなのか?そんなことを、静かに語りかけてくる。そして、アンを見舞いにくるアンの昔の友達ライラ(メリル・ストリープ)の語る一言が、その問いかけに温かく答えてくれているような気がする。

とにかく豪華なキャスト全員の演技が見もの。女優陣、特にヴァネッサ・レッドグレイヴとメリル・ストリープの熟練した演技が突出している。長女役のナターシャ・リチャードソンってヴァネッサ・レッドグレイヴの本当の娘さんだったなんて知らなかった。そう言えば、「上海の伯爵夫人」にも出演していたけど、「上海の伯爵夫人」では、レッドグレイヴ姉妹に加えてナターシャも出演していたということは、ほんとに俳優一家での出演だったんだなと、今さらながら驚き。

邦題は、作品の内容そのものを表現している。もう少し抽象的な邦題であってもよかったかなと思うが、作品のイメージとのギャップはほぼゼロという意味で、まずまずといったところ。母親アンと娘たちとの対話がいま一つ物足りなく、アンとライラの関係くらいに母親と娘の心の対話が描かれているとさらによくなると思った。今まさに人生の道の分岐点にいる次女ニナ(トニ・コレット)がある一つの選択をすることと、アンの過去をダブらせる手法もあったのでは、という気もする。しかし、全体として、心に残る美しい詩を読んだような満足感が味わえる一篇である。★3.7
美しすぎる母

2007 スペイン,フランス,アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス ドラマ
作品のイメージ:切ない、おしゃれ
出演:ジュリアン・ムーア、スティーヴン・ディレイン、エディ・レッドメイン、エレナ・アナヤ

とにかくヒロインに嫌悪感を抱いた作品。富豪と結婚したバーバラ(ジュリアン・ムーア)は、一人息子のアントニーを溺愛する。そして、挙句の果てに母と息子の関係は・・といった感じのストーリー。

バーバラは、元女優ということもありプライドばかり高い、憚りもなく息子の自慢はする、感情は剥き出しにする、すぐ嫉妬する、浅はかな知識をひけらかすのだがどこか間違えている・・とまぁ、私の大嫌いなタイプの女性。「私も昔は働いたわ。でも、そこからうまく抜け出したの。男を見つけたのよ。つまりおカネってこと」という下品なことを臆面もなく息子に話して聞かせたりする(信じられない・・)。口調も、「私ってきれいでしょ」っぽい感じのしゃべり方。フランス語にコンプレックスを感じているのか、必要のないことまでフランス語で言ったりするのだが、それがまた間違っている(と、毒舌が止まらないわりには、メイキングのインタヴューまで観てしまいましたが、ジュリアン・ムーア自身は知的な美しさを感じさせる女優さんですね)。

内容的には、良い点もある。まず、プロットが複雑すぎるという理由で、制作のための資金集めがアメリカだけでは困難だったという背景があるらしい。なので、低予算で制作されたようだが、それにしてはロケ地であるスペインのすばらしい景色が味わえる。映像も華やか。また、母と息子の関係について、考えさせられた。母親の存在がアントニーにはそれほどプレッシャーになっているようには見えなかったのだが、やはり愛を「押しつけられる」と、それが鬱屈して心の中に溜まっていくのかなぁ・・なんて思ってしまった。と同時に、バーバラはアントニーを愛していながら、実はアントニーに頼っているように感じられた。つまり、アントニーがバーバラを精神的に支えていて、それがアントニーの心の負担となっていたのかな、とか。その心の重圧が、圧倒的な破壊力となり・・。

上流社会のギリシャ悲劇を観ているようなというべきか、実話をもとにしているだけに週刊誌の記事を映画化したようなというべきか。作品自体はそう酷いレベルではないと思うが、やはりヒロインに対するイラツキでストレスを感じたので、★2.0。
ゴーン・ベイビー・ゴーン

2007 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス アクション
作品のイメージ:切ない、ドキドキ・ハラハラ
出演:ケイシー・アフレック、ミシェル・モナハン、モーガン・フリーマン、エド・ハリス

「何が正義なのか」を問われているような作品。パトリック(ケイシー・アフレック)と恋人のアンジー(ミシェル・モナハン)はボストンで私立探偵業を営んでいた。そして、ある日少女誘拐事件の依頼を受けることに・・。

人は正しいと思って行動したことが、裏目に出ることもある。自分が正しいと信じることが、必ずしも人に受け入れられるとは限らない。自分の価値観では量れないものもあるし、他人の行動を自分の価値観だけで判断できない場合もある。では、人は何を判断基準に据えて生きればいいのか?法律・・?いや、人間は自分の信じたことに従って生きるしかないのか・・将来後悔しないように。

宗教的な側面を感じさせる一瞬のカットも盛り込まれていると同時に、ボストンの低所得者層の人が多く住む地区の情景をリアルに撮っている。また、母親の育児放棄という社会問題にも一石を投じていて、「子供の未来をどう守るべきか」についても考えさせられる多面的な奥深さがある。答えの出ない問題を突き付けられたようで、観た後はやるせない気持ちでいっぱいに。それにしても、複雑な味わいがあり、思考力を大いに刺激された。

本作で初めてメガホンをとったベン・アフレックと彼の弟である主演のケイシー・アフレック・・ケイシーの演技は監督のベンも称賛している。映画を撮る上で兄弟であることは忘れて、お互い割り切って仕事ができたのだとか。また、ボストンに長く住んでいたケイシーは、ボストン訛りのことばも話せるし、地元にも愛着があるらしい。ミシェル・モナハンは芯の強いタフな女性を上手く演じている。警部役のモーガン・フリーマンと刑事役のエド・ハリスの演技は、ベテランの余裕といった感じ。終盤車に乗り込んだときのモーガン・フリーマンの凍りついたような表情が忘れられない。

日本では劇場未公開だったのが不思議。「愛しき者はすべて去りゆく」の方をDVDの邦題にして欲しかった(原作は、デニス・レヘイン著「私立探偵パトリック&アンジー」シリーズの小説なんですね)。★4.1

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