あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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ドラゴン・タトゥーの女
評価:
コメント:2011 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス 出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、スティーヴン・バーコフ

スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによるベストセラー小説「ミレニアム」三部作のうち、同名タイトルの第一部を実写映画化したハリウッド版リメイク作品です。ポスターの「少女失踪から40年―二人が突き止めた身も凍る真実とは?」というキャッチフレーズに魅かれて、劇場まで足を運びました。それに、ダニエル・クレイグが目当てというのもあったんですが、その結果あまりにインパクト大なルーニー・マーラにやられてしまった感があります(アカデミー賞主演女優賞ノミネート、おめでとうございます!すばらしい…というか強烈な演技でした(汗))。

 

謎の老人が年一回必ず送られてくる郵便物を受け取り溜息をもらすとところから、お話が始まります。このシーン、一瞬なので見逃しそうになるのですが。かたや、敏腕ジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)が大物実業家のスキャンダルを暴いたばかりに、名誉棄損で有罪判決受けていまいました。そんな中、ミカエルは、40年前の少女失踪事件の真相究明を依頼され、その少女の一族の住む孤島へと向かうのです。そして、彼のアシスタントとなる天才ハッカーのリスベット(ルーニー・マーラ)を、紹介されます。

 

まず、R-15指定されているだけあって、性描写が露骨な上に猫の惨殺死体の映像なんかもあり、かなりグロテスクです。なので、絶対にお子さんと一緒には観ないでください。ストーリーで言えば完全な謎解きミステリーなわけですが、描写が半端なく過激です。その割には、ミステリーの結末自体は「身も凍る」程のものではなかったところが、ちょっと肩透かしでしたけどね。

 

ダニエル・クレイグのファンへのサービス・シーンなんかもあったりするわけですが、そんなのも消し飛んでしまうほどのルーニー・マーラ扮するダーク・ヒロインの印象が強力です。いくら天才ハッカーとは言え、そこまで個人情報をネットで調べるのはムリなのでは?とか、それにしても、ミカエルはモテ過ぎでは?とか、細かいツッコミも気にならなくなるくらい…いや、ほんとに。

 

また、失踪した少女の一族の相関図がわかりづらかったです。原作既読の方かオリジナルを観た方だと自然に入っていけるのでしょうが、いきなりだともう少し予習しておけばよかったとちょっと後悔。今回第一作目ということで、続編ももちろん制作される予定らしいのですが、あのラストでどう続編に持って行くのか、楽しみというか見物ですね(実は純粋な心を持つリスベットが可哀そうだったので、ミカエルとの関係を…おっと、ネタバレ自粛します)。

 

でも、気にかかるのは、失踪した少女とリスベットがあまりにも似ていた点…これに意味はあるのでしょうか?何かが、リスベットとミカエルの関係が相似形になっているというメタファー…?であれば、ミカエルにはリスベットの気持ちを踏みにじるようなことは絶対してほしくない、ミカエルはリスベットのかけがえのない友人でいてほしい、ミカエルもそれを理解してあげて、リスベットと簡単に性的関係を持ったり、便利なアシスタントと思わないでほしい…と切に願います。続編ですが、もちろん見届けに行きます!★3か★4か迷うところですが、続編に期待して(というか先行投資で)オマケの★4


アレクサンドリア
評価:
コメント:2009 スペイン 洋画 ドラマ 文芸・史劇 出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、マイケル・ロンズデール

アレハンドロ・アメナーバル監督が、四世紀のエジプトに実在した女性天文学者ヒュパティアの運命を描いた作品です。科学を否定するキリスト教徒と学者が対立し、ヒュパティアもキリスト教への改宗の圧力をかけられるのですが…

 

ローマ帝国末期のエジプトのアレクサンドリアで、図書館は英知の倉庫のような存在でした。その図書館長の娘で天文学者のヒュパティア(レイチェル・ワイズ)は、天文学について教鞭をとっていて、たくさんの弟子たちから慕われていました。才色兼備な彼女に憧れ敬愛の念を持つものはいても、ヒュパティアは宇宙の謎を解くことに熱中し、異性への愛に応えることはなかったのです。

 

ヒュパティアを崇める三人の男性に、注目してみました。一人目は、後にアレクサンドリアの長官となり政治のためにキリスト教に改宗するオレステス(オスカー・アイザック)。彼は、弟子であるときから積極的にヒュパティアに近づき、愛を告白します。二人目は、ヒュパティアの奴隷のダオス(マックス・ミンゲラ)。彼は、秘かにヒュパティアに恋心を抱き天文学の才能がありながらも、自分の身分を自覚し一旦は彼女から離れていってしまいます。三人目は、後に主教という要職に就くシュネシオス(ルパート・エヴァンス)。彼は、キリスト教への改宗にしか目が行かず、ヒュパティアを結果的に裏切るかたちとなります。

 

歴史、宗教、天文学という大きな材料を扱いながらも、四人の登場人物の心の機微を見事に描いているところは、さずがはアメナーバル監督!宗教戦争により人類の知恵がもみ消されるのは歴史上よくあることですが、アメナーバル監督はそれを真っ向から批判したり風刺したりするスタイルではなく、ヒューマン・ドラマの中にうまくはめ込んだという感じ。また、天文学についても、小難しいセリフは一切排除して素人にもわかりやすいような脚本となっているところが、観客に優しいです。

 

そして、キャスト。まず、ヒロイン役のレイチェル・ワイズなんですが、かなり痩せましたよね。知的で冷静な役の役柄上というのもあるのでしょうが、『ナイロビの蜂』や『ハムナプトラ』シリーズのときに比べて、なんとなく元気がないような気がしたんですが…わたしの気のせい?オスカー・アイザックについては、『ダイアナの選択』で、いい加減な男を演じていたのでそのイメージをなかなか払拭できなかったです(苦笑)。マックス・ミンゲラは、不思議な魅力のある俳優さんですね。他有名作品にも出演しているようですが、わたしは今回初めてお目にかかりちょっとキュン… 純朴な青年が、どんどんたくましく剛勇になっていく過程に、ぞくぞくしてしまいました。

 

さて、衝撃と感動のラスト。実際には、ヒュパティアは生きたまま貝殻で肉をえぐられるというひどい殺され方をされたようですが、この作品ではかなり救いのあるものになっています。こういうかたちの愛って、本当に切ないです。でも、これこそが本当の愛?!

ツリー・オブ・ライフ
評価:
コメント:2011 アメリカ 洋画 ドラマ 出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン、フィオナ・ショウ

140分の作品なのですが、観ている間に何度も眠りに落ち、ハッと目をさましては巻き戻してみて…というのを繰り返しながら、4時間以上かけてようやく鑑賞し終わりました。作品は、建築家として成功している主人公のジャック・オブライエン(ショーン・ペン)が子供の頃を回想するシーンの連写と言ってもよいでしょう。ストーリーはあってないようなもので、その思い出が美しい映像で描かれており、語りはほとんどありません。

 

ジャックは弟達とともに、敬虔なクリスチャンの家庭で、厳格な父(ブラッド・ピット)と優しい母(ジェシカ・チャスティン)によって育てられました。父は子育てに熱心で愛情深かったのですが、ときには暴力を振ったりするという極端な面があり、自分が音楽家になりそこなったことを悔いていました。そんな父が失業し それまで住んでいた家を売ることになり、その後弟が死んでしまいます。両親への想い、弟の死の悲しみが、すごく丁寧に描かれているのですが…

 

確かに、映像は美しいのです。でも、海や海の生き物、木、空、火山のマグマの映像が延々と続いて、これって、ネイチャー・ドキュメンタリー???と思ってしまうほど。また、生命の誕生のミクロの世界や恐竜まで出てきて、わたしには理解不能の領域に…。加えて、宗教的な啓示にも満ちているわけですが、途中で寝てしまったことが不謹慎で申し訳ないような気持ちになってしまいました。なので、万人受けしない作品であることは、間違いないです。

 

ジャックの心情をイメージ映像で表現したという意味では斬新な作品として、その点はそれなりの評価をすべきなのかもしれませんが、彼の心の中を詩で謳いそれを自然映像で表現してみました…という印象しか残っていません。そんな感じの作品がお好きな方には、よろしいかと…あと、ブラピのファンの方や自然映像を観るのがお好きな方とか。でも、ヒューマン・ドラマというと、ある程度主人公に感情移入できたり、共感できるセリフがあったり、心を動かされる何かがあると思うんですが、残念ながらそれはなかったです。

 

映画の冒頭に旧約聖書のヨブ記が引用されるわけですが、それが作品の中でどういう意味を持つかくらいは、何気なく解説がほしかったですね。難解な作品はたくさんありますが、それなりの起承転結はあるわけでして。「わかる人にだけわかってくれればよい」という演出のしかたは、あまり感心できません。あるいは、映像を見せて、「観る人それぞれの解釈をしてほしい」という意味なのでしょうか?というわけで、賛否両論の問題作、わたしは「否」の方に一票です。

エクスペリメント
評価:
コメント:2010 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス 出演:エイドリアン・ブロディ、フォレスト・ウィテカー、キャム・ギガンデット、クリフトン・コリンズ・Jr

作品はドイツ製サイコ・スリラー『es「エス」』のリメイクで、『es「エス」』は未見の者の感想です(オリジナルとの比較を書かれている方が多いようですが…その比較はできないので、その点ではご参考にならないかも)。高額の報酬を目当てに2週間の心理実験に参加した男性(エイドリアン・ブロディ)が、他の被験者たちとともに模擬刑務所で極限状態におかれるというもの。快・不快でいうともちろん不快に当てはまり、特に冒頭のスライドには目を覆いたくなるようなグロテスクな映像もあります。

 

スタンフォード大学での心理学の実際に行われた実験がベースになっているお話なのですが、囚人役の人たちに屈辱感を与えて、囚人役と看守役の人たちの人間性がどのように変化するかを監視カメラで撮るという、なんともエグイ実験なのです。この作品を観て、思い出したことがあります。以前研修で、パワハラのロール・プレイングというものに参加したことがあります。二人が組になり、わたしは嫌みなことを言う上司役をさせられて、教科書に書いてある通りに言っただけなのに、相手の部下役の人が本気で怒り出したのです。

 

この作品の設定においても、報酬のために実験に参加したということはみんな理性の上でわかっていても、やはり人間の感情というのはコントロールできないものというのは、火を見るよりも明らかなのではないでしょうか。屈辱感を与えられたら、「それがどんなに相手を傷つけるものなのか、身をもって知らせてやる〜」と思う気もわかりますし、そんな状況では、自分を誇示したいという人間の支配欲というのは自ずと出てきてしまうものでしょう。

 

有名大学で、わざわざ実験をするまでもないと思うんのですがね〜。それに、その実験がたとえ心理学史上に残る実験であったとしても、一度映画化すれば十分だと思うんですよね。なので、わざわざリメイクまでした意図がわかりません(オリジナル作品を観てないので、あまり偉そうなことは言えませんが…)

 

印象に残ったのは、あんなにお互い感情的になっていたにもかかわらず、実験が中止になってみんな迎えのバスに乗り込んだら、実験前と同じ見知らぬ他人になっていたことです。ロール・プレイングの世界から出てしまえば、「あれは報酬のためにやっていたんだ」って案外割り切れるものなんですね…その点はちょっと意外でした。

 

いつか観なきゃと思っていましたが、オリジナルの作品までは観る気はなくなりました。一度観たら十分ですし、同じ実験がベースになっているわけで、脚色されてはいるとしても本質は変わらないでしょうから。演技については、主役のエイドリアン・ブロディをフォレスト・ウィテカーが喰っていたように感じます。いつ見てもすばらしい演技ですね、今回も感心しました。★2と★3と迷うところですが、フォレスト・ウィテカーの演技が光っていたので、★3ということに。

J・エドガー
評価:
コメント:2011 アメリカ 洋画 ドラマ 伝記 出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、アーミー・ハマー、ジョシュ・ルーカス

1924年にFBI初代長官に任命されたジョン・エドガー・フーヴァーの半生記を、クリント・イーストウッドが監督した作品です。これだけ聞くと、重厚な伝記ドラマかと思いますよね。わたしも、そう思ってました。しかし、エドガーという人物についての知識も無しにいきなり映画を観てしまったわたしは、中盤くらいで思わずのけぞりました。わたしが知らなかっただけでwikiにも書いてあるのでネタバレでもなんでもないんですが、実は同性愛者と言われている彼の切ないお話だったのです。

 

情報は力であるということに早くから気づき、共産主義者や社会運動家などをリストアップ、さらに大統領を始めとした要人達のプライバシーを盗聴して弱みを握り、大統領ですら恐れる権力を握ったエドガー(レオナルド・ディカプリオ)。そんなエドガーには、意外な面がありました。それは、人をなかなか信用することができないということ。母親をはじめとして自分を愛してくれる人間…エドガーの方からプロポーズをしたけど結婚には興味がないので仕事であなたを支えると言ってくれた秘書のヘレン(ナオミ・ワッツ)、そしてエドガーの右腕のクライド(アーミー・ハマー)だけを絶対的に信頼していました。

 

で、クライドのエドガーに対する気持ちが中盤わかるわけですが、エドガーはそれを100%拒絶することはできなかった…それは、自分の信頼する人間が自分から離れていく不安と恐怖心からだったと思います(監督は、この作品において、彼自らが同性愛者という描き方はせず、クライドが自分から離れていくのを怖れたたため受け入れたという、そういう風にとれるような演出をしています)。50年近くもFBI長官であり続けた彼も、たくさん仲間がいたわけではなく孤独だったというわけです。

 

そして、老いとともに体力もなくなり健康を害し、クライドが「そろそろ引退をした方がよいのでは」と忠告するのですが、エドガーは自分がいなくなれば自分がつくりあげた組織がどうなってしまうのかわからないという思いから、なかなか勇退することはできなかった…これも、すごくわかります。彼は自分がつくったFBIという組織を自分の子供のように思っていたのでしょう。

 

エドガーの玉石混淆といった手段を選ばないやり方にはもちろん賛否両論ありますが、少なくともFBIという組織をつくり、犯罪捜査に最大限情報を活用することを始めた功績は偉大だと思います。しかし、そんな豪腕なやり方を貫く彼にも人間の弱さがあり、そしてどこか憎めない子供っぽい面があったのですが、そこがすごく精緻に描かれているのです。わたしは、彼のそんな面がとても愛おしく思えました。

 

三人の老けメイクが結構話題になっていますが、確かによくできています。特に、ナオミ・ワッツのメイクは自然で、上品に年を重ねたという印象。ディカプリオについては、メイクだけではなく、体型まで老いていく過程をちゃんと変化させていましたし。全体として、監督の細部へのこだわりが、随所に感じられる作品でした。

バラ色の聖戦
評価:
コメント:2011 日本 国内TVドラマ 出演:吹石一恵、芦名星、長谷川朝晴、滝沢沙織

二児の母で平凡な専業主婦(真琴・30才)が、夫の浮気をきっかけに、自分のやりたいこと(モデルになること)に挑戦するというお話です。これだけ聞けばベタな女性向けホームドラマかと思われるでしょうが、脚本がよくできているのか原作が秀逸のかそれは検証していませんが、とにかくセリフがメチャクチャ現実感あふれていて面白いのです!

 

はじめに特典映像の制作発表記者会見から観たのですが、主演の吹石一恵さんがモデルとしてランウェイを歩くパフォーマンスもあり、まさに「薔薇をまとった」出で立ちに圧倒されました。そこでは雲の上の人を見上げるような感じでしたが、その後本編が始まったらいきなり三段腹で所帯じみていたので、そのギャップに驚きましたね(役作りがスゴイという意味です)。身なりに構うかどうかで、こうも違ってくるものなんですね〜。いや〜、やっぱり人に見られることが、女性を輝かせるのでしょうか…?

 

真琴(吹石一恵)の夫の敦司(長谷川朝晴)は、「別に、奥さんにきれいになってほしいとは思わない。家でしっかり家事と育児をやってくれるだけでいい。家は仕事をする男にとって安らぎの場所なのだから」みたいな考えの古風な男性。35才なのでそんなに年をとってるわけではないのですが、いるんですよね〜、若いのにこういう考えの人。

 

で、真琴と敦司の会話がどういう風にリアルかと言えば、「わたしは生活費しかもらってなくて自分のものを買うのも遠慮してるのに、あなたは外で好きなことをしてたってわけ?!」(by 真琴:敦司の浮気が発覚したとき)とか「仕事っていうのはな、生活がかかっているもののことを言うんだよ」(by 敦司:自分の仕事と真琴の仕事が重なって、子供たちをどっちがみるかという場面)とか。まあ、どっちの言っていることもわかるので、兼業主婦の永遠のテーマなのかもしれないですね。

 

また、男性の「化粧をしない女性が好き」という言葉を、素直にとらえていいものかどうかわからなくなりました。それは、もしかして独占欲からくるもの?女性は、やはりいつまでもキレイでいるために薔薇をまとうべきでは?男性の仕事は生活がかかっているけど、女性の仕事は生活がかかっていないのだから、自分のやりたいことでも放棄すべきなの?一生籠の中の鳥のように、生きていかないといけないの?

 

というわけで、いろいろと考えさせられるセリフがテンコ盛りなのですが、人生経験豊かなモデル事務所の社長(夏木マリ)の言葉やトップモデルの茜子(滝沢沙織)の決めゼリフが、それにヒントをくれているようで、何度もストライクの球を投げられた感じです。

 

モデルの世界での足の引っ張り合いみたいなやりとりについては、「いくらなんでもここまで言う?」という凄まじいもの。普通は思っていても言わないんじゃないかなと思うようなことまで、面と向かって言っちゃったり。でも、もしかして、モデルの世界はリアルでもこうなのかしら?(何しろ縁がないものでして…)そういう意味でも、6話完結というのは、観やすくてよかったです。あまりドロドロしたのが長引くのも、飽きると思うので。個人的には、カメラマンの要潤さんにもうちょっと登場いただきたかったですね。でも、あまり無理は言えないのかな、なにしろ友情出演のようですし。

スープ・オペラ
評価:
コメント:2010 日本 邦画 ドラマ 作品のイメージ: ほのぼの、癒される、かわいい、おしゃれ、ためになる出演:坂井真紀、西島隆弘(AAA)、加賀まりこ、藤竜也

まさに、「ほのぼの」していて「癒される」作品です。阿川佐和子さんの小説を映画化。30代独身のルイ(坂井真紀)は、亡くなった両親の代わりに育ててくれた叔母のトバちゃん(加賀まりこ)と二人で暮らしていましたが、トバちゃんが年下の男性と電撃婚して家を出ていき、いきなり一人ぼっちになってしまいました。そんな彼女の元に、謎の絵描きと称する男性(藤竜也)が訪ねてきて…

 

まず、注目したのがルイとトバちゃんの住む家のインテリア。家自体はすごく古いのですが、家の中がスッキリと何気なく「おしゃれ」なのです。観葉植物がさりげなく飾ってあったり、小物一つ一つが凝っていて、雑誌の「クロワッサン」に登場しそうなシンプルながら温かみのあるデザインになっています。実生活の参考にもなるので、なんか得した気分です。

 

また、坂井真紀さんの着ている服も趣味がいい!地味ながら品が良くて…ミシンが確か部屋にあったので手づくりなのかも。そして、映画のシーンに何気なく存在する猫ちゃん…これがまたブサカワでデブなんだけど、快適な空間にマイペースで暮らしている感じが、なんとも安らぎを与えてくれます〜。

 

それにしても、この作品に登場する人の笑顔がステキなんですよ。とりわけ、ルイの家にひょんなことで転がり込む康介(西島隆弘)の笑顔が印象に残りました。大変な状況でも笑顔でいられる…そんな人って尊敬します。いつもニコニコしていられる人って努力の賜物なんでしょうか、それとも生まれつき?

 

ストーリーに大した展開があるわけではないんだけど、この作品を観て「しあわせ」について考えさせられました。子供の頃は、「しあわせ」って目に見えないけどマラソンのゴールのようなもので、そこへ向かって走って行ってゴールインしてしまえば「しあわせ」というゾーンの中で生きていけるものだと思ってました。でも、実はそんなゾーンはなくて「しあわせ」は日々の生活の中で感じる瞬間瞬間ではないかと。たとえば、おいしいスープをつくってそれを口にするとき、近くにいる人と心を交わすとき…生活の中に散りばめられている「そのとき」なのだと。

 

トバちゃん仕込みのルイのつくる温かいスープの味がつたわってくるような、そんな作品…とても美味しかったです、ごちそうさまでした。

 

※イメージの追記:「ためになる」インテリアが勉強になる 「かわいい」猫ちゃん

武士の家計簿
評価:
コメント:2010 日本 邦画 ドラマ 時代劇 出演:堺雅人、仲間由紀恵、松坂慶子、中村雅俊

作品のイメージとして「ほのぼの」と感じておられる方が多いようですが、わたしはこの作品を観て感動、最後はホロリとしてしまいました。ベストセラー小説「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」を、森田芳光監督が映画化した作品です。代々加賀藩に御算用者(今で言うと、お役所の経理係員)として仕えてきた猪山家…その八代目である直之(堺雅人)は、「そろばんバカ」とあだ名がつくほどの真面目で仕事熱心。そして、卓越した数学の才能を持ち合わせていました。しかし、融通が利かずカタブツな直之は、「自分は出世しそうにもない」と思っており、案の定不正な経理を発見してしまったときもそれを黙って見逃すことができずなかったために…。また、子供の教育においても、直之は手加減をすることはなかったのです。

 

お嫁さんのお駒(仲間由紀恵)の身になって考えると、「こんなガチガチに堅い夫ってどうかな〜」なんて思ってしまうのですが、直之は筋金入りの御算用者なんで、こういう風にしか生きられないんでしょう。そのために空気が読めなかったり人付き合いの面で損をしたりすることもあるのですが、見る人はちゃんと見てくれていているものなんですね(救われました)。良妻賢母なお駒も、そんな直之を理解しています。自分の親のお通夜でも葬式費用のそろばんをはじいているって(苦笑)、と普通思いますよね。でも、わたしは、どこかわかるような気がするんです。直之は、どうしてもそろばんから離れることができないのが。

 

「武士は食わねど高楊枝」と言いますが、直之は全くそれには当てはまらず、まさに「ボロは着てても心は錦」といった感じ。家計が厳しくなってきたときでも現実を見据えて、体裁を構わない…そんなところは幕末から明治へと通ずる、当時としては新しいタイプの人だったのだと思います。そして、その新しい考えが結局のところ、長男の成之にも引き継がれていったわけです。

 

俳優さんについては、堺雅人さんをはじめみなさん適役だったと思いますし、脚本もスッキリとまとまっているのではないのでしょうか。ただ一点だけあげるとすれば、長男・成之の回想シーンからの始まるのですが、成之のことばで観客に対して家族の紹介をします。つまり、直之のことを父と呼び、直之の父親のことを祖父と呼びながらナレーションするんで、ちょっと相関図がわかりづらかったです(主人公はあくまで直之なので)。「ナレーションしている人の父親=主人公」ということを、あらかじめ知っておいた方がよいかもしれません。

 

最後に、ホロリとしてしまった理由についてです。小説のタイトルそのものが、生涯「そろばんバカ」を通した直之の生きざまと共に力強く示されたので、心にグッと押し寄せるものがあったのだと思います。そして、始終成之の視点でストーリーが語られていて、その観客の感情はまさに成之の感情とダブらせてラストを盛り上げる展開で、素直に感動しました。原作の力(?)も無論あるのでしょうが、時代劇はあまり観ないという方にもおススメしたい佳作です。

神様の女房
評価:
コメント:2011 日本 国内TVドラマ 出演:常盤貴子、筒井道隆、松本利夫(EXILE)、津川雅彦

電気ソケットから身を起こし、松下グループ(現パナソニック)を築いた「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助さん(筒井道隆)とその妻むめのさん(常盤貴子)のお話です。裕福な家のお嬢さんとして育ったむめのが、家もない、財産もない、学問もないという幸之助と結婚したわけは、何もないところから夫婦二人で何かを築きあげていくことを望んだところ、そして幸之助の丁寧なお辞儀の仕方に惚れ込んだところでした。

 

正直なところ、いくらなんでもこのタイトルは言い過ぎではと思いましたが(『ゲゲゲの女房』に比べて)、最初から「経営の神様」であったわけではなく、夫婦での苦労もあり紆余曲折があって、そう呼ばれるようになったのだよ…という意味だったのですね、なるほどなるほど。常盤貴子さんを画面で観て、「ああ、お久しぶりです」と思わず言ってしまったのですが、それにしても大阪弁がお上手ですね、確か関西ご出身ではなかったと思うのですが。いつも前向きで、明るく、働き者の大阪の「おくはん」の感じがとっても出てて、好感が持てました。かたや、筒井道隆さんはちょっと、存在感が…。まあ、このお話は女房が主役なんで、それはそれでいいのでしょうが。

 

でも、どうなんでしょう。男性の中には、自分の仕事に奥さんが口を出すのを嫌がる男性もいらっしゃるのではないかなと。まあ、ちょっと弱気で神経質なところもある幸之助にはこんな度量の大きいおくはんがピッタリだったんでしょう。この時代なんで、もちろんお見合い(それも、メチャクチャ変わったお見合い)での結婚だったわけですが、運命の出会いだったわけですね。でも、そんな相性ピッタリの夫婦にも、何度か危機がやってきます。喧嘩をしない夫婦なんてないでしょうし、「なぜこんな人と結婚しちゃったのかしら」なんて思う場合もあるでしょう。それでも、夫婦二人三脚で歩き続けていくという強い絆が、二人の掛け合い漫才のような会話から、窺い知れます。

 

何のひねりもないし、もちろんどんでん返しもないし、想像した通りのドラマだったわけですが、夫婦二人の会話がユーモアたっぷりで本当に夫婦漫才を聞いているようで、楽しめました。三話完結なのでシリーズとしては短いですが、必死でストーリーを追ったという感じもなかったですし、いい感じでまとまっていると思います。今いろんな新しいドラマが出ている中で、NHKドラマの王道という感じで、ちょっと懐かしい雰囲気もありますね。あ、そう言えば、脚本はジェームス三木さんでしたね、納得です。

ラビット・ホール
評価:
コメント:2010 アメリカ 洋画 ドラマ 出演:ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート、ダイアン・ウィースト、タミー・ブランチャード

ニコール・キッドマンが自ら主演と制作を務め、第83回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた作品で、子供を失った一組の夫婦を描いたお話です。8ケ月前にひとり息子ダニーを失ったベッカ(ニコール・キッドマン)は何をしていてもその悲しみから逃れることができず、鬱屈した日々を送っていました。夫ハウイー(アーロン・エッカート)と共にグループ・セラピーに参加しても、心の傷が癒えることはありません。そして、妹の妊娠をきっかけにダニーのものを少しずつ処分するベッカと息子の遺品を残しておきたいと思うハウイーの間に、少しずつ亀裂が出来始めて…

 

愛する人を失った喪失感と再生を描いた作品は結構ありますが、この作品ではとりわけ静かにかつ繊細に描かれています。ベッカは、ダニーを轢いた車を運転していた高校生ジェイソンを見つけ、彼と公園で話をするようになります。本来ならば、加害者である彼のことを憎むのでは…と思うのですが、彼も同じように苦しんでいたことを知ります。そして、彼が書いた漫画「うさぎの穴」の「並行宇宙」の概念に、一筋の光を見つけます。それは、この現実の世界とは別の世界がこの宇宙には存在し、その別世界への通り穴が「ラビット・ホール」なんだというお伽話です。ベッカの枯れ果てた心は、一滴一滴のしずくによって潤いを取り戻していく…そんな静かな癒しの過程が、精巧に描写されています。

 

深い悲しみが淡々とつづられているのではなく、またドラマティックなわけでもありませんが、夜明けのようなほのかな希望を感じさせてくれます。ベッカのお母さんの言葉にも、癒されるものがあります。それが、押し付けがましい励ましの仕方ではなく、涙があふれたときにさりげなくハンカチを差し出してくれるような、そんな優しさが感じられます。母親にとって、子供を失う以上の悲しみはないと思います。そんなどうしようもない悲しみですら、忘れることはできないけど、悲しみの重さが少しずつ軽くなるものなのですね。相当重い作品だろうと覚悟して観たわけですが、特にラストのシーンが印象的で、「観て良かった」というのが正直な感想です。

 

また、子供を失った母親の悲しみだけに焦点が当てられているのではなく、この作品はそれを手探りで乗り越えようとする一組の夫婦にも焦点が当てられているところが、陳腐さを感じさせない理由なのだと思います。夫婦の絆…それは、複雑で他人にはわかることができず、簡単には切れるものではない、ということも語られているような気がするのです。

 

ニコール・キッドマンは相変わらずキレイですし、今回では演技力に加えて制作でも実力があることを実証してくれました。そして、この作品を通じて、深い悲しみを抱えている人に救いの手を差しのべてくれている…とまでいうと、言い過ぎでしょうか。でも、それはとても温かく柔らかな手のように感じるのです。

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