あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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ザ・ルームメイト
評価:
コメント:2011 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス 出演:レイトン・ミースター、ミンカ・ケリー、カム・ジガンデイ、フランシス・フィッシャー

ブリジット・フォンダ主演の『ルームメイト』1992年)のリメイクかな?と思って観てみたのですが、全然違いました。完全に、別作品です。ロスにある大学に入学したサラ(ミンカ・ケリー)は、学生寮でレベッカ(レイトン・ミースター)とルームメイトになります。二人はすぐ仲良くなるのですが、サラが別の友達と仲良くしたり、キャンパスで知り合ったスティーブン(カム・ジカンデイ)と付き合い始めると、だんだんレベッカが「自分だけの友達でいて欲しい」的な本性をあらわしていく…といった展開です。

 

それにしても、ヒロインのミンカ・ケリーが魅力たっぷりと思っていたら、2010年の世界で最もセクシーな女性に選ばれたんですって。日本人にも受けそうな、どこから見ても美女といった感じですね〜。かたや、ルームメイト役のレイトン・ミースターは、話題のテレビドラマ『ゴシップガール』に出演している有名な女優さんだとか。彼氏役のカム・ジカンデイも最近観た『エクスペリメント』に出演しているし、エロ教授役のビリー・ゼインって「どこかで観たことあるけど思い出せない〜」と思っていたら、なんと『タイタニック』でヒロイン・ローズの婚約者役だった人じゃないですか!あの忘れられない目つき…見つめられるとちょっとドキっとときめくかも…。なので、キャスティングは超豪華なわけです。

 

全米では劇場公開されて初登場一位だったらしいのですが(日本ではDVDスルー)、ルームメイトが怪しい奴でどんどん不可解なことが起こっていくってありがちなストーリーですよね。最初からラストまでの展開が完全に読めてしまうので、そういう意味では陳腐な作品と言わざるを得ません。それにしても、「サラはレベッカが異常だということに気づくのに時間かかり過ぎ!」と思いませんでした?

 

とは言え、「怖さ」は十分です。学園ものサスペンスというか、一応サイコ・スリラーのジャンルに入るのでしょうね。レベッカがサラに執着していき、彼女に近づく人間を全部排除していくという過程は背筋が凍ります。レベッカがサラにもらったピアスをそのまま耳に突き刺して付けニヤッと笑うシーンは、ゾゾッとしました。

 

但し、不満な点は、誰の視点で描いているのかが曖昧なこと。サラは鈍感でレベッカがおかしいことに気付いていないわけで、観客は「怖さ」を感じるのですが、作品中誰が怖さを感じてるのかはっきりしないのです。「レベッカが怖い」ということは、レベッカの視点でもないですし。レベッカ側から言えば、そんなにサラに執着する理由があり、その理由はラストに明かされます。サラが早めにレベッカの異常に気付いて、サラの視点で「怖さ」を表現することに徹するようにした方がよかったのでは…とか。

 

学生寮のルームメイトって、こういう作品を観るとどんな人と一緒になるかちょっと不安ですよね、しかも二人部屋だし。まあ、リアルにはここまでのケースはないと思いますけど。でも、わたしも学生のときに、ちょっと似た経験をしたことがあります。一時期いちばん仲の良かった友達なのですが、他の友達とどこかに出かけたり男の子の話をするだけで不機嫌になったりしてました(もちろん、「怖い」レベルではなかったですが)。そんな昔のことを思い出してしまうようでもあり、ある意味ストーカー的なルームメイトの怖さを描いた作品でした。★2と★3と迷うところですが、もう少しひねりが欲しかったということで、辛目の★2です。

野田ともうします。シーズン2
評価:
コメント:2011 日本 国内TVドラマ コメディ 出演:江口のりこ、増田有華(AKB48)、池谷のぶえ、杉浦一輝、安藤サクラ、越村友一、小林涼子

シーズン1がなかなか借りれないので、こちらから鑑賞しました。一話5分のショート・コメディが、20話収録されています。埼玉県にある東京平成大学文学部ロシア文学科の大学生野田さん(江口のりこ)のサークル仲間との日常やファミレスでのバイトのワンシーンのカットで、ゆる〜いノリがなんともいい感じなドラマです(「地味女子ドラマ」って言うんですね…納得です)。あと、独特の間のとり方が絶妙です。

 

シリーズごとに20話あるのでどの話がストライクかというのは人それぞれ違うと思いますが、ツボなのは第何話か覚えておいてニヤニヤ笑いながら何回も観て楽しむのもよろしいかと。ちなみにわたしのツボだったのは、「夢をあきらめないで」(第5話)と「捨てられない女」(第10話)。それに、スペシャル番組として放映された『野田とメリークリスマス』(特典映像)…さらに輪をかけたようなほのぼの感が楽しめます。

 

野田さんといつも一緒にいる重松さんがいつも野田さんやみんなのことを観察していてツッコミを心の中でつぶやくのですが、これがまた鋭い!特に、第5話でのツッコミは冴えていたと思います。野田さんのバイト仲間富沢さん(AKB48の増田有華)の彼氏(ストリート・ミュージシャン)の曲がタイトル通りの「夢をあきらめないで」で、この曲一度聴いたら耳にこびりついて離れないのです。重松さんが「一周回っていい曲に思えてきた」とボソッとつぶやき、まさに彼女の言う通りのように思えてきました。ぜひ一度聴いてみてください(出だしは引くと思いますが、なんとか最後まで聴いてあげてください!)。

 

江口のりこさんも、役にドンピシャな感じですね。「江口さんがシーズン1のときよりもさらに『野田化』している」ってメイキング映像で誰か言ってたけど、「江口さん=野田さん」みたいなイメージがわたしの中では完全に出来上がってしまっています。野田さんって、「こんな人いるよね〜」とは言えても一言で説明しづらい…そんなキャラクターです。マイペースで正直で真面目で、本人も「同年代の若者の生活というものが見当がつきません」と断言しているように完全に周囲からは浮いているんだけど、なぜかほんわかしていて空気が和む…野田さんみたいな人と友達になりたいですよ、ほんとに。また、シチュエーションも、「こういう状況ってあるある」というのをうまく再現してくれています。

 

というわけで、引き続きシーズン1も鑑賞しつつ、シーズン3を期待しちゃったりします(でも第20話の展開から、もう終わりなのかしら?)。現場の雰囲気もどんどん良くなってきているようですし、「野田エキス」をまたみんなに振り撒いてくださいね。元気を分けてもらえますので。

ナイト&デイ
評価:
コメント:2010 アメリカ 洋画 アクション ラブロマンス 出演:トム・クルーズ、キャメロン・ディアス、ピーター・サースガード、ヴィオラ・デイヴィス

プチ『ミッション:インポッシブル』のラブコメ編といった感じの作品です。ごく平凡な女性ジューン(キャメロン・ディアス)は飛行機に搭乗しようと急いでいたところ、イケメンでミステリアスな男性ロイ(トム・クルーズ)と空港内でぶつかり、それが二人の運命的な出会いとなります。なんとFBI所属のスパイであったロイ…そして、ロイの持つ永久エネルギー源「ゼファー」争奪戦に、ジューンも巻き込まれることに…

 

スピード感のある展開で、最後まで観客を飽きさせない工夫がされていたと思います。トムお得意のバイク・シーンもあり、セミプロ級の腕が光っていましたよ、今回も。ザルツブルグの景色がきれいだったし、セビリアでの牛追いのシーン(ロイがジューンをバイクの後ろに乗せて牛と共に疾走する)なんかも盛り込んであり、エンタメ的な要素は満載。スタントを使わないトムのアクションは、いつも通り見応えがありますね。でも、ジャンキーか?って思うほど睡眠薬をお互い注射し合って、起きたら全然違う場所だったりって…て、ちょっとそれはやり過ぎなのでは?!

 

タイトルの『ナイト&デイ』ですが「昼も夜も」っていう意味かと思っていたら、”Knight and Day”だったんですね(『ダークナイト』からヒントを得たのか?!)。騎士っていうのは、ロイのことなのでしょう。理想の男性を探し求めていたジューンは、白馬に乗った騎士を見つけたっていうことになるんでしょうか?うーん、まあ娯楽作品なんで、それほど深さは求めないことにします。

 

もうすっかりスパイ役が板についたトムと今回も元気娘のキャメロン、二人とも本領発揮って感じです(年齢的にキツイ部分もややありますが)。トムがイーサンに見えたり、キャメロンがチャ―リーズ・エンジェルに見えたりもしましたが、二人の息もピッタリ合っていて、観ていて気持ちがよかったです。どちらかのファンならかなり満足度は高いと思いますし、とにかく楽しい作品です。

 

しかし、それ以上のものでもそれ以下のものでもないんですよね(そういう風に感じるのは、自分の年のせいか?)。観ているときは、ドキドキ・ハラハラして難しいことは一切ないのでラクに観れますが、観た後はすぐ忘れちゃいそうな感じです。なにしろ、平凡なヒロインが陰謀に巻き込まれて、逃避行的な作品って多くないですか、ハリウッド映画に?頭をカラッポにしたいときとか、嫌なことがあってスカッとしたいときによいのかもしれませんね。また、細かいところにツッコミを入れてはいけないということを、肝に銘じておく必要があります。

 

総じて軽い作品ですが、トムとキャメロン共演のこういう作品が一本あってもいいような気はします。それにしても、なぜホール・アンド・オーツの曲「プライベート・アイズ」がいきなり挿入されるのか…(はて?)

ツーリスト
評価:
コメント:2010 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス 出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップ、ポール・ベタニー、ティモシー・ダルトン

アンジーとジョニデの二大スター夢の初共演ということで、まあそれだけでも観て損はないくらいの期待感で観ました。エリーズ(アンジェリーナ・ジョリー)は、恋人で国際指名手配犯のアレキサンダー・ピアースから手紙を受け取ります。そして、彼女はヴェネチア行きの列車に乗り、その手紙の指示通りに列車でピアースに似た男を探します。彼女が見つけて列車で同席したのはアメリカからの旅行者フランク(ジョニー・デップ)だったのですが、そんな二人は誰かから見張られている気配を感じ…

 

まず、観て損はないどころか、満足度はかなり高かったです。そのわけは、単純な理由ですがヴェネチアの景色がすばらしい、100分という短さでうまくまとまっている、セリフが気が利いている、舞踏会のシーンなどもありアンジーのファッションがオシャレ、ストーリー展開自体が古き良き映画を思い出させてくれる小気味のよさがある…などです。

 

ネタバレ厳禁といっても途中でオチがわかってしまったという方も多いようで、わたしもフランクが列車の中で読んでいた本のタイトルからわかってしまいました。おそらく、この時点でエリーズも気付いたのでしょうね。しかし、このオチがわかっていてその通りだったという薄っぺらさは感じず、むしろ爽快感の中エンディングを迎えます。

 

全体的に無難な作品なので、劇場で観るのなら初デートなんかに向いてそうですね。あと、ファッションがオシャレなところでは、男性より女性に支持されそうとも言えます。凛としたエリーズ、ちょっとダサくてひょうひょうといているフランク、それにいつもカリカリといら立っているポール・ベタニー演ずる警部が加わり、三人のアンサンブル効果がすばらしいハーモニーを奏でていました。目の肥えた映画ファンの方は物足りなさを感じられるかもしれませんが、逆にこういうヒッチコックなんかがベースになってそうなロマンティック・サスペンスなんかは、今の時代目新しいのではないでしょうか?

 

それにしても、なぜこの「旅行者」って意味のタイトル?平凡なタイトルと不釣り合いなくらいに映像は豪華だし、洒落ている…もしかして、一見ダサく見えるけれど実は実は…というのをほのめかしているタイトルだったりして。やはり、本当にステキな男性っていうのは、見た目じゃなくてこういう大きさだったりするんでしょうね。エリーズがとことん惚れ込む気持ち、わかります。男性ならこんなことを言われてみたいというセリフもあり、女性ならこんなロマンティックな演出をされてみたいという場面もあり、甘い非現実感に浸ることができます。

 

華麗な雰囲気の中、三人のステキは俳優さんがガイドしてくれるヴェネチア観光…そんな気分が味わえる粋な一本。メイキング映像も付いていますが、三人の誰かが吹いてしまうというNGシーンとかも含まれていて、和気藹藹とした現場の様子が伝わってきました。お時間に余裕があれば、こちらもおススメです。

死刑基準
評価:
コメント:2011 日本 国内TVドラマ ミステリー・サスペンス 出演:山本耕史、小澤征悦、戸田菜穂、柏原崇

タイトル通りの重いテーマなので、内容がタイトルに負けなきゃいいな…なんて思いながら観た法廷サスペンスです。法学部講師の水戸(山本耕史)と、弁護士の大伴(小澤征悦)、そして検事の麻梨子(戸田菜穂)は、一緒に法を学んだ学友でした。大伴は死刑廃止活動の扇動者として名を知られている中、大伴の妻が何者かによって殺害されてしまいます。そして、大伴は容疑者の死刑を求刑するというストーリーです。

 

死刑の基準って、いったい何なのでしょう。初犯で一人を殺害した場合、余程のことがない限り死刑判決が下ることがないというのが現状です。情状酌量の余地がない場合でも、最高で無期懲役(最近刑が重くなってきてますので)。一方で、被害者遺族側としては何の罪もない家族を殺されたら極刑を訴えるのは当然の心情、と言わざるを得ません(当事者になってみなければわからないことなので、あまり軽々しいことは言えないわけですが…)

 

とは言え、被害者家族のお気持をくんでも、わたしは死刑には反対です。理由は二つ。一つは、自分の犯した罪はやはり生きて償うべき。犯した罪の重さを自覚してその十字架を最後まで背負い天寿を全うすべきだと、そう思っています。それに、死刑を自殺に利用する人もいるかもしれませんから。二つ目は、冤罪の可能性がたとえ1%以下でもある場合。執行された後冤罪だと分かっても、取り返しがつかないからです(「冤罪」についての深い議論はちょっと置いておくとして)。そういう意味では大伴と意見が似ているわけですが、これはあくまで一般人の私見であって、違いは大伴は法にたずさわる人間であるという点です。やはり、法廷に立つ立場の人間がそれを公言するということは、相当大きな意味を持ってきます。

 

死刑の是非はそれぞれの考えがあるわけで、このドラマが死刑基準を決めてくれるわけでもなく、死刑制度についてもう一度考え直すくらいのものでしかありません。しかし、組織の命令に反してまで正義を貫こうとする麻梨子や定年間近の刑事(柄本明)の勇気ある決断には、人が人を裁く上での道徳を考えさせられます。そして、「死刑は被害者遺族の復讐のためのものではない」とう水戸のことばが、この果てしなく重く大きなテーマを一応は締めくくっています(ちょっとこじんまりまとまっちゃった感はありますが)。

 

でも、大伴の妻を殺害した真犯人の気持ち、わからなくはないです。大伴が反感を買う理由は十分にあります。イケメンで脚光を浴びている若手弁護士、そんな弁護士に上から目線で法の理論を説かれると…。小澤征悦さんは、今回の役にピッタリで、なかなかの好演でした。山本耕史さん、戸田菜穂さんや他の俳優さんを見ても、キャスティングが当たっているのではないでしょうか。それにしても、WOWOWさん、いつも大きなテーマにチャレンジなさっていますね。コンプライアンス、お得意分野とお見受けします。そういうドラマ、わたしは好みですけど。

洋菓子店コアンドル
評価:
コメント:2011 日本 邦画 ドラマ 出演:江口洋介、蒼井優、江口のりこ、尾上寛之

これは、わたしには合わない作品でした。洋菓子店「パティスリー・コアンドル」にいきなり訪れる女の子なつめ(蒼井優)のお話です。なつめは彼氏を追いかけて鹿児島から上京して来たのですが、彼氏は既にコアンドルを辞めていて、どこに行ったのかわからない状態。なつめは、彼氏を探す間そこで働かせてほしいとシェフ(戸田恵子)に頼み込みます。そして、そこで修行をしているところ、かつて「伝説のパティシエ」と呼ばれた十村(江口洋介)に出会います。十村には暗い過去があり、パティシエを辞め今ではスイーツの評論や製菓学校の講師をしていました。


何が合わないかというと、ヒロインなつめのキャラクターがかなり苦手なのです。何もできないのに前ばかり見ていて自信過剰、無神経で空気が読めない、人の心の中に土足で入ってくるようなタイプ。十村に晩餐会のためのお菓子作りを手伝ってほしいと頼み込むときも、「先生なんかやってないで、本なんか書いてないで…」とかって言ってました(苦笑)。これって、講師をしている人や作家の方に失礼なのでは?彼氏が逃げ出すのもわかるような気が…

 

それに、脚本もいちいちキツイのです。なつめのケーキを試食した十村が「ゼロ点だ」とあっさり言い放ったり、コアンドルの常連客(加賀まりこ)が「お店の評判を落とすようなものを出さないように」みたいなことを言ったり。もちろん、ケーキ職人という仕事柄きびしいことを言われるのはわかりますよ。でも、そもそも人がせっかくつくったお料理にケチをつけるって、あまりいただけません。いくらお客やその道を極めた人という立場であっても、もう少しやわらかいセリフにしてもらいたかったです。外食した場合そんなにおいしくなくても、笑顔で「ごちそうさま」というのがつくった人への礼儀だと思ってますから。

 

また、コアンドルで働いている先輩(江口のりこ)も結構意地悪なんですが(でも先輩が意地悪になる原因はなつめにあるような…)、終盤その先輩となつめが思いっきり喧嘩をするシーンは、なんかひどく醜いものを見せられた気がしました。ケーキの映像は、きれいでホントに美味しそうなんですけどね〜。ストーリーもありがちだし、江口洋介の役もパッとしなかった感じです。もっとほのぼのしていて口当たりのよいものかと思っていましたが、見かけはかわいいけど味の濃すぎるお菓子を食べさせられたようなそんな感じの作品でした。

ドラゴン・タトゥーの女
評価:
コメント:2011 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス 出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、スティーヴン・バーコフ

スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによるベストセラー小説「ミレニアム」三部作のうち、同名タイトルの第一部を実写映画化したハリウッド版リメイク作品です。ポスターの「少女失踪から40年―二人が突き止めた身も凍る真実とは?」というキャッチフレーズに魅かれて、劇場まで足を運びました。それに、ダニエル・クレイグが目当てというのもあったんですが、その結果あまりにインパクト大なルーニー・マーラにやられてしまった感があります(アカデミー賞主演女優賞ノミネート、おめでとうございます!すばらしい…というか強烈な演技でした(汗))。

 

謎の老人が年一回必ず送られてくる郵便物を受け取り溜息をもらすとところから、お話が始まります。このシーン、一瞬なので見逃しそうになるのですが。かたや、敏腕ジャーナリストのミカエル(ダニエル・クレイグ)が大物実業家のスキャンダルを暴いたばかりに、名誉棄損で有罪判決受けていまいました。そんな中、ミカエルは、40年前の少女失踪事件の真相究明を依頼され、その少女の一族の住む孤島へと向かうのです。そして、彼のアシスタントとなる天才ハッカーのリスベット(ルーニー・マーラ)を、紹介されます。

 

まず、R-15指定されているだけあって、性描写が露骨な上に猫の惨殺死体の映像なんかもあり、かなりグロテスクです。なので、絶対にお子さんと一緒には観ないでください。ストーリーで言えば完全な謎解きミステリーなわけですが、描写が半端なく過激です。その割には、ミステリーの結末自体は「身も凍る」程のものではなかったところが、ちょっと肩透かしでしたけどね。

 

ダニエル・クレイグのファンへのサービス・シーンなんかもあったりするわけですが、そんなのも消し飛んでしまうほどのルーニー・マーラ扮するダーク・ヒロインの印象が強力です。いくら天才ハッカーとは言え、そこまで個人情報をネットで調べるのはムリなのでは?とか、それにしても、ミカエルはモテ過ぎでは?とか、細かいツッコミも気にならなくなるくらい…いや、ほんとに。

 

また、失踪した少女の一族の相関図がわかりづらかったです。原作既読の方かオリジナルを観た方だと自然に入っていけるのでしょうが、いきなりだともう少し予習しておけばよかったとちょっと後悔。今回第一作目ということで、続編ももちろん制作される予定らしいのですが、あのラストでどう続編に持って行くのか、楽しみというか見物ですね(実は純粋な心を持つリスベットが可哀そうだったので、ミカエルとの関係を…おっと、ネタバレ自粛します)。

 

でも、気にかかるのは、失踪した少女とリスベットがあまりにも似ていた点…これに意味はあるのでしょうか?何かが、リスベットとミカエルの関係が相似形になっているというメタファー…?であれば、ミカエルにはリスベットの気持ちを踏みにじるようなことは絶対してほしくない、ミカエルはリスベットのかけがえのない友人でいてほしい、ミカエルもそれを理解してあげて、リスベットと簡単に性的関係を持ったり、便利なアシスタントと思わないでほしい…と切に願います。続編ですが、もちろん見届けに行きます!★3か★4か迷うところですが、続編に期待して(というか先行投資で)オマケの★4


アレクサンドリア
評価:
コメント:2009 スペイン 洋画 ドラマ 文芸・史劇 出演:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、マイケル・ロンズデール

アレハンドロ・アメナーバル監督が、四世紀のエジプトに実在した女性天文学者ヒュパティアの運命を描いた作品です。科学を否定するキリスト教徒と学者が対立し、ヒュパティアもキリスト教への改宗の圧力をかけられるのですが…

 

ローマ帝国末期のエジプトのアレクサンドリアで、図書館は英知の倉庫のような存在でした。その図書館長の娘で天文学者のヒュパティア(レイチェル・ワイズ)は、天文学について教鞭をとっていて、たくさんの弟子たちから慕われていました。才色兼備な彼女に憧れ敬愛の念を持つものはいても、ヒュパティアは宇宙の謎を解くことに熱中し、異性への愛に応えることはなかったのです。

 

ヒュパティアを崇める三人の男性に、注目してみました。一人目は、後にアレクサンドリアの長官となり政治のためにキリスト教に改宗するオレステス(オスカー・アイザック)。彼は、弟子であるときから積極的にヒュパティアに近づき、愛を告白します。二人目は、ヒュパティアの奴隷のダオス(マックス・ミンゲラ)。彼は、秘かにヒュパティアに恋心を抱き天文学の才能がありながらも、自分の身分を自覚し一旦は彼女から離れていってしまいます。三人目は、後に主教という要職に就くシュネシオス(ルパート・エヴァンス)。彼は、キリスト教への改宗にしか目が行かず、ヒュパティアを結果的に裏切るかたちとなります。

 

歴史、宗教、天文学という大きな材料を扱いながらも、四人の登場人物の心の機微を見事に描いているところは、さずがはアメナーバル監督!宗教戦争により人類の知恵がもみ消されるのは歴史上よくあることですが、アメナーバル監督はそれを真っ向から批判したり風刺したりするスタイルではなく、ヒューマン・ドラマの中にうまくはめ込んだという感じ。また、天文学についても、小難しいセリフは一切排除して素人にもわかりやすいような脚本となっているところが、観客に優しいです。

 

そして、キャスト。まず、ヒロイン役のレイチェル・ワイズなんですが、かなり痩せましたよね。知的で冷静な役の役柄上というのもあるのでしょうが、『ナイロビの蜂』や『ハムナプトラ』シリーズのときに比べて、なんとなく元気がないような気がしたんですが…わたしの気のせい?オスカー・アイザックについては、『ダイアナの選択』で、いい加減な男を演じていたのでそのイメージをなかなか払拭できなかったです(苦笑)。マックス・ミンゲラは、不思議な魅力のある俳優さんですね。他有名作品にも出演しているようですが、わたしは今回初めてお目にかかりちょっとキュン… 純朴な青年が、どんどんたくましく剛勇になっていく過程に、ぞくぞくしてしまいました。

 

さて、衝撃と感動のラスト。実際には、ヒュパティアは生きたまま貝殻で肉をえぐられるというひどい殺され方をされたようですが、この作品ではかなり救いのあるものになっています。こういうかたちの愛って、本当に切ないです。でも、これこそが本当の愛?!

ツリー・オブ・ライフ
評価:
コメント:2011 アメリカ 洋画 ドラマ 出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン、フィオナ・ショウ

140分の作品なのですが、観ている間に何度も眠りに落ち、ハッと目をさましては巻き戻してみて…というのを繰り返しながら、4時間以上かけてようやく鑑賞し終わりました。作品は、建築家として成功している主人公のジャック・オブライエン(ショーン・ペン)が子供の頃を回想するシーンの連写と言ってもよいでしょう。ストーリーはあってないようなもので、その思い出が美しい映像で描かれており、語りはほとんどありません。

 

ジャックは弟達とともに、敬虔なクリスチャンの家庭で、厳格な父(ブラッド・ピット)と優しい母(ジェシカ・チャスティン)によって育てられました。父は子育てに熱心で愛情深かったのですが、ときには暴力を振ったりするという極端な面があり、自分が音楽家になりそこなったことを悔いていました。そんな父が失業し それまで住んでいた家を売ることになり、その後弟が死んでしまいます。両親への想い、弟の死の悲しみが、すごく丁寧に描かれているのですが…

 

確かに、映像は美しいのです。でも、海や海の生き物、木、空、火山のマグマの映像が延々と続いて、これって、ネイチャー・ドキュメンタリー???と思ってしまうほど。また、生命の誕生のミクロの世界や恐竜まで出てきて、わたしには理解不能の領域に…。加えて、宗教的な啓示にも満ちているわけですが、途中で寝てしまったことが不謹慎で申し訳ないような気持ちになってしまいました。なので、万人受けしない作品であることは、間違いないです。

 

ジャックの心情をイメージ映像で表現したという意味では斬新な作品として、その点はそれなりの評価をすべきなのかもしれませんが、彼の心の中を詩で謳いそれを自然映像で表現してみました…という印象しか残っていません。そんな感じの作品がお好きな方には、よろしいかと…あと、ブラピのファンの方や自然映像を観るのがお好きな方とか。でも、ヒューマン・ドラマというと、ある程度主人公に感情移入できたり、共感できるセリフがあったり、心を動かされる何かがあると思うんですが、残念ながらそれはなかったです。

 

映画の冒頭に旧約聖書のヨブ記が引用されるわけですが、それが作品の中でどういう意味を持つかくらいは、何気なく解説がほしかったですね。難解な作品はたくさんありますが、それなりの起承転結はあるわけでして。「わかる人にだけわかってくれればよい」という演出のしかたは、あまり感心できません。あるいは、映像を見せて、「観る人それぞれの解釈をしてほしい」という意味なのでしょうか?というわけで、賛否両論の問題作、わたしは「否」の方に一票です。

エクスペリメント
評価:
コメント:2010 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス 出演:エイドリアン・ブロディ、フォレスト・ウィテカー、キャム・ギガンデット、クリフトン・コリンズ・Jr

作品はドイツ製サイコ・スリラー『es「エス」』のリメイクで、『es「エス」』は未見の者の感想です(オリジナルとの比較を書かれている方が多いようですが…その比較はできないので、その点ではご参考にならないかも)。高額の報酬を目当てに2週間の心理実験に参加した男性(エイドリアン・ブロディ)が、他の被験者たちとともに模擬刑務所で極限状態におかれるというもの。快・不快でいうともちろん不快に当てはまり、特に冒頭のスライドには目を覆いたくなるようなグロテスクな映像もあります。

 

スタンフォード大学での心理学の実際に行われた実験がベースになっているお話なのですが、囚人役の人たちに屈辱感を与えて、囚人役と看守役の人たちの人間性がどのように変化するかを監視カメラで撮るという、なんともエグイ実験なのです。この作品を観て、思い出したことがあります。以前研修で、パワハラのロール・プレイングというものに参加したことがあります。二人が組になり、わたしは嫌みなことを言う上司役をさせられて、教科書に書いてある通りに言っただけなのに、相手の部下役の人が本気で怒り出したのです。

 

この作品の設定においても、報酬のために実験に参加したということはみんな理性の上でわかっていても、やはり人間の感情というのはコントロールできないものというのは、火を見るよりも明らかなのではないでしょうか。屈辱感を与えられたら、「それがどんなに相手を傷つけるものなのか、身をもって知らせてやる〜」と思う気もわかりますし、そんな状況では、自分を誇示したいという人間の支配欲というのは自ずと出てきてしまうものでしょう。

 

有名大学で、わざわざ実験をするまでもないと思うんのですがね〜。それに、その実験がたとえ心理学史上に残る実験であったとしても、一度映画化すれば十分だと思うんですよね。なので、わざわざリメイクまでした意図がわかりません(オリジナル作品を観てないので、あまり偉そうなことは言えませんが…)

 

印象に残ったのは、あんなにお互い感情的になっていたにもかかわらず、実験が中止になってみんな迎えのバスに乗り込んだら、実験前と同じ見知らぬ他人になっていたことです。ロール・プレイングの世界から出てしまえば、「あれは報酬のためにやっていたんだ」って案外割り切れるものなんですね…その点はちょっと意外でした。

 

いつか観なきゃと思っていましたが、オリジナルの作品までは観る気はなくなりました。一度観たら十分ですし、同じ実験がベースになっているわけで、脚色されてはいるとしても本質は変わらないでしょうから。演技については、主役のエイドリアン・ブロディをフォレスト・ウィテカーが喰っていたように感じます。いつ見てもすばらしい演技ですね、今回も感心しました。★2と★3と迷うところですが、フォレスト・ウィテカーの演技が光っていたので、★3ということに。

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