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いつか観なきゃと思っていたのですが、精神的に余裕があるときにと思いこのお休みに観ました。お話は、都会の精神病棟の一室で大学の助教授だった村井(久保明)が回想するシーンからスタートします。自分たちの身に起こったことを話しても信じてもらえず、狂人扱いされるだけだと嘆いている村井。会社社長、流行作家や歌手といった著名人を含む男女7人が豪華ヨットで海に繰り出したのですが遭難し、無人島に漂着。島に近くの難破船には缶詰などの食糧が残されていたものの、「船員が日々消えていく」「キノコは食べるな」というメモがあり…
前半がやや冗長に感じられ、食糧不足という極限状態におかれたときの人間のエゴが執拗に描かれています。カビとキノコに覆われた孤島で、空腹に耐えかねて食糧を奪い合ったり、仲間を裏切ったりするものも出てくる始末。もうこんな状況では、地位も名声もお金も何も意味を持ちません。形振り構わず自分だけは助かりたいという人間の業を、凄まじいタッチで映し出しています。そして、とうとう食べてはいけない禁断のキノコに手を出すものが出てきて、食べた人からキノコ化してしまいます。
怖いというより、切ないですね。いちばん正義の人である村井だけが生還するわけですが、村井の好きだった明子(八代美紀)もキノコに手を出してしまい、結局独りぼっちで人間社会に戻ってきて何を話しても信じてもらえないわけです。こんなことなら、好きな彼女と一緒にキノコを食べてキノコ化すればよかった…この気持ち、よくわかります。
そして、最後に深いオチがあります。このオチの解釈は、ひとさまざまなようですね。本当にキノコを食べたからキノコ化したのか、人間がキノコ化したのは別に理由があるのか?原案は星新一さんということもあり(違うという説もあるけど)、人間社会を風刺した作品であると考えると、やはり後者のような気がします。どんなに正義を貫こうとしても、人間社会で生きてまたそこに戻ってきた以上、どうにも逃れることはできないものなのだと…
この作品が制作された60年代という時代を考えると、物質文明が急激に頭をもたげ人間の理性や倫理観というものが軽視され始めた時代を強烈に当てこすった作品と思われます。そういう意味では、特撮ホラーというよりも風刺というジャンルに入るような気が。とにかく、この時代には異色な作品として、さぞ際立っていたでしょうね。題材は、今観ても新鮮で洗練されています。一度は観ておく作品であることに、納得しました。
但し、映像はあまり怖くないしゾクゾクもしないしドキドキもしないんですよね。なんだろう、むしろ微笑ましい感じ。この映画を観た後ショックでキノコが食べられなくなったという人もいるらしいですが、わたしは大丈夫でした。しばらく、シメジを見たら思い出しそうですけどね。そう言えば、ドラクエに出てくる「マージマタンゴ」というキノコのモンスターがいたのを、思い出しました。あまり強くないモンスターでしたっけ。まあ、キノコより恐ろしいのは人間だということなのでしょう。
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