あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
<< October 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- | | - | - | - | - |
休暇
2007  日本  邦画  ドラマ  
作品のイメージ:切ない、ためになる
出演:小林薫、西島秀俊、大塚寧々、大杉蓮

死刑執行にあたっての手続きやプロセスが、リアルに詳しく描かれた作品。死刑囚を収容する拘置所に勤務する刑務官たちは、常に死と隣り合わせの生活を余儀なくされている。ベテラン刑務官の平井(小林薫)も、その例外ではない。職務を全うすることで、毎日を淡々とやり過ごす独身男性だった。そんな平井がシングルマザーの美香(大塚寧々)とお見合いをし、結婚することになる。なかなか打ち解けない連れ子との関係を築く間もないまま挙式を目前に控えたある日、死刑囚である金田(西島秀俊)の執行命令が下る。挙式を控えた平井は執行役から外されていたのだが、平井は自ら支え役(死刑執行補佐)を志願する・・。

 

テーマになっているのが、平井が死刑囚の支え役を引き受けることにより、一週間の休暇をとってその休暇を新婚旅行に充てるという点である。「よくそんなことが平気でできるな」という副看守長(大杉漣)に対して、「自分だってこの仕事でメシを喰っているんじゃないか」という平井。死刑囚の支え役を引き受けることにより、自分の幸せを築くための時間を手に入れることが果たして出来るのか・・というとてもデリケートな問題が、静かに提起されている。刑務官にとっては、死刑執行が毎月給料をもらう仕事なのである。

 

淡々とした流れで、漠然としたままラストを迎えるような印象。特に死刑制度の是非について語りかけるでもなく、インパクトの強い要素は何もない。一人の刑務官が家族を持つに当たり、誰もが嫌がる任務を志願し、その葛藤に悩まされながらも愚直に新しい家族に接していく・・そんな姿を真っ直ぐに描いている。現にある事実を叙述することによって、死刑執行に携わる人の苦悩とある種の「割り切り」を表しているのである。出演している俳優陣も、テンションを抑え気味で演じているのだが、それぞれの演技に深みがある。

 

刑務官たちが死刑囚に対して執行まで細かく配慮して任務を遂行していることが、よくわかる。また西島秀俊が迫真の演技が、死刑囚の精神状態を見事に表している。その点では高評価をつけたいのだが、どうしても許し難い点がある。平井は一生懸命良いお父さんになるよう努力しているのだが、肝心の美香との関係をおざなりにしているように思えてならない。連れ子がいる場合、その子と上手く関係を築いていくことも大切だが、何より大切なのは結婚相手のことを想うことではないのだろうか。美香も美香である。まず、自分の子供を大切に思って欲しいという態度が見え見えで、「子供のために再婚するの?」と思ってしまった。

 

刑務官に限らず、人の死に携わる仕事は他にも沢山ある。「おくりびと」と共通するところは、人の死を描いていると共に、死と生の両局面を対比して見せているところだ。「おくりびと」では、この対比を鮮やかに観客に見せている。人の死を目の当たりにしながら、自分は生きて行かないといけない・・刑務官たちのそんな性が穏やかな話の流れから、なんとなくぼんやりと見えてくる・・そんな印象の作品だ。平井の美香への接し方も、愚直さ故の態度ということになるのだろうか・・?この作品を「死」(刑務官としての仕事)と「生」(新しい家族との出発)という二つの部分に分けるのであれば、「死」の部分については西島秀俊や大杉漣の演技もあり秀逸なのだが、「生」の部分はそれに喰われている感じがしてならない。「死」と「生」の比重がアンバランスなのである。静かな中にも、「死」に負けないくらいの「生」を持ってきて欲しかった。★3.0

スポンサーサイト
- | 12:57 | - | - | - | - |
コメント
コメントする









 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://eigafan.jugem.jp/trackback/207
予告編は一度も目にしてないし内容についてもキャスティングとあらすじくらいしか知らなかったけど、小林薫さんと西島秀俊さんの主演作品というだけで私は観る気満々。原作は文豪・吉村昭の同名短編小説。休暇欲しさに死刑執行に立ち会うことになったある刑務官の苦悩を
カノンな日々 | 2009/07/16 4:38 PM
公式サイト。吉村昭原作、門井肇監督。小林薫、西島秀俊、大塚寧々、大杉漣、柏原収史、りりィ。死刑執行の業務の後にその特別休暇を利用して結婚式と新婚旅行をするという奇妙な刑務官の物語。
佐藤秀の徒然幻視録 | 2009/07/16 6:12 PM
監督:門井肇出演:小林薫、西島秀俊、大塚寧々、大杉漣、柏原収史鑑賞劇場 : TOHOシネマズららぽーと横浜公式サイトはこちら。<Story>刑務官の平井(小林薫)は、職場で当たり障りのない付き合いを続け、40歳を越えた今も独身だった。ある日、姉の紹介でシン
NiceOne!! | 2009/07/16 7:04 PM
映画[ 休暇 ]を有楽座で鑑賞。 世の中的には、いかに泣けるか、いかに盛り上げるかが良しとされる映画のなかで、こんなにも静かなのに、メッセージ性のある作品も珍しい。個人的には、こんな映画がもっと出てくればいいのにと、思ってやまない。技のある役者陣、小
アロハ坊主の日がな一日 | 2009/07/17 12:19 AM
生を奪い、生を得る  これまで独身のままだった中年の刑務官・平井は、子連れの未亡人・美香との結婚を決断する。しかし、連れ子である6歳の達哉との関係も打ち解けないまま挙式の日がやって来る。母の死の際、有給を使ってしまっている平井は新婚旅行へも出かけられ
CINECHANの映画感想 | 2009/07/18 12:10 AM
生きることにした。人の命とひきかえに。 希望を奪われた死刑因と彼らの未来を奪う使命を託された刑務官の苦悩。 小林薫、西島秀俊ら実力派俳優が顔を揃えた人間ドラマ。死刑囚の体を支えて刑の執行を補佐する“支え役”を務めることになった刑務官の葛藤と、周囲
パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ | 2009/07/18 2:27 AM
 

(C) 2017 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.