あず沙の映画レビュー・ノート

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夏目漱石のこころ
1955  日本  邦画  ドラマ  文芸・史劇  
作品のイメージ:切ない
出演:森雅之、新珠三千代、三橋達也、安井昌二

明治時代の文豪である夏目漱石の言わずと知れた代表作を、市川崑監督が映画化したもの。市川崑監督作品ということで、原作に忠実に描かれていることを期待して鑑賞。というのも、「ユメ十夜」の第二夜は市川崑監督作品であり、深いテーマがシンプルに表現されているという実績があるため。二十年以上も前に読んだ原作を読み直すのではなく、今回は映像で観てみることにした。しかし、痛感したのは、映画と文学作品というのはやはり別個のものであるということ。(何しろ遠い昔読んだ記憶が頼りなので、あまり細かい比較はできませんが)、大筋は変わっていないものの、原作から削除されているものもあり、付け加えられているエピソードもあるような気がする。

 

日置(安井昌二)にとって、野淵先生(森雅之)は最も尊敬する先生であった。先生には美しい奥さん(新珠三千代)がいて、子供はなく二人だけで静かに暮らしていた。日置は、先生の孤独な境涯に同情を寄せるようになり、やがて先生の徹底した人間嫌いの思想の根本をつきとめようとさえ感ずるようになった。日置は大学を卒業し、先生に就職口を依頼して重病の父の看病に信州の田舎に帰ったが、その間に先生は自殺してしまう。先生は明治天皇崩御の報を聞いて、明治の精神の終焉を淋しく悟りながら逝ったのだった。先生の自殺の本当の原因は・・?そして、それは美しい奥さんと関係があるのか・・?日置宛の先生の遺書には、先生には過去に梶(三橋達也)という親友がいたこと、そして梶と先生と奥さんとの間に三角関係にあったことが綴られていた・・。

 

「死ぬ前に一人でいいから人を信じたい」・・人間はエゴイスティックな生き物だと知りながらも、真剣に人を信じたいと思っていた先生の気持ちが心に突き刺さる。人間の利己的な部分を嫌というほど知りながらも、自ら親友を裏切ったことで自分の中にも潜む利己性に気付いた先生は、自分の犯した罪に苛まれる。先生の心の葛藤が、繊細かつ丁寧に描かれている。1955年の作品なので当然モノクロだが、なぜか今見ても古臭さが感じられないのは、テーマ自体が人間にとって普遍的なものであるからだろう。しかし、明治天皇崩御の報を聞いて、明治の精神の終焉を悟って死を選ぶという部分については、やはり時代の違いを感じざるを得ない。また、「先生と奥さんは残念ながら子宝に恵まれなかった」とはっきり言ってしまっている行があり、これは現代では受け入れられないのだろうなぁ・・という気がする。増して、先生は自分が自殺した後に奥さんはどうなってしまうのだろう・・ということは、考えなかったのだろうか・・など疑問に思ってしまう点もある。それも、人間の心の弱さ故・・ということになるのだろうか。

 

新珠三千代の下宿屋のお嬢さん時代の演技が、初々しい。原作とちょっと違うと感じたのは、お嬢さんが梶に対して親しげに喋りかけたりしている点。美しいお嬢さんに親しげにされたら、ストイックな梶の心が傾いてしまうのも仕方がないようがして、梶が気の毒に思えた。梶の死を先生が一人で背負いこんでいるが、後に先生の妻となるお嬢さんは梶の死の原因については全く気が付いていないようだ。純真無垢さ故の残酷さというか、無神経さを感じずにはおれない。三橋達也は、自分の生き方を頑固に貫こうとする一人の無骨な男を上手く演じている。哲学を専攻し仏典の研究以外には、なんの興味も持っていないような狷介な梶だったが、自分の気持ちをコントロールできないことに苦悩する。森雅之は渋くてカッコいいのだが、回想シーンはいただけない。若く見せようと髪型を変えたりしているのだが、それが変に浮いてしまっていて、違和感を感じてしまった。

 

社会に出て働かない先生が神経衰弱に悩む様子などが効果的に描出されているので、先生が自殺する伏線もきちんと映像化されていると言える。原作を再読するような感覚で本作を鑑賞したのだが、やはり細かい点においては原作を再読して本作との違いを比較してみたくなった。★2.8

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