あず沙の映画レビュー・ノート

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海を飛ぶ夢
2004  スペイン  フランス  洋画  ドラマ  
作品のイメージ:感動、切ない
出演:ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、マベル・リベラ

自ら死を望んだ実在の人物ラモン・サンペドロの手記「レターズ・フロム・ヘル」をアレハンドロ・アメナーバル監督が映画化したドラマで、人間の生と死について真摯に考えさせられた作品(実際、「日本尊厳死協会」のサイトを訪問して、自分も会員に登録しようかどうか真剣に考えました)。第77回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。海に飛び込んで頭を強打し、首から下が不随になってしまったラモン(ハビエル・バルデム)は、26年間をベッドの上で過ごし、自ら命を絶つ決断をする。人権支援団体を通じて知り合った弁護士のフリアは、ラモンの話を聞くうちに強く彼に惹かれていく。不治の病を患ったフリアは、やがて自らも死を望み、ラモンの死を手伝うことを考えるのだった。

 

「どうしていつも微笑んでるの?」という問いかけに対し、「自分の意思で体を動かすことができないので、いつも微笑んでいるしかないんだよ」というラモン。ラモンが夢の中で海の上を飛ぶシーンや、そして夢の中でフリアとキスするシーンには、胸が締め付けられるような思いがした。「自殺しようとしたけど生き残ってしまった人間は罪に問われないが、死にたいと願う人間に手を差し伸べた人間は罪になる」というセリフは、尊厳死を法律の立場からだけで考えることの無意味さを、アメナーバル監督が必死に伝えようとしているメッセージの一端のように思える。

 

アメナーバル監督の死生観が痛いほど伝わってきて、人が生きるという意味、心が自由になるために死を選ぶという選択について、鑑賞中も鑑賞後も深く考えさせられた。「生きることは権利であり、義務ではない」というテーマについては、賛否両論あるであろう。この「尊厳死」という問題については、いくら議論を重ねたところで答えがでるものではない。しかし、自分がラモンの立場だったらと考えた場合、やはり心の自由を選択するのではないだろうか。

 

人間のエゴイズムだと言われるかもしれないが、やはり生きることは権利なのだと思う。自分がもし不治の病気にかかり死期が迫っているという診断がされた場合には、死期を引き延ばすためだけの延命装置は一切行ってほしくない。また、長期間にわたって植物状態に陥った場合については、一切の生命維持装置を取り外してほしいと思う。非常にデリケートな問題ではあるけれど、家族に負担をかけて心の自由を奪われてまで生きていたくはないと思う。

 

しかし、これに対していろいろな考え方があるのも事実。の死の選択に厳しく反対する兄のホセや、ラモンに影響を受け成長していく甥のハビなどもいる。また、カトリックの信仰の篤いスペインでは、自殺は許されない行為。「命が代償の自由は自由ではない」と主張する神父。彼を生かそうとする人、生きることに手を差し延べる人、愛する人、理解して死を手伝おうとする人、さまざまな立場からさまざまな考え方が提示されているようで、作品の奥深さと監督の作品への思い入れを改めて実感した。愛するからこそ、死を手伝うという考え方も理解できる。愛していなければ、きれいごとだけを並べていればよい。でも、愛していれば、その人の苦しみがわかり「死ぬことによって生きたい」という願いを叶えてあげたいと思える。

 

それにしても、55歳の役を演じている35歳のハビエルの演技は秀逸。特殊メイクの威力もあるのだろうけど、表情だけであれだけ自然に50代の役をこなせるって本当に素晴らしいの一言に尽きる。重いテーマの中にも、彼の笑みと朗らかさ、そして海の美しい映像が観る者に救いを与えてくれているような気がする。実話ベースという作品ではあるが、それを見事に脚色する叙情的かつ美しい色どりが、いつまでも心に残る余韻を与えてくれた。★4.6

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コメント
from: にゃむばなな   2009/06/10 3:55 PM
TBありがとうございました。

尊厳死という難しい題材を扱いながら、監督が声高に自分の意見を押し付けるのではなく、観客に「まずは考えてください」と投げかけるスタンスが凄くいいですよね。

私はこの映画に出会ったとき、ちょうど愛犬がいい歳で自然死か安楽死のどちらを選んであげるべきかなど、いろいろ考えましたよ。
from: あず沙   2009/06/10 4:21 PM
にゃむばななさん>コメント、ありがとうございます。いつもTBでお世話になっています。いろんな立場から、それぞれの意見が出されていて、本当に考えさせられる作品だと思います。安易な感動を狙ったものではなく感慨深い作品に仕上がっているところが、さすがアメナーバル監督ですよね。一生忘れられない作品に出会うことができました。私はペットを飼っていないのですが(将来飼いたいと思っています☆)、どうしてあげたら一番よいのか、すごく思い悩むお気持ちがよくわかります。
from:   2009/06/12 9:25 PM
TBありがとうございます。
尊厳死というテーマで、いろいろ考えさせられるお話でした。
ハビエルの演技はすばらしく、見ごたえのある作品だったと思います。
from: あず沙   2009/06/13 6:17 AM
花さん>こちらこそ、コメントありがとうございます。ストーリーの中で自然に問題提起がされていて、これほど考えさせられる作品はそれほどないのでは、と思います。最近たまたま「宮廷画家ゴヤは見た」も鑑賞しましたが、ハビエルのそちらでの演技もすばらしいものでした。いい役者さんですよね☆
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Akira's VOICE | 2009/06/10 10:40 AM
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めでぃあみっくす | 2009/06/10 4:13 PM
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