あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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宮廷画家ゴヤは見た
2006 アメリカ スペイン 洋画 ドラマ 文芸・史劇
作品のイメージ:切ない、ためになる
出演:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド

ストーリー展開はそれほど複雑ではなく、時代に翻弄された二人の男女の運命がゴヤの目線で濃厚に描かれた歴史ドラマ。しかし、二人のラブ・ロマンスではない。18世紀末のマドリッド。国王カルロス四世の宮廷画家であるゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は、富裕な商人の娘イネス(ナタリー・ポートマン)とロレンソ神父(ハビエル・バルデム)の肖像画に取りかかっていた。その頃、カトリック教会ではロレンソ神父が指導する異端審問の強化が図られ、イネスがユダヤ教徒の容疑により審問所で取調べを受けることになる。しかし、19世紀に入って、ナポレオン率いるフランス軍がスペインを占領。ナポレオンの兄のジョセフが国王として君臨しスペインを統治。異端者審問は廃止され、捕えられていため囚人はすべて解放されることに。

宮廷に仕える身でありながらスペインのカトリック教会に対する反逆精神を持っていたゴヤは、教会を批判した版画をたくさん描いていた。オープニングとエンディングでは、その数々の版画が映されている。実際、イネスも居酒屋で豚肉を食べなかっただけで、ユダヤ教徒であるという嫌疑をかけられてしまったわけで・・。そこからもユダヤ教徒やプロテスタントを迫害しようとするカトリック教会の絶大な権力と暴走を、伺い知ることができる。

ミロス・フォアマン監督は、「ゴヤは時代の観察者」と表現し、ゴヤをまるでジャーナリストのような位置付けでこの作品を制作したのだとか。信仰心が強すぎるため広い心で自分と違う価値観を認めることができなくなり、それが徐々にエスカレートしていくカトリック教会のある意味狂信的な純粋さといったところを、鋭く描いていると言える。ゴヤは意識的に政治や宗教に関わっていたのではなく、あくまでも普通の人々の視点から時代を見ている。

もっとゴヤの内面が表現されていたり他の代表作(「裸のマハ」など)もたくさん出てくるのかと思いきや、時代の観察者という立場での風刺画や肖像画などの作品が中心となっていて、その辺りがやや物足りなかった。ゴヤは女性を美しく描いたのに、世の中を見る目は厳しかったということのよう(それにしても、王妃の馬上姿についてだけは、かなりブサイクに描いていましたね)。時代を民衆のスタンスから見届けてそれを後世の人々に残すことがゴヤの使命だったと考えると、それも納得できるものなのかも。

釈放された後のイネスについては、ナタリーの迫真の演技と言えるものなのだが、身も心もボロボロになっていく娘という感じで、あまりに哀れで観ているだけで正直つらかった。ゴヤが天使のモデルにしたというくらい美しかったイネスの姿はもはや・・。また、ナタリーが一人二役で、勝ち気な娼婦アリシアとイネスを絶妙に演じ分けているところが凄い(アリシアとは誰なのかについて、ネタバレになるため以下省略)。ハビエルも、時代の流れに翻弄されながらもうまく世渡りをして生き延びる野心溢れるロレンソ神父を、かなり余裕たっぷりに、しかも役柄を自分のものにしながら演じているといった感じ(人間の生臭さが感じられる点は、相当なレベルの高さです)。

映像については、すべてスペインロケを敢行したことが奏功し、かなり見ごたえのあるものに仕上がっている。音楽については、さすがに「アマデウス」ほどではないが、自然にその時代の映像と融合しているといった印象。「黒い絵」と呼ばれる14点の作品など、ゴヤについてもっと知識があればより楽しめた作品だと思うので、ゴヤについて自分なりにもう少し勉強してから再見してみたいと思う。★3.6
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コメント
from: chikat   2009/05/28 9:58 PM
こんばんは
コメントありがとうございました。

この作品、賛否両論あったようですが、私はナタリーの体を張った演技に打たれました。
なぜかナタリーはこれでラジー賞候補になったんですよね。
日本人と欧米人の見解の相違なんでしょうね。
from: あず沙   2009/05/29 12:54 AM
chikatさん>こちらこそ、コメントありがとうございます。ええええー!ラジー賞候補だったんですか(驚)。確かに観ていて哀れな感じがしましたが、ナタリーはこういう演技もできるんだという証明になったような気がします☆
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公式サイト。原題:GOYA'S GHOSTS、ミロス・フォアマン監督、ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド、ミシェル・ロンズデール。尋問と告白が政治力学でころころと立場も内容も変わってしまう。原題・GOYA'S GHOSTSは
佐藤秀の徒然幻視録 | 2009/05/28 10:47 AM
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映画鑑賞★日記・・・ | 2009/05/28 1:07 PM
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さむこの部屋 | 2009/05/28 3:23 PM
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Diarydiary! | 2009/05/28 7:31 PM
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いやいやえん | 2009/05/28 7:37 PM
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Mooovingな日々 | 2009/05/28 8:30 PM
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2009 映画観てきましたっ! | 2009/05/28 9:22 PM
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みはいる・BのB | 2009/05/28 9:22 PM
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Art- Mill | 2009/05/28 9:34 PM
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ハピネス道 | 2009/05/28 10:13 PM
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首都クロム | 2009/05/28 10:45 PM
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再出発日記 | 2009/05/30 12:23 AM
GOYA'SGHOSTSそれは、立ち入り禁止の、愛。映時間114分製作国アメリカ/スペイン公開情報劇場公開(ゴー・シネマ)初公開年月2008/10/04ジャンルドラマ/歴史劇【解説】「アマデウス」「カッコーの巣の上で」の巨匠ミロス・フォアマン監督が、スペインの天才画家ゴヤが活
CinemaCollection | 2009/05/30 1:35 AM
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タイトルだけなら・・・誰しも思ったんじゃないかしら?市原悦子 家政婦は見た!なんてノリ先日観た『おろち』はまぁ、そーいう感じなんだけど(笑)今回の『宮廷画家ゴヤは見た』はちょっと違うのでタイトルに騙されませんように。世間の風刺画を描く一方で宮廷画家とし
黒猫のうたた寝 | 2009/06/03 10:52 PM
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ジャスの部屋 -映画とゲーム- | 2009/06/04 11:40 AM
<鑑賞>試写会 <日本公開日>2008年10月4日 <製作年/製作国>2006/アメリカ・スペイン <監督>ミロス・フォアマン <出演>ハビエル・バルデム/ナタリー・ポートマン/ステラン・スカルガルド/ランディ・フェイド <原題>“GOYA'S GHOSTS” <STORY>
caramelの映画日記 | 2009/06/28 9:56 PM
★天才画家が見たのは、異端審問がもたらした悲劇でした★「家政婦は見た!」でも「宮廷画家は見た!」でも、そこにある事実は見てはいけないような醜悪なもの…。あぁ…世の中、見ちゃいけないものが多すぎます。でも見ちゃいけないものほど覗きたくなる。そう「他人の
SCARECROW'SROOM | 2009/10/12 9:14 PM
 

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