あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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この自由な世界で
2008 イギリス イタリア ドイツ スペイン 洋画 ドラマ
作品のイメージ:切ない、ためになる
出演:キルストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワフ・ジュリック、ジョー・シフリート

「ファーストフード・ネイション」の英国版とも言えるような、先進国が弱い国の人たちを低賃金または無報酬で働かせて搾取するといった社会問題をテーマにした作品。ケン・ローチ監督の強いメッセージが、織り込まれている。アンジーは、夫とは別れ息子のジェイミーを両親に預けて働くシングルマザー。今まで散々組織に踏み躙られてきた彼女だったが、会社に不当解雇されたことを機に、それまで培ってきた経験とノウハウを生かして人材会社を立ち上げる。それは、移民労働者を集めて、日雇いなどの職業を紹介するという事業。斡旋する移民労働者の数は増えてはいくものの、資金繰りは悪化。アンジーは非合法的な仕事をする方が儲けにつながることを知り、次第に彼女の感覚は麻痺していく。人を踏み台にすることを、だんだんなんとも思わなくなってしまうのであった。

先進国の市場原理型資本主義の世の中においては、低賃金労働者の需要が多くなる。すると、日雇い労働者、非正規労働者として働く人が増え、中には不法就労する人も出てくる。職業紹介所自体が、不法就労を斡旋する場合すらある。日本も、その例外ではない。2008年の金融危機に端を発した世界的不況で、真っ先にリストラの対象になるのは派遣社員の人たち。派遣切りが進む一方で、全体の仕事は減るわけではない。そうすると、職場環境はさらに劣悪になり、労働条件は悪化するばかり。

タイトルである「この自由な世界で」の「自由」とは、いったい何なのか?「自由」とは何をしても構わないがすべて自己責任でやり遂げることだとすると、自分さえ生き延びれば他の人はどうなってもいいということになるのか?また、事業に成功すればよいが、失敗してしまえば無限に責任を被ることになってしまう。もともとは弱い立場の人を助けたいと思って会社を立ち上げたアンジーだったが、そんなアンジーですら息子と自分が食べていくため、競争社会で生きていくために、悪の道に染まってしまうのだ。そう考えると、「『自由』を求めて」とか「『自由』で豊かな社会」とか良い意味で使われることの多いが、自由は人間の「権利」であると同時に恐ろしい反面を持っている「重い義務」でもあるように思えてしまう。

はっきり言って、後味はよくない作品。答えの出ない問題を思いっきり目の前に突き付けられたようで、やるせない気持ちでいっぱいになった。市場原理の資本主義を非難しているのか・・?だからと言って、社会主義が良いのだとも言っているわけでもないし・・。アンジーと一緒に会社を立ち上げたパートナーが、アンジーが最初人助けのために移民の一家を自分の家に泊めてあげていたとき「あなた、マザー・テレサにでもなったつもり?そんなことをしていたら、キリがないわよ」と言っていたが、資本主義の考え方で言えばまさに「キリがない」のである。だからといって、完全に見て見ぬふりをするわけにもいかない。

では、いったいどうすれば・・?そもそも、みんなで一緒に幸せになる、なんてできないのだろうか?みんなで一緒に幸せになろうとするから、みんなが破綻するものなのだろうか?獲るか獲られるか・・攻めないと攻められる・・これは抗うことのできない鉄則なのか?人は、人を救うことはできないのか?人は、自分自身しか愛せないものなのか?捨身飼虎という言葉があるが、そんな自己犠牲の愛は、神か仏の愛であろう。しかし、人は、人を思いやることはできる。人の存在を感じ、喜びや悲しみを共にすることができる。その心の広がりは、弱肉強食という資本主義社会の中に生きていかざるを得ない人間の孤独の中に射し込む一筋の光明のようである。ストーリーを追いながら、そんなことを漠然と考えさせられた。そういったドラマだけに、映像、脚本、音楽などについてはほとんど印象に残らず、ドラマのメッセージだけが太い一本の柱のようにそそり立っている感じがした。★3.4
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コメント
from: chikat   2009/05/28 10:09 PM
TBありがとうございます。
この傾向の作品、私には少し苦手なものがあって、かなり退屈でした。
ドキュメンタリー風な作品で、ドキュメンタリーではなかったというのが救いでした。
やるせないですよね…。
from: あず沙   2009/05/29 12:59 AM
chikatさん>確かにメッセージがはっきりしすぎていて、映画としてはどうかという感じもしますね。いろいろ考えさせられるテーマなので、ためになる作品ではありますが☆
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