あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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千の風になって「ゾウのはな子」
2007  日本  国内TVドラマ  
作品のイメージ:泣ける、切ない
出演:反町隆史、北村一輝、甲本雅裕、純名りさ

フジテレビで放送の「生と死と命」を描いたスペシャルドラマ「千の風になって」シリーズの第二弾。太平洋戦争中、戦争で動物園が破壊され猛獣たちが園外に出て人々を襲う可能性を考え、上野恩賜動物園は猛獣たちの毒殺を決行。しかし、「花子」を含む賢い象たちは、毒入りの餌を食べなかった。近隣の住民に不安を与えることから、銃殺という方法は避けた。そして、水と食べ物を与えないという「餓死させる」方法を選ぶことに。そんな残酷なことはできないと反発するゾウの飼育係(反町隆史)。しかし、空襲を受けている状況を考え、それに従うより他はなかった。この話は、有名な物語。しかし、このドラマは、もう一匹のゾウの「はな子」にも焦点を当てて描かれている。花子の死から二年後に終戦を迎え、再びタイから子象を迎え入れることに。そのゾウの名前を一般募集したところ、「はな子」という名前に集中する。しかし、はな子は・・。

 

花子の飼育係(反町隆史)からゾウの飼育を引き継いだ新しい飼育係(北村一輝)。北村一輝は、はな子に精一杯の愛情をもって接し自分の人生をはな子に捧げる飼育係を、好演している。「動物は人間の都合はわからない」・・もっともだと思う。人間の都合で日本に連れて来られ、ある意味見せ物にされ、戦争になって手に負えなくなったから殺されてしまう・・それも最も残酷な方法で。そんな花子の前例があり、前任者の花子への想いを引き継いでいたからこそ、新しい飼育係は全身全霊ではな子に向き合うことができたのではないだろうか。

 

戦時中どうしても猛獣を殺す必要があるのなら、近隣住民に事情を説明して銃殺するという方法はとれなかったのだろうか。銃殺なら苦しむ時間も短い。毒殺では、20分以上ももがき苦しんだ動物もいれば、もがき苦しんだ上に死なない動物もいて結局ワイヤーで首を絞めたというのを観て、あまりにもかわいそうで居た堪れなかった。銃殺がだめなら、安楽死という方法はなかったのだろうか(医学的にまだそういう時代ではなかったのか)。どうしても殺さないといけないのなら、なるべく苦しまない方法をとって欲しかった。動物を愛していれば、苦しむ姿を観るほど辛いことはないのだから。

 

動物も(植物も)愛情をかけて育ててやれば、それが絶対に通じる。井の頭公園の動物園で今もなお元気でいるはな子(60歳)。飼育係の人に愛情いっぱいに育てられたお陰で、こうして長生きをしているのだろう。しかし、自分自身は動物園にはあまり行かない。檻の中に閉じ込められて、人間の都合で見せ物にされている動物たちを見て、なんとなくかわいそうになってしまうから。動物たちは何を思っているのだろう。野原を駆けたいと思っているのではないか・・。人に見られるのを嫌だと思っているのではないか・・・人に管理される自分の生活を嫌に思っているのではないか・・などと考えてしまうのだ。その点、サファリ・パークなどはなんとなく救われるのだが、やはり町の中につくろうとすると普通の動物園になってしまうのだろう。その中にあって、一生懸命に自分に向き合ってくれる飼育係に巡り合えた動物たち(花子もはな子も)は、まだ幸せなのかもしれない。ラストに出る字幕「動物園は平和な国にしかありません」というメッセージが、心に刻み込まれた。★3.3

長い長い殺人
2007  日本  国内TVドラマ  ドラマ  ミステリー・サスペンス  
作品のイメージ:ドキドキ・ハラハラ
出演:長塚京三、仲村トオル、谷原章介、平山あや

登場人物たちの財布が語り手となり事件の真相を徐々に解き明かしていくという点においては、斬新な作品。ひき逃げ事件で死亡した男には、妻を受取人とした28千万円もの保険金がかけられていた。妻法子には愛人がいて、その愛人である塚田(谷原章介)の婚約者にも保険金が掛けられやがて殺害される。見るからに怪しすぎる塚田と法子は、一躍ワイドショーを賑わすようになる。だが、二つの事件当時、彼らには鉄壁のアリバイがあった・・。

 

ドラマWで、しかもキャストも豪華。しかし、パッとしないにも程がある。まず登場人物が多すぎて、作品全体が散漫になっている感がある。登場人物のつながりが徐々に見え、ある一つの真実へと導かれていくところはなかなか面白いと思ったが、その過程があまりにも長過ぎる(タイトル通り・・ということで)。そして、その分内容も希薄になっている。正統派ミステリーに分類されるのであろうが、語り手が財布であるということ意外には、これといった特徴があげられない凡庸なミステリーに留まっている。これは、原作を映像化することが、難しかったのではないだろうか。宮部みゆきの原作自体は(未読ですが)、それなりの作品なのかもしれない。

 

財布が語り手になっているということで、「お金」に絡んだエピソードが添えられているのだが、事件を追う響刑事(長塚京三)が住宅ローンに困っている事などは、事件捜査の展開とは特に関係がない。すべての登場人物に「お金」に纏わるエピソードを添えるというのであればそれも独創的かもしれないが、必ずしもそうなってはいない。なので、どうも中途半端感がぬぐえないのである。また、近年加熱するマスコミのワイドショーなどへの風刺になっているととれる点もあるのだが、それも尻切れトンボで終わってしまっている。

 

「旧友の財布」の章においては背筋がゾクっとした。が、それが谷原章介の怪演へとつながっていない。確かに、塚田の底知れない不気味さは伝わってくるが、残念ながら怪演とまでは言い難い。長塚京三のベテラン刑事役が渋いのと、仲村トオルの私立探偵役が好い味を出している。妻に死なれて生きる意欲も無くした私立探偵が、事件に関わることにより再び仕事をする意欲を取り戻すといったプロットが、上手い具合に作品に収まっている。登場人物の一人一人が丁寧に描かれているので、群像劇としてのレベルは低くはない。だが、ミステリーとしては・・。特に、ドラマWはどれもクオリティーが高いということと、これだけ豪華なキャストを揃えておきながら・・という点を考えると、やや残念な出来栄えである。

 

また、現実離れしすぎているというか、実際こんなことがあるのかなぁ〜、という疑問も持ってしまった。動機にイマイチ説得力がないのである(ネタバレになるので、これ以上具体的には書かないことにします)。ミステリー故にリアリズムを追及する必要はないが、ストーリーの持って行き方が強引というか突飛なところが、ちょっと気になる。普通のTVドラマとしては及第点であるが、ドラマWであるという期待が大きかっただけに、ちょっとキビシめの評価の★2.3
震度0
2007  日本  国内TVドラマ  
作品のイメージ:切ない、ドキドキ・ハラハラ、ためになる
出演:上川隆也、國村隼、渡辺いっけい、西村雅彦

横山秀夫がまたもや組織の内部(今回は警察)を抉るように描いた、第一級の社会派サスペンス・ドラマ。震度6の激震が阪神・淡路地方を襲ったさなか、N県警本部の警務課長である不破(西村雅彦)が消えたとの連絡が、不破の妻(余貴美子)から警務部長の冬木(上川隆也)に入る。県警の事情に精通し人望も厚く真面目な不破が、いったいなぜ姿を消したのか・・?失踪するはずのない県警幹部が突如として姿を消し、舞い戻るはずのないある犯罪者が戻ってきた。キャリア組、準キャリア組、叩き上げ、それぞれの県警幹部たちの思惑が複雑に交錯する・・。個人の保身や組織の面子ばかりを考える幹部は、それぞれいったいどのような動きをするのか・・?

 

キャリアを頂点とする権力闘争の縮図のような警察組織。そこに六人の男たちの思惑が渦巻く。事件への関与が疑われ自分の保身のことばかりを考えている椎野本部長(渡辺いっけい)、組織のナンバー2でありそれを鼻にかけている若きエリートの冬木警務部長、ノンキャリアの叩き上げでノンキャリアとしての最高峰の地位まで上り詰めた藤巻刑事部長(國村隼)、隠れた野心家である間宮交通部長、震災への援助部隊の指揮をとる実直な準キャリアの堀川警備部長、女好きの倉本生活安全部長、そして失踪した不破警務課長の六人だ。なお、キャリア組は、椎野本部長と冬木警務部長の二人。この六人の男たちに、女を武器に情報を収集する総務課秘書の佐和子(戸田菜穂)、組織で働いたことがあり組織内部のことにある程度精通している不破の妻の静江や、その他の妻たちまでもが絡んでくる。

 

それにしても、なんと皮肉なタイトルなのだろう。震度6の地震でたくさんの人が亡くなっている中、「どうでもよい」個人の利害ばかりを考えて動く警察幹部たちを風刺したものと思われる。冬木の口から「真実はわかった。しかし、正義が見えてこない」という言葉が語られるのだが、まさに横山秀夫がこの小説を通じて訴えたいことが、この言葉に凝縮されていると言えるだろう。保身、野心、天下りへの固執、不倫、組織を守るための事実の歪曲・・。しかし、これは警察への風刺だけに留まらず、人間が形成する組織というものへの風刺なのだと思う。

 

ラストは観客に問題提起をするかたちで終わっていて、原作とは若干違う。本作も同じ「ドラマW」である「ルパンの消息」に、負けず劣らず上手くまとまっている。それぞれの思惑と徐々に明らかになっていく真実が、絶妙に絡まりながらのストーリー展開。警務課長を探すにあたってのそれぞれの立場をふまえての心理戦が繰り広げられるわけだが、その過程が丁寧に描かれているといった印象。脚本も秀逸であるが、キャスティングも言うことなし。警務部長と対立する刑事部長役の國村隼の渋い演技、余貴美子の円熟した演技、渡辺いっけいのちょっとコミカルな部分もある多面性のある演技などなど、豪華なラインナップとしか言いようがない。

 

長いカメラ回しという特徴もあるのか、ラストまで一気に作品に引き込まれるような感じ。スクリーンから炸裂するような熱い闘いに圧倒されるような作風は、他の横山秀夫原作の映画やドラマに引けを取らない。クオリティという面でも、他の作品と肩を並べている。横山秀夫原作の作品は、「半落ち」「クライマーズ・ハイ」「ルパンの消息」を観た後での鑑賞となるので本作で4作目になるのだが、どれもハズレがないところが凄い。原作では、官舎という面から女性の手のひらでコロコロと操られる男たちが描かれているが、本作ではその部分は思い切って割愛し、組織内のドロドロした部分にテーマを絞ったのが、本作を良作に導いたカギと言えるのでは。★3.8

明智光秀〜神に愛されなかった男〜

2007 日本 国内TVドラマ 時代劇
作品のイメージ:カッコいい
出演:唐沢寿明、柳葉敏郎、長澤まさみ、大泉洋

史実に忠実かどうか、「神に愛されなかった男」という大袈裟なタイトル、
明智光秀を格好よく描き過ぎ・・という点が気にはなったが、TV2時間ド
ラマとしては、意外に楽しめた。しかし、唐沢寿明と言えば、どうしても
前田利家のイメージが抜けきらない。織田信長役の上川隆也が主役を喰っ
ている感じ。

それにしても、豪華なキャスト。堀秀政役の伊藤英明の出演はうっかり見
過ごすところだった。小西真奈美は、おね役を好演(前半少ししか出てこ
なかったが)。谷原章介も、足利義昭役にしっくりと合っている。

剣の達人で戦術に長け、実直で正義感の強い明智光秀。しかし、かなりの
頑固者で自分を曲げることができない。光秀とは対照的に、要領が良く空
気が読める羽柴秀吉。そんな秀吉を、最初は見下していた光秀だったが・・。
二人の関係が微妙なバランスで描かれている。信長、光秀、秀吉、それぞ
れにカッコよくスポットライトが浴びせられているといった印象。

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