あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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半落ち
2004  日本  邦画  ドラマ  法廷ドラマ  
作品のイメージ:感動、泣ける、切ない、ためになる
出演:寺尾聰、柴田恭兵、吉岡秀隆、鶴田真由
 

始まって20分くらいの時点から涙が止まらなく、結局最後まで泣き続けた作品。また、骨髄バンクへのドナー登録を考えるきっかけになった作品でもある。みなさまご存じの通り、横山秀夫の傑作小説を映画化したもの。県警捜査一課の強行犯指導官の志木(柴田恭兵)は、アルツハイマーの妻(原田美枝子)を殺したとして自首してきた梶元県警警部(寺尾聰)を取り調べる。梶は、自分が壊れていくことに耐えられなくなった妻に頼まれて、その首を絞めたと言う。しかし、梶が妻を殺してから自首するまでの空白の二日間があった。梶の服のポケットに、新宿歌舞伎町のポケット・ティッシュが入っていた。果たして、梶は何のために歌舞伎町を訪れたのか・・。

 

「あなたには守りたい人がいますか?」という梶の問いかけが、今でも心に響いている。誰かを庇うために、あるいは組織を守るために、絶対にしゃべれないことがある。梶がそれほどまでに二日間の行動を隠さなければならなかった理由とは・・?自分はどうなってもいい・・でも、ある人を守り抜きたい。人は誰のために生きるものなのか。人は、いつかは死ぬ。人は、生きることと死ぬことにどう向き合うかが大切なのであり、何歳まで生きたかとか何を成し遂げたかとかは、二の次のような気にさせられた。

 

ストーリーは梶の立場からのみ物語られているのだけではなく、志木、新聞記者の中尾(鶴田真由)、検事の佐瀬(伊原剛志)、弁護士の植村(國村隼)や裁判官特例判事補の藤林(吉岡秀隆)の視点からも事件が語られている。みなそれぞれの立場があり、苦しみを抱えている。そういう意味では、いちいちつらい作品である。元裁判官の藤林の父も今や認知症を患い・・。藤林が法廷で梶に対して「介護保険制度については考えなかったのですか?」という発言があるのだが、このセリフはちょっと本題からズレているような・・。

 

刑務官役の笹野高史の演技が、相変わらず渋い(いい役者さんですね〜)。また、妻のお姉さん役の樹木希林、検察事務官役の鈴木孝夫や主治医の奈良岡朋子などなど脇を固めている俳優もベテラン揃い。キャスティングの面でも、申し分なし。なお、「半落ち」とは一部を自供したという警察用語で、一方「完落ち」とはすべて自供したという意味。タイトルが示しているように、刑事訴訟の全体がよくわかるような内容になっているが、「人が人を裁く」ということについて深く考えさせられた。裁判員制度が導入された今、観ておいて損はないどころか、観ておくべき作品ではないかと思う。

 

藤林のセリフ「魂がなくなったら、生きる資格は無いのか」は、人間の尊厳死と深く関係する。もちろん、嘱託殺人は違法である。しかし、梶の供述(「私は妻を愛していました。妻は息子を二度失いました。一度は白血病で、二度目はアルツハイマー病で。私は妻がせめて息子を覚えているうちに死なせようとしました」)を、100%法律で裁けるものなのか。しかし、判決は・・。原作では、空白の二日間を追うミステリー色が濃いようだが、本作では社会派プラスヒューマン系ドラマに仕上がっている。刑事、検事、新聞記者、弁護士、裁判官といった人々の個々の思惑が交錯しながら一つの事件を追う、多彩な登場人物によるアンサンブルと言えよう。そして、真相を知ることになるが、その解釈はそれぞれに異なる。本作は、夫婦愛や介護といった問題を提起していると共に、社会の虚実をも映し出している。★4.7

笑の大学

2004 日本 邦画 コメディ ドラマ
作品のイメージ:ほのぼの
出演:役所広司、稲垣吾郎

そもそも密室劇というのが、あまり映画には向かないのではないか。舞台用の脚本といった印象。本作は、映画版や舞台版に加えて、ラジオドラマ版もあるらしい。舞台かラジオドラマの方が合っているような。「THE 有頂天ホテル」、「みんなのいえ」、「ラヂオの時間」と、他の三谷作品はかなり楽しめたので、期待が大きかったこともあり観終わってガッカリしてしまった。

演劇は規制され台本は検閲されていた戦時下、劇団「笑の大学」の座付作家(稲垣吾郎)が、検閲官(役所広司)の注文を逆手にとって、より笑える台本を作り変えていく、といったストーリー。心から笑ったことのない検閲官と、笑いを追及する作家の二人が、一つの台本を一緒に創作していく・・といったところが三谷節。

役所広司が一人でがんばっていて、吾郎ちゃんはセリフを言うのでいっぱいいっぱい・・という感じが(吾郎ちゃんファンの方には申し訳ないですけど)。内容的にも、愉快さを感じなかった。最後の廊下で叫ぶシーンは、はっきり言ってシラけてしまったし、小松政夫のギャグも全然可笑しくなかった。もう少し一貫してストイックなものにすれば、楽しく観れたのかもしれない。★1.4
仄暗い水の底から

2001 日本 邦画 ホラー
作品のイメージ:切ない、ドキドキ・ハラハラ、怖い
出演:黒木瞳、菅野莉央、小口美澪、水川あさみ

原作はホラーではないと思っているので(一応ホラーに分類されているよ
うですが)、本作で無理やりホラー的な脚色を施した・・という印象を受
ける。次々に起こる怪奇現象は、現代社会にありがちな事象(離婚調停、
母子家庭、近所付き合いのないマンション暮らしなど)にどんどん追い詰
められて疲れていくヒロイン(黒木瞳)の内面的なものであって、実際は
ヒロインの妄想によって「そう見えているだけのもの」ではないのか。娘
の奇行も、過度のストレスによるものという客観的な見方もできる。

それら怪奇現象がヒロインの心の闇を映し出したものであるのだとする
と、心理的恐怖が効果的に演出されているとは言い難い。いわゆる「幽霊」
そのものが登場してしまうのは、ちょっと残念なのだ。もっと幻影的な演
出で背筋がゾクっとする仕上がりにしてほしかった。

とは言え、黒木瞳の熱演が活きて、母親の娘に対する愛情が痛いほどスト
レートに表現されているところは、評価できる。また、「水」の使い方も、
タイトルになっているくらいなので、当然巧みだ。演出のしかたによって
は、もっとあか抜けた怖い作品になったのになぁ・・ということで、★2.7。
イン・ザ・プール

2004 日本 邦画 コメディ ドラマ
作品のイメージ:笑える、ほのぼの、癒される
出演:松尾スズキ、オダギリ ジョー、田辺誠一、市川実和子

笑えるし、勇気付けられるし、明るい要素満載の作品。

ストレスの多い現代。精神科医の伊良部医師(松尾スズキ)のもとに、心を病んだ人たちが駆け込んでくる。プール依存症、強迫神経症、継続性勃起症・・。患者に真面目に向き合っているのかどうかわからないハチャメチャな伊良部医師。しかし、患者の病気の本質を見抜いている彼は、型にとらわれない独自の方法で治療していく。

原因と最適な治療方法がはっきりしない心の病。ひょんなことで完治することもあり得る。と同様に、落ち込んでいても、人生いきなり好転することも。逆に、自分の頭の中で思い描いたように、物事が進んでいくとも限らない。世の中なんて、なるようになるかもしれないし、ならないかもしれないのだ。くよくよする必要なんてないのか、と前向きにさせてくれた三木監督に感謝!原作を読む意欲もかきたててくれた。

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