あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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ブレイカウェイ
2000  デンマーク  洋画  アクション  
作品のイメージ:笑える、ほのぼの
出演:イーべン・ヤイレ、ソーレン・ピルマーク、ウーリック・トムセン、マッツ・ミケルセン

マッツ・ミケルセン目当てでレンタルした作品。40歳の誕生日を迎えた冴えないギャングのトーキッド(ソーレン・ピルマーク)は、子供の頃からの腐れ縁であるアーニー(マッツ・ミケルセン)、ステファン(ニコライ・リー・カース)やピーター(ウーリック・トムセン)と共に、四億円もの大金強奪を画策する。アーニーはガン・マニア、ステファンは大食漢でおっとり者、ピーターは負傷していてヤク中という面々。それに、酔っ払いの医者カールや、猟オタクのアルフレッド、ステファンの彼女など、個性的な脇役が絶妙に絡んでくる。子供の頃のトラウマを抱えた四人は、不条理な人生が抜け出して、新しい人生を切り開きたいと願っていた。強奪の計画は一応成功するも、バルセロナに向かう途中の国境付近で車が故障。とりあえず、廃墟となったレストランに身を隠すことに。バルセロナに行くはずだった四人に、思いもよらない人生が待っていた・・。

 

主人公の四人はギャングということで銃撃戦もあり、ジャケットからはハードボイルドなドラマを連想させられるが、本作はコメディタッチのヒューマンドラマ。四人とも、自分の本当に求めていたものが心安らげる生活と友情であったことに気付き、ほのぼのとしたハッピー・エンドを迎えるというもの。最初はバルセロナ行きを止めるトーキッドに反対していた三人だったが、徐々にみんなでトーキッドの思いを実現させようと心に一つにしていくところが、心温まる。アナス・トーマス・イェンセン監督の作品と言えば、「フレッシュ・デリ」もそうだが、途中はいろいろあっても結局ほのぼのと終わってしまう・・というところがミソ。

 

画面は少し暗めだが、デンマークのドグマ作風からは懸け離れている。全体としては地味だが、面白いシーンがたくさん隠されている(卵を吹くシーンは笑えます)。そんなシーンを観ていると、だんだん主人公の四人に愛着が沸いてきてしまうから不思議。英題の“Flickering Lights”とは「瞬く光」という意味で、新しいレストランの名前(なかなか良い名前のレストランですね)であり、この四人の行く末を暗示しているような。但し、残念なのが、主人公が四人いるわけなので、それぞれのトラウマについての描写がやはり四つに分散されてしまい、やや散漫になってしまっている点。

 

(以下は、マッツ・ファンとしての感想になっています。)今回のこのマッツの髪型(ワンレン)が不評のようだが、個人的にはこの髪型のマッツもなかなか良いではないだろうか、と思う。それに、タンクトップ姿のマッツは、肉体美が強調されて相変わらずステキ。マッツを含めた三人が海岸で裸体ではしゃぐシーンがあるが、これはまさにお宝映像。役柄は、ちょっと凶暴で短気でキレやすいギャングなんだけど、ときおり見せてくれる笑顔にマッツの人柄の良さがにじみ出ている。

 

本作は、マッツが幅広くいろんな役をこなせるという実力を証明し、デンマーク映画界において頭角を現す作品となったとも言えるのでは。007 カジノ・ロワイヤル」「アフター・ウェディング」はもちろんのこと、「フレッシュ・デリ」「しあわせな孤独」よりも前の作品なので、マッツが完全主役を張っているわけではないが、存在感はたっぷり。一つ気になったのは、タバコをくわえながら料理をしていて、タバコの灰が料理の中に入るんじゃないかと、ハラハラ(そう言えば、マッツはもともとへヴィー・スモーカーなんですよね)。私は、へヴィー・スモーカーや胸毛のある人はNGなんだけど、マッツならば許せる(なんか作品とは関係ない話題になってしまいました)。なお、本作は、現在廃盤になっているとのこと・・DVDレンタルできて、本当によかった。★3.2

13デイズ
2000 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス ドラマ
作品のイメージ:ドキドキ・ハラハラ、スゴイ、ためになる
出演:ケビン・コスナー、ブルース・グリーンウッド、スティーヴン・カルプ、ディラン・ベイカー、ルシンダ・ジェニー

1962 年のキューバ危機をアメリカ・サイドから描いた、かなり興味深い政治ドラマ。一歩間違えば第三次世界大戦に発展しかねなかった米ソ間の国際緊張の13日間が、ドキュメンタリー形式ではなくドラマ形式で綴られている。ケヴィン・コスナー主演で同じドラマ形式の「JFK」では途中で寝てしまったものの、本作は緊迫感に満ちていて途中飽きることは全然なかった(145分とちょっと長めの作品ですが)。「キューバへの空爆→第三次世界大戦→核の使用→人類滅亡」という最悪のシナリオを念頭に置きながらそれを避けるために奮闘した人たちのギリギリの攻防が、見事に描かれている。もしあの時第三次世界大戦に発展していれば、自分自身はこの世に存在していなかったのだと思うと、なんだか他人事とは思えない。

しかし、あくまでもアメリカ映画なので、キューバやソ連側の言い分もあるだろうとは思う。当時、ソ連と黒海を隔てて向き合うトルコには、NATO軍の核ミサイルが配備されていた。ところが、ソ連には直接アメリカ本国を標的とするミサイルはなかった。フルシチョフは、キューバ革命の知らせを聞いて、キューバを社会主義化して衛星国の一つにすることを考えたのだろう。そうすれば、アメリカに脅威を与えることができる。ソ連は、キューバに対し通商協定の締結を持ちかけ、カストロはそれを受け入れる。アメリカは、そんなキューバに対して国交断絶という手段で対抗しようとし、反革命軍を支援してキューバ上陸作戦を敢行する(ピッグス湾事件:しかし、これは失敗に終わる)。カストロはこの事件を機に、社会主義革命宣言を行う。ということは、ピッグス湾での失敗が尾を引いて、キューバ危機という緊急事態に陥ってしまったわけで、アメリカが蒔いた種が勃発したという見方もできる。

好戦的で暴走する軍部に押されぎみの国家安全保障会議執行委員会(エクスコム)のメンバーたち。大統領特別補佐官(ケヴィン・コスナー)をヒロイックに描き過ぎているところが若干気にはなるものの、ケヴィン・コスナーが主役を張っているということで、その辺はいたしかたないのかもしれない。会議で将軍たちとケネディ兄弟、あるいは大統領特別補佐官とのやりとりが白熱するところも見どころではあるが、いちばん観ていてスカッとしたのは、国連会議でアメリカの国連大使がソ連の代表をやり込めるシーン。ここが、一番の盛り上がりではないだろうか。また、ラストには「人類の平和を願う」的な陳腐なメッセージが織り込まれているのだが、その陳腐さを感じさせないのは、そのために奮励努力した人たちの姿があってのことだろう。

キャスティングについては、ケヴィン・コスナーも適役だが、ジョン・F・ケネディをうまい具合に演じたブルース・グリーンウッドも光っている。見た感じも、そっくり。気になった点は、当時の実録でもないのに途中映像がモノクロになったり、またカラーに戻ったりすること。DVDプレーヤーの故障か?・・と思ったが、同じような感想を書いている人がいたので安心。それにしても、一部だけモノクロにしたのは何の意味があるのかしら。★3.8
メメント

2000 日本 洋画 ミステリー・サスペンス ドラマ
作品のイメージ:ドキドキ・ハラハラ、怖い、スゴイ
出演:ガイ・ピアース、キャリー=アンモス、ジョーパン・トリアーノ、マーク・ボーンジュニア

このタイトルは、"Memento mori"(いつか自分が死ぬことを忘れるな)
というラテン語の箴言から来ているのか。「未来に向かって、今現在
の自分の思いや生き甲斐を大切にするべき」という監督のメッセージ
が込められているような気がする。

―人間にとっての記憶や認知とは何なのか―
人間は、コンピュータとは違い、認知を介して記憶する。

10分しか記憶が保てないという前向性健忘症の主人公レナード(ガイ
・ピアース)。レナードが何を自分の「記憶としての記録」を入れ墨に
彫るのかは、レナードの主観的な認知であって、客観的事実とは必ずし
も一致しない。

10分おきに遡ってストーリーが展開していくという主人公の記憶の世界
での進行になっているため、一度観ただけではなかなか分かりづらいが
(私は特典映像の時系列バージョンのストーリーで復習しました)、この
斬新な展開は、他に例を見ない。一体、真実はどうなっているのか
・・?そして、レナードはそれをどう認知しているのか・・?という点に
おいては相当複雑。真実が見えた段階で、背筋がゾクっとした。

細かいところまで鑑賞すればするほど、監督の仕組んだ精巧なトリック
(?)に気付く・・そんな醍醐味を味わうのに、何度でも観たくなる作品。

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