あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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アイリス
2001  イギリス  洋画  ラブロマンス  
作品のイメージ:ほのぼの、切ない
出演:ジュディ・デンチ、ジム・ブロードベント、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・ボナヴィル

アイルランド出身の英国の哲学者・作家・詩人であるアイリス・マードックの半生を夫のジョン・ベイリーの目線で描いた物語。若き日のアイリス(ケイト・ウィンスレット)とジョン(ヒュー・ボナヴィル)は、オックスフォード大学時代に知り合う。恋愛経験豊富なアイリスは、複数の男性と同時に交際していたが、ジョンの直向きさと純粋さに惹かれていき、やがて二人は結婚する。仕事で成功を収め老人となったアイリス(ジュディ・デンチ)とジョン(ジム・ブロードベント)は静かに老後の日々を送っていた。しかし、アイリスはアルツハイマーを発病する。ジョンは、戸惑いながらも、どんどん病気が進行していくアイリスを温かく見守るのだった・・。

 

若き日の自由奔放なアイリス、仕事で活躍するアイリス、そして記憶がどんどん無くなっていくアイリスを包み込むような優しいジョンの愛に心打たれた。若き日と年老いた日が交錯するようなかたちでストーリーは展開するが、ジョンのアイリスに対する一貫した献身的な愛情が三次元の世界で花開いているような感じ。地味なドラマではあるが、ジョンの静かな愛が、叙情的かつ耽美的に描かれている。アイリスが踊るように川の中で泳ぐシーンは、印象的。しかし、一般論になってしまうが、夫婦のどちらか一方がアルツハイマーを発病したとしても、ジョンのような男性の愛が、必ずしも最後の最後まで支え切れるとは限らない。アルツハイマーは単なる老人性痴呆症とは違い、人格が変化したり、徘徊したり、精神の荒廃状態に陥ることもあるという。そうなった場合、個人レベルの愛だけで救うことは、果たして可能なのだろうか。

 

誰でも年をとり、夫婦であればどちらかに面倒を見てもらうことになる。それができなければ、施設に入る。たとえ子供がいたとしても、子供には子供の生活があるため、あてにはできない。若き日のアイリスがあんなに自由奔放できらきらと輝いていたのに、言葉をどんどん忘れて行ってしまうという現実。ジョンのような男性に愛されていても、その愛に100%頼り切ってしまうわけにはいかない。その現実の部分が描かれているようでいて、ジョンの愛情によって若干目隠しされているようでもあり、厳しいリアリティが描ききれていないような気もした。なので、リアリズムを追及している作品ではなく、アイリス・マードックの半生とジョンの愛を描いたドラマなのだと思うことに。

 

ジョンを演じたジム・ブロードベントは、アカデミー助演男優賞を受賞。ジュディ・デンチの存在感は言うまでもなく、またいきいきとしたアイリスを演じたケイト・ウィンスレットの演技も「タイタニック」の時とは一味違う一面を見せてくれていて、ファンにとっては嬉しい。但し、本作全体を考えた場合、まず娯楽性はゼロ、と言って、アルツハイマー患者の問題を深く掘り下げているわけでもない。だけど、やはり観客としては、自分の場合に当てはめて考えてしまうのである。自分が、もしアイリスだったら・・。また、ジョンであったら・・。その部分は、意図的かどうかはわからないが、作品から抜け落ちているような気がしてならない。「自分ならどうするのか」と観客が考えた場合、誰もが夫婦愛だけでは解決しない問題であることを悟る。それに対する観客へのレスポンスがないのである。ますます深刻化する高齢化社会と社会保障の問題まで連想してしまうのは、本作の鑑賞のしかたが間違っているからか。★3.2

ピアニスト
2001  フランス  オーストリア  洋画  ドラマ  ラブロマンス  
作品のイメージ:怖い
出演:イザベル・ユペール、ブノワ・マジメル、アニー・ジラルド

4ヶ月、3週と2日」を観た以来の不快感を感じた作品。もう全くついていけない世界。小さい頃から母親に厳しく育てられたエリカは、40歳を過ぎてウィーン国立音楽院のピアノ教授となった今でも母と二人で暮らし母と一緒に寝ていた。ある日、エリカは演奏会の席で好青年ワルターに出会う。彼のピアノの才能にも彼自身にも惚れたエリカだったが、ワルターもまたエリカに特別な感情を抱き彼女に付きまとうようになる。ワルターは、エリカに強引にキスを迫りエリカもそれに応じるのだが、その時にエリカの今まで人に知られることのなかった秘密が露わになる・・。

 

2001年のカンヌ国際映画祭にて審査員特別グランプリ、男優賞、女優賞の3つを受賞し海外の各メディアからも称賛の嵐だったようだが、どのような基準で選ばれたのか、どこが称賛に値するのか、正直理解に苦しむ。見ていて生理的嫌悪感を抱いたと同時に、母親の絶対的支配下に置かれたせいで病的な性癖を持つ彼女に同情の念を抱いた。ワルターの言う通り、エリカは通院して適切な治療を受けるべきだと思う。その彼女の数々の変わった性癖については、ネタバレになるという理由以上に、あまりにも品が無さ過ぎてここに書きたくない。また、エリカは、過干渉に管理し続ける母親に対して、憎しみを感じつつも深い愛着を持っている。まさしく性愛の対象とさえ感じているような描写まである。

 

一箇所共感できる点と言えば、好きな相手になかなか自分の築いた鉄壁を崩すことができない女性の心理。演奏会の時点でエリカはワルターに一目惚れし、ワルターが試験を受けに来た時は本当は嬉しくて仕方ないのに、人に悟られないように必死で隠そうとするあの表情・・彼を愛している・・なのに、わざと気のない振りしたり・・。しかし、それは単なる普通の女性心理ではなくて、母から叩きこまれた信条が彼女自身を自由にさせてくれないからなのか。母親に支配されることにより、性的にも支配されたいというマゾヒズムが彼女の中に生まれていたのだろうか。この辺りは、もう精神病理学の域になるので、凡人には理解できない。

ワルターに軽くあしらわれて自尊心を失ってしまうラストでは、エリカはある行動に出る。胸に真紅の薔薇が開花するかのようにブラウスに広がる鮮血の染みはピアニストとしての自分との決別を示すのだとか(致死のための心臓ではなく高い位置の腕の腱を傷つけている・・これはピアニストとしては致命傷だそう)。今まで男性と付き合ったこともなく、行動と気持ち、心と身体とのバランスが取れない中年の女性エリカ。これからは、エリカは自分の力で健全な人生を歩んでいってほしいと思う・・もう母親の干渉を受けることなく。★0.8

最後の陰謀
 
最後の陰謀

評価:star3

邦 題は「大いなる陰謀」に便乗してつけたの?・・と思ってしまう。英題は”The Last Will(遺言状)“。LAに住む富豪が、前妻との息子のベポ(「ER緊急救命室」にも出演しているゴラン・ヴィシュニック)に全財産を相続させるという 遺言状を残して亡くなる。そして、富豪の女性弁護士がベポを探しにクロアチアのブラチ島へ。それと同時に、富豪夫人は遺産をベポに取られまいと、殺し屋を ブラチ島へ向かわせる。のどかなブラチ島が大混乱に陥るといった感じのストーリー。

前半は、なんともゆるい感じのコメディ。終盤になって、やっとサスペンス・アクションの路線になる。ことばもクロアチア語が2/3(特に前半)、英語が1 /3くらいの割合。サスペンス・アクション以外の部分は、アコーディオンによる明るい演奏がほんわかと背景に流れている・・ということもあり何度か眠りに 落ちてしまった。

予想外だったのが、アドリア海の素晴らしい景色・・まるでブラチ島に旅行している気分にさせてくれる。ベポと女性弁護士(なんとベポと恋におちる・・とい うわけでラブ・ロマンスの要素も入っている)がパラグライダーで丘から海へと飛んでいくシーンは、海の眺望が壮大。「ミス テリー/サスペンス/アクション」というカテゴリーに分類されている場合があるが、まずミステリーではないことは明らか。「コメディ/ヒーリング/旅/サスペンス/アクション」というタグがふさわしいかもしれない。

これまた変わっているのが、エンドロールの後ではなく合間にオマケのようなシーンが挿入されている(結構おもしろいです)。★2.5
イン・ザ・ベッドルーム
2001 アメリカ 洋画 ドラマ
作品のイメージ:切ない、怖い
出演:トム・ウィルキンソン、シシー・スペイセク、ニック・スタール、マリサ・トメイ

ある夫婦の平穏な生活が、一つの事件によって一変する。一人息子を殺害された夫婦。それまでと変わらない生活空間がその事件によって全く違うものに見える痛々しさが見事に伝わってくる。息子を失ったことにより、夫婦の関係はどうなっていくのか・・?

本作でゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞したシシー・スペイシク(妻役)の演技よりもトム・ウィルキンソン(夫役)の演技に感服。後半息子の仇討を終えて家に戻ってきたときの凍りついた表情と、ベッドに横たわり発する一言。復讐の罪悪感に苛まれるというより、彼は何かを悟ったのだった。何を悟ったのか・・?それを考えたとき、心臓を抉られたような気がした。

「イン・ザ・ベッドルーム」というタイトルには、二つの意味が込められている。ベッドルームとは:
―夫婦の寝室:つまり、タイトルの意味は、夫婦の間でしかわからないこと
―海老の仕掛け罠:つまり、タイトルの意味は、海老が一旦かかったら出られない罠

前半海老の捕獲シーンが出てくるので、そのときの会話に注目。「夫婦の絆とは・・?」そんな静かな問いかけが、まるでタイルが張り巡らされているかのように、作品の随所に散りばめられている。二度目以降では、一つ一つのディテールの中に隠されたその問いに対する答えを考えてみる・・そんな鑑賞のしかたもできる深みのある作品。★4.3
美しい妹

2001 フランス 洋画 エロス
作品のイメージ:切ない、おしゃれ
出演:マリオン・コティヤール、ストーミー・バグジー、パトリック・ブリュエル、ティトフ

批評によっては、本作は「エロティック・サスペンス」に分類されている
ようだが、そうではないと思う。いわゆる上質な「アート」なのだと。ま
た、タイトルの”Les Jolies Choses” は、「自分の美しいもの」という意味。
邦題の「美しい妹」というのは、作品のイメージを違う方向に持っていっ
てしまっている。美しい妹への嫉妬を描いた作品ではなく、主人公マリー
(マリオン・コティヤール)の喪失感を芸術的にポートレイトした作品で
ある。

双子の妹であるリュシー(マリオン・コティヤール:二人一役)が突然死
んだことで、マリーはリュシーになり変ってリュシーの人生を生き始める。
リュシーは歌謡界のスターであり、華やかなで自由奔放な人生を生きてい
た。気真面目で堅いマリーは、そんなリュシーの人生を引き継ぐことはで
きるのか。現実に考えると、いくら似た双子とは言え、周りの誰かが気付
くだろう・・という気はするが、あくまでも「アート」なので、その辺は
目をつぶることに。

小さい頃から親の愛情がリュシーに奪われていると感じていたマリーは、
リュシーの人生を生き始めた後も、リュシーに支配されているという思い
に執りつかれる。大切なものが、どんどん手から零れ、そして自分の人生
が空っぽになっていく。「君はなぜ歌いたいのだ?」と聞かれても、「分か
らない」としか答えられないマリー。

春夏秋冬と時が過ぎ行くにつれ、喪失感を深めるマリー。そして、マリー
が最後に下した決断とは・・。エンドロールに流れる歌(タイトルと同
じ”Les Jolies Choses”)が、マリーの心情を語っている。「美しいものよ、
どこへ消えたのか・・」という歌が耳から離れない。「私をここにいる、
私を見てほしい」と必死に叫ぶマリーの声が歌になっているようだ。マリ
オン・コティヤールの魅力が溢れる秀作。★3.8
ビューティフル・マインド

2001 アメリカ 洋画 ドラマ
作品のイメージ:感動、泣ける
出演:ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス

映画が終わっても涙が止まらなかった。

伝記ものといった感じではなく、天才数学者ジョン・ナッシュの苦悩とナッシュを支え続けた周りの人たちを描いた作品。ラッセル・クロウの演技力がかなり光っている。ナッシュの妻役のジェニファー・コネリーがアカデミー賞助演女優賞なら、ラッセル・クロウがなぜ主演男優賞に輝かなかったのか不思議なくらい(まあ、一年前にグラディエーターで既に受賞しているが)。

夫婦愛、そして学生時代の友人たちや教え子たちによるサポートでナッシュは教師として大学に復帰できたことなどが印象深い。彼の奇行やエキセントリックな部分を受け入れ、彼の才能が教壇で活かせるように導いた妻や友達の様子が脚本に生きているといえる。

また、時代背景もみごとに描かれている。ナッシュの学生時代は大学には白人の富裕層の家庭の子どもたちしかいなかったのが、ナッシュが教師になってからはいろんな人種の学生がキャンパスにいる様子がきっちりと織り込まれている。
アザーズ

2001 アメリカ, スペイン, フランス 洋画 ホラー ドラマ
作品のイメージ:切ない、ドキドキ・ハラハラ、怖い
出演:ニコール・キッドマン、フィオヌラ・フラガナン、クリストファー・エクルストン、アラキナ・マン、ジェームス・ベントレー、エリック・サイクス

(ネタバレです。「オープン・ユア・アイズ」とそのリメイクの「バニラ・
スカイ」を、これから初めてご覧になる予定の方も、以下読まれない方が
よいと思います。)

閉鎖された暗い空間で、日光アレルギーの子供と一緒にひたすら夫の帰り
を待ち続けるヒロインのグレース。そのグレースを演ずる二コール・キッ
ドマンの演技が冴える。神経をピリピリさせながら、次第に狂気に満ち
ていく様はまさに怪演とも言える。美しさだけではなく、演技力も十分に
ある女優さんだということを証明することになった作品だ、と個人的に思
う。

さすがは、アレハンドロ・アメナバール監督。トム・クルーズが惚れ込む
のも納得できる。「オープン・ユア・アイズ」では、「眠っているのに気が
つかない」主人公。そして、本作では、「死んでいるのに気がつかない」
主人公。ラストは、背筋が凍りつきそうになった。

二度目以降は、「死んでいること」を否定しているグレースの行動を一つ
一つ検証していく・・そんな鑑賞のしかたもあるかなと。

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