あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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パッション
2004  アメリカ  洋画  ドラマ  バイオレンス  
作品のイメージ:切ない、スゴイ、ためになる
出演:ジム・カヴィーゼル、モニカ・ベルッチ、マヤ・モルゲンステルン、ロザリンダ・チェレンターノ

一言で言えば、あまりにも痛すぎる作品。劇場で観る勇気がなかったのだが、いずれ観ようと思っていたので、意を決してDVDで鑑賞(そう言えば、ユダヤ人が悪者に描かれていたので、ユダヤ資本の大きな劇場ではあまり上演していませんでしたね)。イエス・キリストは、弟子のユダに裏切られ、大司祭が差し向けた兵に捕らえられる。そして、裁判で自らを救世主だとほのめかしたイエスは、神の冒涜者としてローマ提督に引き渡される。ローマ提督は、イエスに対して敵意のある司祭と群衆を前に、彼を十字架にかける決定を下す。鞭打たれ、傷だらけの体で十字架を背負いゴルゴダの丘へと足を進めるイエスは、それでも人々のために祈り続けた・・。

 

メル・ギブソンが12年の歳月をかけて構想を練り私財をはたいて制作した作品で、新約聖書が忠実に再現されている(でも歴史的事実とは100%一致するわけではないので、フィクションということになるのでしょう)。イエスがゴルゴタの丘に向かう途中で倒れた回数まで、きっちりと新約聖書通りなんだとか。また、アラム語、ラテン語やヘブライ語など、当時の人たちが喋っていた言葉が、そのまま使われている。イエスたちはアラム語を喋り、ローマ人同志はラテン語を話している。目を覆いたくなるような残虐なシーンの数々・・それを観ている母マリアと奥さんであるマグダラのマリア(モニカ・ベルッチ)の辛さが、セリフからではなく映像から伝わってくる。

 

あまりのショックで死人も出たという本作・・いろんな意味において物議を醸し出したとのことだが、クリスチャンではない私にとっては、新約聖書を詳しく知る意味でとてもためになった。なんせセリフは英語ではないので、セリフよりも映像で「最後の晩餐」から「十字架に磔にされる」シーンまで詳しく(そして痛く)知ることができた。しかし、ここまでリアリズムを追及する必要があったのか・・という疑問が残る。受難の厳しさを表現したかったことはわかる。しかし、イエスが鞭打ちの刑を受けるところや、十字架を担いで坂を上っていくところ、十字架刑に処せられるところは、非常に凄惨なシーンの連続で、私にはちょっと過度な演出のように感じられた。

 

イエスを取り巻く人々の動きが、生々しい。お金のために自分の師を売るユダ、群衆の力に負けてしまうローマ提督、無理やり十字架担ぎを手伝わされるが自らの意思でイエスの十字架を担ぐようになるシモン、そしてマリアを守るヨハネ・・。もし、自分が母マリアだったら、あんなにじっと苦しみを耐えることはできない。きっと泣き叫んでしまうと思う。マグダラのマリアであったとしても、然り。また、自分がイエスであったら、こんな酷い目に合わされて人々のために祈るなんてことは到底できないであろうと思った。ここが、イエスが救世主である証しであり、「神」として復活する所以であろう。

 

私はDVDで一度しか鑑賞していないが、クリスチャンの方、新約聖書に詳しい方には、何度も鑑賞してメル・ギブソンが細部までこだわり全身全霊を込めて制作した真価を見いだせる作品ではないだろうか。★3.2

海を飛ぶ夢
2004  スペイン  フランス  洋画  ドラマ  
作品のイメージ:感動、切ない
出演:ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、マベル・リベラ

自ら死を望んだ実在の人物ラモン・サンペドロの手記「レターズ・フロム・ヘル」をアレハンドロ・アメナーバル監督が映画化したドラマで、人間の生と死について真摯に考えさせられた作品(実際、「日本尊厳死協会」のサイトを訪問して、自分も会員に登録しようかどうか真剣に考えました)。第77回アカデミー賞外国語映画賞を受賞。海に飛び込んで頭を強打し、首から下が不随になってしまったラモン(ハビエル・バルデム)は、26年間をベッドの上で過ごし、自ら命を絶つ決断をする。人権支援団体を通じて知り合った弁護士のフリアは、ラモンの話を聞くうちに強く彼に惹かれていく。不治の病を患ったフリアは、やがて自らも死を望み、ラモンの死を手伝うことを考えるのだった。

 

「どうしていつも微笑んでるの?」という問いかけに対し、「自分の意思で体を動かすことができないので、いつも微笑んでいるしかないんだよ」というラモン。ラモンが夢の中で海の上を飛ぶシーンや、そして夢の中でフリアとキスするシーンには、胸が締め付けられるような思いがした。「自殺しようとしたけど生き残ってしまった人間は罪に問われないが、死にたいと願う人間に手を差し伸べた人間は罪になる」というセリフは、尊厳死を法律の立場からだけで考えることの無意味さを、アメナーバル監督が必死に伝えようとしているメッセージの一端のように思える。

 

アメナーバル監督の死生観が痛いほど伝わってきて、人が生きるという意味、心が自由になるために死を選ぶという選択について、鑑賞中も鑑賞後も深く考えさせられた。「生きることは権利であり、義務ではない」というテーマについては、賛否両論あるであろう。この「尊厳死」という問題については、いくら議論を重ねたところで答えがでるものではない。しかし、自分がラモンの立場だったらと考えた場合、やはり心の自由を選択するのではないだろうか。

 

人間のエゴイズムだと言われるかもしれないが、やはり生きることは権利なのだと思う。自分がもし不治の病気にかかり死期が迫っているという診断がされた場合には、死期を引き延ばすためだけの延命装置は一切行ってほしくない。また、長期間にわたって植物状態に陥った場合については、一切の生命維持装置を取り外してほしいと思う。非常にデリケートな問題ではあるけれど、家族に負担をかけて心の自由を奪われてまで生きていたくはないと思う。

 

しかし、これに対していろいろな考え方があるのも事実。の死の選択に厳しく反対する兄のホセや、ラモンに影響を受け成長していく甥のハビなどもいる。また、カトリックの信仰の篤いスペインでは、自殺は許されない行為。「命が代償の自由は自由ではない」と主張する神父。彼を生かそうとする人、生きることに手を差し延べる人、愛する人、理解して死を手伝おうとする人、さまざまな立場からさまざまな考え方が提示されているようで、作品の奥深さと監督の作品への思い入れを改めて実感した。愛するからこそ、死を手伝うという考え方も理解できる。愛していなければ、きれいごとだけを並べていればよい。でも、愛していれば、その人の苦しみがわかり「死ぬことによって生きたい」という願いを叶えてあげたいと思える。

 

それにしても、55歳の役を演じている35歳のハビエルの演技は秀逸。特殊メイクの威力もあるのだろうけど、表情だけであれだけ自然に50代の役をこなせるって本当に素晴らしいの一言に尽きる。重いテーマの中にも、彼の笑みと朗らかさ、そして海の美しい映像が観る者に救いを与えてくれているような気がする。実話ベースという作品ではあるが、それを見事に脚色する叙情的かつ美しい色どりが、いつまでも心に残る余韻を与えてくれた。★4.6

親密すぎるうちあけ話
2004  フランス  洋画  ドラマ  ラブロマンス  
作品のイメージ:ほのぼの、萌え
出演:サンドリーヌ・ボネール、ファブリス・ルキーニ、ミシェル・デュショソーワ、アンヌ・ブロシェ

「ランジェ公爵夫人」でおフランス的な「恋の駆け引き」にちょっと興味が湧き、本作をレンタル。夫婦生活に悩みを抱えた女性アンヌは、ある日精神分析医を訪ねる。しかし、事務所を間違えて、とある税理士の事務所のドアをノックしてしまう。その税理士の男性を精神分析医だと思い込み、彼に赤裸々な夫婦生活を語るアンヌ。かたや、妻と離婚したばかりの税理士の男性ウィリアムは、人違いだと言えないままアンヌの話を聞いていくうちに、アンヌへの特別な感情が芽生えてくる。しかし、ウィリアムはアンヌへの想いを心に秘めたまま・・。

 

二人の心情が巧みなカメラワークで、立体的かつシクエンシャルな描写となっている感じ。ビジュアルの面からは官能的ではないが、大人の恋心が不安定に動いていく様子が、ウィットに富んだセリフや二人の表情・動作、絶妙な間によって、観客を静かに二人の世界へと引き込むような設定になっている。最初にウィリアムの事務所を訪れたアンヌが、徐々に女性の魅力たっぷりに挑発的と言えるまでに変身していく過程も見物。身も心も枯れていた一人の女性が、女性としての輝きを放つようになり、やがて遠くへ羽ばたいていく。しかし、最後は・・。仏映画には珍しく、心温まるようなハッピー・エンドなラブ・ストーリーなので、観ていて清々しい気分になった。

 

邦題は原題の直訳となっているが、このタイトルから官能的な作品を想像して鑑賞した方は、肩透かしを感じられるかもしれない。また、お金がまるでかかっていないことが丸わかりの作品なので、「おしゃれ」とまでは言えない。しかし、ここまでプラトニックなのに、深遠な大人の恋愛を肌で感じるように味あわせてくれるという意味では、「さすがルコント監督」ということになるのであろう。それにしても、アンヌの夫の気持ちが全く理解不能。アンヌに執着するという愛し方だったのだろうが、その割にはあっさり離婚に承諾するって・・?

 

男性として、好きな女性の赤裸々な性生活の話を聞かされるのはどんな気持ちなのかな・・と思ってしまった。逆に、女性の立場だったら、好きな男性のそんな話は聞きたくない。ウィリアムはそんな話を聞かされたからアンヌへ興味を持つようになったのか、あるいは一目見たときから彼女に魅かれていたのか・・。そのあたりがよくわからないし、男性の方のご意見を伺ってみたいところ。また、別れた前妻が頻繁に事務所に訪ねてきては近況やアンヌとの関係を聞いたり、親密な友達のような関係を続けているところは、このウィリアムの人の良さからくるものなのか、はてさてこれもおフランス的ということなのか。

 

やはり、ウィリアムのアンヌへの気持ちはどこから始まったのか、それがいちばん気になる。身体的触れ合いがあるわけでもないし、いきなり自分の事務所に間違えて入ってきた女性なわけだから自ら選んだ女性でもない。これは、きっと「自分の恥ずかしい秘密を二人っきりの部屋で相手に晒す」というアンヌの行為から芽生えた恋ではないだろうか、という見方もできる。そう考えると、男女の感情って不思議。どんなところから相手を異性として意識し出すかわからないし、どんな過程で恋に発展するかもわからない。そして、自分の気持ちを相手に伝えるかたちも、さまざま。とても静かに自分を抑え気味に相手に接する・・そして、二人の会話からミステリアスな雰囲気と気品が溢れる・・こんな大人の男女の恋物語を、たくさん観てみたい。★3.3

アウェイ・フロム・ハー 君を想う
2004 カナダ 洋画 ドラマ ラブロマンス
作品のイメージ:切ない、ためになる
出演:ジュリー・クリスティ、ゴードン・ピンセント、オリンピア・デュカキス、マイケル・マーフィー

「美しくも切ない夫婦愛の物語」というより、強烈にブラックな作品なんだと思う。夫婦愛を描いたというよりも、夫婦関係の本質みたいなものを毒舌的に追及しているといった感じ。アリス・マンローの短編小説をもとに、「死ぬまでにしたい10のこと」に出演したサラ・ポーリーが監督デビューを果たした作品。

結婚して44年になるグラント(ゴードン・ビンセント)とフィオナ(ジュリー・クリスティ)。フィオナは認知症だと診断され、自ら養護施設で暮らす決意をする。入所して一ヵ月間は、肉親との面会も禁止されている。一ヶ月後にフィオナに面会に行ったグラントだったが、なんとフィオナはグラントのことを忘れてしまっていて、同じ施設にいる男性と親密になっているのだった。グラントに、「もしやこれはフィオナが自分を罰するための芝居では・・」という思いが過ぎる。グラントは、過去に浮気をしていたことがあり、その不実が妻を苦しめたという自責の念に駆られる。

昔アイスホッケーのアナウンサーだった人が、施設の中でテレビのアイスホッケーの試合を観ながら実況アナウンスをしているシーンは、切ないと同時に不謹慎かもしれないがちょっと笑ってしまった。人生の夕暮れ時になると、自分の人生の中でいちばん輝いていた時のことを思い出しながら、それに浸るものなのかしら。自分がもし認知症になったら、果たしてどの記憶が脳を支配するのか。なんか、この元アナウンサーの人のモチーフが、本筋にも増してインパクトがあり、作品のテーマへの鋭角なアクセントとなっている。

感動作として期待して観たら肩透かしを食らったような感じがするかもしれない。しかし、夫婦関係においての男性と女性、相手をどう愛するべきなのか、人間の記憶とは何なのか、それに人間の尊厳について深く考えさせられるような大人の映画という気がする。男性は、家族愛と性とは別物だと考えているのかもしれない(男性じゃないからよくわかりませんが)。でも、女性は・・。夫婦愛は、恋愛ではないことは断言できる。夫婦愛は恋愛の延長上にある家族愛の一つのかたちであるとするのなら、結婚して40年以上も経つと相手に性的な魅力を感じなくなる場合もあるだろう。でも、夫婦としての義務は果たさなければならない。

観た後答えの出ない無限ループに迷い込んだような感覚に陥ってしまった。これだけ鋭く深く人間の記憶や夫婦について描けている作品は、そうないであろう。脳も身体の一部・・いつかは朽ち果てるもの。そして、愛を感じるのも脳・・。美しいカナダの冬の景色を背景に、逃れようのない現実を突きつけられたようで、ややショックを受けた。それにしても、ジュリー・クリスティが、美しく老いていく一人の女性を見事に演じている。★4.3
アレキサンダー
2004 アメリカ 洋画 アクション 文芸・史劇
作品のイメージ:スゴイ、ためになる
出演:コリン・ファレル、アンジェリーナ・ジョリー、ヴァル・キルマー、ジャレッド・レト、アンソニー・ホプキンス

オリヴァー・ストーン監督が10年以上の年月と200億円をかけて制作した歴史スペクタクル。時代はペルシア帝国が栄華を極めていた紀元前360年頃、マケドニア王のフィリッポス(ヴァル・キルマー)は羊飼いを集めて強大な軍を築いていた。フィリッポスと妻オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)の間に生まれたのが、アレキサンダー(コリン・ファレル)。アレキサンダーは、父母の険悪な関係の中に育つ。そして、フィリッポスはやがて暗殺され、アレキサンダーが20歳の若さでマケドニアの王座に就くことに。アジア各地に進軍し、西アジア全域を制覇するアレキサンダーだったが・・。

戦闘シーンはそれなりに迫力があるのだが、あまりに冗長なため作品全体の密度が希薄になってしまっている(邦画で言えば、「影武者」と同じような感想)。もう少し短めに収めてほしいところ。それに、オリヴァー・ストーン監督が大金を投じてなぜこの作品を・・?という疑問を抱いてしまった。東方遠征したアレキサンダーに敬意を表しているのであれば、歴史に名を残したカリスマ性と逆行するような描き方をしているところが解せない。アレキサンダーの野望が無残な結果に終わったところを、なぜわざわざ見せているのか・・?

ナレーター的役割のプトレマイオスを演ずるアンソニー・ホプキンスと、オリンピアス役のアンジェリーナ・ジョリーについては、適役のように感じられた。特に、アンジェリーナ・ジョリーについては、「ベオウルフ/呪われし勇者」の「魔物」を彷彿とさせるオドロオドロしさというか妖艶さがあり(でも、「ベオウルフ/呪われし勇者」の方が新しい作品なので、本作での演技の方が元になっているのかもしれませんね)、アレキサンダーの母親への畏怖を感じさせるのに効果的のように思う。しかし、彼の野望について説明する要素があまりなかったので、アレキサンダーがなぜ東方遠征にこだわったのか、母親への思いとどう関係があるのか・・というところが不明瞭。アレキサンダーを東方遠征に駆り立てた理由とは、何だったのか・・?しかも、自分が怪我を負ったためにあっさり諦めてしまうのは、観ている方としてはガッカリな感じ。山岳地帯の族長の娘といきなり結婚してしまう理由も、わからない。長い割には説明不足な点や描き切れていない点が多く感じられたのは、私の観方が偏っているからだろうか。

バイセクシャリティについても、全くついていけなかった。マケドニアだからか、それともアレキサンダーにそんな側面があったのか・・?ヘファイスティオンを純粋な友人として登場させてくれていたら、理解できたと思う。幼少期に孤独感を抱いていたアレキサンダーは、ヘファイスティオンだけを心から信頼していた・・という風に消化できたはず。というわけで、私の中でアレキサンダーに対して抱いていた英雄的イメージが崩れ去ったという意味で、観たことを後悔する作品であった。やはり、オリヴァー・ストーン監督は、ジャーナリズムを追及した方が良いのでは。歴史スペクタクルは、専門外なのかも。ペルシアの都バビロンの映像美とヴァンゲリスの音楽は、素晴らしかったけど。★2.4
オペラ座の怪人

2004 アメリカ 洋画 演劇・ミュージカル ラブロマンス
作品のイメージ:感動、泣ける、切ない、おしゃれ、スゴイ
出演:ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム、パトリック・ウィルソン、ミランダ・リチャードソン

一言で言えば豪華絢爛。もう既にミュージカルで何度も観たという方でも楽しめる作品。「映画化する必要があるの?」という疑問に対しては、あると思う。ミュージカルでは、たとえ前の席で観たとしても、オーケストラなどが入っていて、遠目からの鑑賞になってしまう。映画だとカメラの力を借りて、自分がステージの上にいるような感覚で楽しむことができる。天才作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーが自ら作曲、脚本、プロデュースを手掛けているだけあって、音楽の質の高さも卓越している。

ミュージカルにはないエピソード(怪人の子供時代の話やクリスティーヌ(ヒロイン)とラウル(ヒロインの恋人)のその後の人生)も加えられている。個人的には、ミュージカルに忠実で良いのではないのかなとは思うが、別に脚色されていても悪くはない。

本作の字幕の誤訳については、結構ネットでも取り上げられているので既にご承知の方も多いと思うが、どうしても許し難いのが下記の点:

≪クリスティーヌが怪人に地下へと連れ去られて、ラウルがクリスティーヌを救うために駆けつけるシーン:怪人/クリスティーヌ/ラウルの三重唱≫で、ラウルは“Don’t throw your life away for my sake”と歌っている。「僕を救うために、君の人生を犠牲にするな」という意味。しかし、訳は「僕を見捨てないでくれ」になっている・・ってことは、ラウルが如何にも情けない男ってこと・・?と思える。「字幕改善委員会」というサイトを見つけたが、ぜひ参加したいと思うほど。

怪人役のジェラルド・バトラーの好演が際立つ。クリスティーヌ役のエミー・ロッサムもヒロインの清らかなイメージと合っている。ラウル役のパトリック・ウィルソンは、「リトル・チルドレン」の時と印象が違う(「ハード・キャンディ」にも出演しているようなので、「ハード・キャンディ」での演技も見てみたい)。3人とも吹替なしだなんて、すごい歌唱力!

哀しくも美しい愛の物語・・とびきりのラブ・ロマンス。★4.3
マイ・サマー・オブ・ラブ

2004 イギリス 洋画 青春 ドラマ
作品のイメージ:かわいい、萌え、おしゃれ
出演:エミリー・ブラント、ナタリー・プレス、パディ・コンシダイン

二人の女の子の関係を甘く美しく描いた作品。裕福な家庭に育ち、聡明で魅力的なタムジン(エミリー・ブラント)。しかし、タムジンは、アルコール依存症の母や浮気をしている父という家族の中で、孤独感を感じていた。かたや、モナ(ナタリー・プレス)は、自分との関係より信仰する宗教の神との関係を大切にする兄に対して嫌悪感を抱いていた。そんな二人が出会い、お互い心を通わせ、モナはタムジンを姉のように慕うようになる。

二人の一夏の経験が、ヨークシャーの素晴らしい風景から色鮮やかに浮かび上がるよう。「私たちずっと一緒にいようね」なんて、同性の親友とお互いを求め合う気持ち・・少女時代の心地よい興奮を甦らせてくれる。しかし、それが暴走ぎみになってしまったら・・。

エディット・ピアフの曲でぐるぐる回りながらダンスをする二人・・そしてその回転速度がどんどん速くなっていく・・その時の曲の歌詞が「群衆に押し流される・・」といった意味ということだが、まるで無軌道な行動に走り出す二人の様子を象徴しているかのよう。また、二人で洋服を試着したりしてふざけ合う様子は、かわいらしい。タムジンがモナに対して優越感を抱いているところがちらっと垣間見えたりする。それが少し意地悪くもあるのだが、いかにも少女の児戯を表しているといった感じ。

ビジュアル的には、かなり質が高い。女の子の独占欲や嫉妬、そして思春期独特の一過性の熱のような愛が、官能的かつ洗練されたかたちで演出されている。但し、奥深いドラマではないので、青春の一コマのセンチメンタルな描画を鑑賞してみようという方におススメの一本(甘美な世界に浸れます・・「萌え」な感じを予想してレンタルしたわけではなかったのですが、こういう雰囲気の作品も良いなぁ・・という新たな発見がありました)。★3.1
ある愛の風景

2004 デンマーク 洋画 ドラマ ラブロマンス
作品のイメージ:切ない
出演:コニー・ニールセン、ウルリッヒ・トムセン、ニコライ・リー・コス、ベント・マイニング

邦題からは懸け離れた重たい作品(原題はBrodre/Brothers/兄弟)。ハリウッドでリメイクの企画が進んでいるらしい。リメイク版を観る前にオリジナル版を観てみようと思いレンタル。しかし、あまりの「切なさ」「やるせなさ」に、リメイク版を観るべきかと躊躇するほど。敢えてまた胸が締め付けられるような思いを味わうこともないかな・・なんて(でも、結局観てしまうと思います)。

アフガニスタンで夫ミカエルが戦死したと聞かされたサラ(コニー・ニールセン・・「グラディエーター」の時と変わらない美しさです)。サラは、いつしか夫の弟であるヤニックと心を交わすように。子供たちもヤニックに懐いている。その後ミカエルは実は捕虜として生きていていることがわかり、帰還する。しかし、ミカエルは完全に人が変わったようになっていた。戦地でいったい何があったのか・・。

戦地から戻った後のミカエルの凍りついたような表情が、その体験の凄まじさを物語っている。神経をピリピリさせるミカエルにヤニックとの関係を問い詰められて、「何もないのよ。寂しくてキスしてしまっただけ」とつい言ってしまうサラ。(それは言うべきではないですよね。言ってしまったら、ミカエルをさらに追い詰めるだけ。墓場まで持って行くべきだと思いました)。これも、人間の弱さ故ということなのか。

夫婦、家族や兄弟の関係が、戦死の誤報と戦争による心的外傷という要因によって浸食されていく・・そんな様子が映像から効果的に伝わってきて、ずっしりと心に響く。心の奥深いところまで入り込んでくるような入念な描出は、デンマークの鬼才スサンネ・ビア監督の技が光るところ。

一度壊された人間関係は、愛の力により再生できるのか・・と問いかけられているようで、観終わった後にしばし考え込んでしまった。ハリウッドの方では、その辺りに明るい光を照らしてくれることを願う(ちなみに、リメイク版でのサラ役は、ナタリー・ポートマンだそうです)。★3.7
ヴィレッジ
2004 アメリカ 洋画 ホラー ミステリー・サスペンス
作品のイメージ:感動、切ない
出演:ホアキン・フェニックス、エイドリアン・ブロディ、ブライス・ダラス・ハワード、ウィリアム・ハート

≪サスペンス・スリラーでもホラーでもなく、文学作品という視点で鑑賞しました≫

町から遮断された森の中で孤立して生活する人たち。俗世間の汚れたものから逃れ、innocent(無垢)であることを座右の銘にして、彼ら独自の掟に従って生活をしていた。

知的障害を持つノア(エイドリアン・ブロディ)にやさしく接する盲目の少女アイヴィー(ブライス・ダラス・ハワード)を、ノアは慕っている。しかし、アイヴィーが男性として愛していたのはルシアス(ホアキン・フェニックス)だった。そして、相思相愛のアイヴィーとルシアスは結婚することに。やりどころのない嫉妬に苛まれるノア。純真なだけに、ノアは自分自身の気持ちを抑えることはできない。傷ついてしまった心・・これをノアはコントロールできなかったとしたら・・?

かたや、アイヴィーの父親は、昔からルシアスの母親(シガニー・ウィーヴァー)への気持ちを心の片隅に閉まっていた。家族を大切にするアイヴィーの父親は、特別な感情をルシアスの母親に抱きながらも、それをずっと抑えていた。その証拠に、ダンス・パーティーでも握手すらできない。それが、なによりも彼の秘めた心の現れだった。

大人になると、純真無垢ではいられないかもしれない。時には、家族がいながら他の異性に心を寄せることもあり得る。しかし、それを自制する心を持っていたとしたら・・?時には、嘘をつくこともあるかもしれない。しかし、それは他の人への配慮だったら・・?

人間は「無垢であること」によって、本質的な悪を消し去ることはできるのか・・を問うた作品・・と鑑賞。
記憶の棘

2004 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス ドラマ
作品のイメージ:感動、切ない
出演:ニコール・キッドマン、キャメロン・ブライト、ローレン・バコール、ダニー・ヒューストン

過去に夫を亡くしたアナ(ニコール・キッドマン)と、アナの夫の生まれ変わりだと言って突如アナの前に現れた少年(キャメロン・ブライト)。果たして、本当に少年は夫ショーンの生まれ変わりなのか・・?

繊細なヒロインが少年の出現によって混乱し、その混乱がまわりの人との人間関係に波紋を広げていく・・といった展開。最初は全く信じなかったアナも、自分とショーンとの二人だけの思い出が少年が語ることによって、もしかしたら・・という思いを抱き徐々に信じていく。キッドマンの演技力が、みごとにヒロインの心情を描写している。

本当に生まれ変わりなのかどうかは、観る人の見方によるというラスト。少年が思春期で思い込みが激しい性格であるとすると・・。しかし、アナの気持ちは、新しい恋人との再婚を決意した頃には戻れず、少年を特別に意識し出していたとすると・・。

人間が人間を愛すること、愛したこととは何なのか。思い出が再現することで、愛は再燃するのか。

(入浴シーンはちょっといただけなかったが、キッドマンのショートカット姿はキュート!)

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