あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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ダニエラという女
2005 フランス 洋画 ラブロマンス
作品のイメージ:笑える、ほのぼの、おしゃれ
出演:モニカ・ベルッチ、ベルナール・カンパン、ジェラール・ドパルデュー、ジャン=ピエール・ダルッサン

モニカ・ベルッチの魅力が満載、そしてシャレやブラック・ユーモアをスパイスのように効かせて男女の愛を描いた作品。モニカの単なるPVで終わっていないところがいい感じ。飾り窓の娼婦ダニエラ(モニカ・ベルッチ)は、平凡な男フランソワから宝くじが当たったからお金が続く限り一緒に暮らしてくれと持ちかけられ、一緒に暮らすようになる。しかし、ダニエラはあまりにも妖艶で、娼婦という過去から抜け出すことができず・・。

フランソワの友人である冴えない医者がダニエラの裸体を見てショック死してしまうあたりは、ブラックなんだと思う。そんなユーモアな中にも、男女の究極の愛のかたちがちらっと垣間見えるあたりは、ベルトラン・ブリエ監督の技。本能的な見地から考えた場合、男性が女性を愛するとき、どうしても征服欲というのがはたらく。ダニエラのパトロンとフランソワの会話からも、男性の征服欲というものがはっきりと伺える。また、女性が男性を愛するとき、より力のある男性、またはより自分にお金を使ってくれる男性を選ぶ傾向がある。それはダニエラの行動やセリフ(「私の特技は男性に愛されること」)からもわかるように。女性の場合は、金の切れ目が縁の切れ目になりかねないということも。しかし、これはあくまでも男女の本能的な行動傾向のこと。

では、男女の真実の愛とは・・?ダニエラは、最後に真実の愛を見つけることはできたのか?フランソワの宝くじの話は、果たして本当だったのか?また、フランソワが心臓が弱いと言っていたのは・・?ちなみに、原題の直訳は、「あなたはどれほど私のことが好きですか?」。邦題は邦題でよいが、この原題がこのドラマの本質を語っていると言えるのでは。ダニエラのパトロンが最後に言うセリフ「私は彼女を愛しているから、自由にさせるのだ」が印象的。

モニカの裸体は、同性の私が見ても美しすぎる。なんでも、出産直後に撮った映像なのだとか。それに、モニカの美しさに加えて、彼女の何気ない仕草や豪華なファッションも見どころ。また、モニカがダンスするシーンもある。飾り窓に座るダニエラ、フランソワと暮らし出すダニエラ、パトロンとフランソワの会話に参加するダニエラ・・場面転換の素早さと絶妙な照明の使い方、そして気の利いた会話・・すべてがモニカを引き立てるために計算し尽くされた演出となっている。監督がモニカのために撮った映画と言っても過言ではないかもしれない。

但し、おフランス的な(?)シャレやブラック・ユーモアもたっぷりなので、「ショック死したお医者さんがかわいそう」とか「『私の特技は男性に愛されること』、なんて言えるオンナの神経がわからない」とか真面目にとらえてしまうと、ちょっとキツイ作品になってしまうかも。モニカの美しさを愛でながら、男女の愛のかたちを遊び心で鑑賞してみたい・・そんな気分のときにピッタリな作品なのだと思う。★3.4
バットマン ビギンズ
2005 アメリカ 洋画 アクション ヒーロー
作品のイメージ:カッコいい、ドキドキ・ハラハラ、スゴイ、ためになる
出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、リーアム・ニーソン、ケイティ・ホームズ、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、渡辺謙

本作を鑑賞したのは「ダークナイト」の予習のためだったのだが、その目的以上に満足できた作品。特に、序盤で語られるテーマが深い。全体の流れとしては、序盤でテーマを掘り下げ、中盤でベテラン俳優(マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、リーアム・ニーソン、トム・ウィルキンソン・・etc.)が脇を固め、終盤はアクションで盛り上げるといった申し分のない展開。

本作を観て、人間が何かに脅威を抱く気持ちについて、考えてしまった。人間は、生きることへの漠然とした不安を抱いていて、それを具体的な何かに置き換えて怖がっているのかとか。例えば、夜一人でいて怖くなり「幽霊が出るかもしれない」と思うのは、人間の本能的な行動パターンのように思える。なぜなら、幽霊自体を怖れるのであれば、昼間も怖いと思うはず。でも、なぜか昼間は一人でいても、そんな恐怖感はあまり感じない。それは、太古の昔夜一人でいると天敵に襲われるかもしれないので、人間の防衛的プログラムがDNAに埋め込まれていて、防衛本能が作動しているからなのか・・(ちょっと、話が脱線してしまいました)。

そんな本能的な不安や恐怖と対峙することで、人間社会に蔓延る「悪」と闘うバットマン。正論や正統な方法だけでは、人間社会を象徴するゴッサム・シティを救うことはできない。バットマンは、彼独自の方法でゴッサム・シティを救おうとする。彼は、「人間が生きている以上、『悪』を消し去ることはできない。だから、ゴッサム・シティは滅びるしかない」という価値観と対決することに・・もうこの辺りは、深すぎてクリストファー・ノーラン(あの「メメント」の監督)の世界。

脚本も良く出来ている。人生教訓になるようなセリフがテンコ盛り。「人がどん底に堕ちるのは、そこから這い上がることを学ぶため」や、「人の価値は、その人がどう見えるかではなく、どう行動するかによって決まる」などなど。ためになるだけではなく、セリフの一つ一つが小洒落てもいる。愛しの彼女レイチェルからの誕生日プレゼントに添えられていたメッセージ(”Finders Keepers”:「見つけた人が持っていてね」)とか。

また、「ダークナイト」の伏線となるセリフもおそらく(?)散りばめられていることだろうから、「ダークナイト」を観た後にも再度楽しめるような気がする。(なので、「ダークナイト」をこれから観る予定の方にも、もう既に観たという方にも、おススメします。)「メメント」に★5をつけ、人間臭い感じでダースベーダーを描いた「スターウォーズ/エピソードIII シスの復讐」にも満点をつけた私(女性)の評価は、★4.4。それにしても、クリスチャン・ベールって、バットマンのマスクがよく似合うわ。
上海の伯爵夫人

2005 イギリス, アメリカ, ドイツ, 中国 洋画 ミステリー・サスペンス ラブロマンス
作品のイメージ:感動、切ない、おしゃれ
出演:レイフ・ファインズ、ナターシャ・リチャードソン、真田広之、ヴァネッサ・レッドブレイヴ

1930 年代の上海を背景に、ロシアから亡命してきた伯爵夫人ソフィア(ナターシャ・リチャードソン)と視力を失った元外交官ジャクソン(レイフ・ファインズ)の愛を静かなタッチで描いた作品。二人の心が結び付いていく様子が、身体的な触れ合いからではなく、二人の表情や言葉からひしひしと感じられる。原題の “The White Countess(白い伯爵夫人)”とは、ジャクソンが開店するナイトクラブの名前。

主演の二人にも勝るとも劣らない真田広之の好演が、印象に残る。中国政府から一目置かれた存在のマツダ(真田広之)の祖国日本を思う心とジャクソンとの友情が、この作品を渋い色合いにまとめ上げている(「恐れられる」というほど脅威的な感じはしませんでしたが・・)。また、ヴァネッサ・レッドグレイブとリン・レッドグレイブも姉妹で出演しているというキャスティングには、ちょっとビックリ(俳優一家なんですね)。

「ラスト、コーション」を思わせるような美しい音楽と上海の映像が、作品の格を上げている。また、煌びやかなドレスとナイトクラブが、退廃的なムードの中にも艶やかで魅惑的な雰囲気を醸し出している。当時の上海の多国籍なイメージもちゃんと織り込まれているところも、ぬかりがない。盛り上がりはあまりないし、「ラスト、コーション」ほどの濃密さもない。しかし、しっとりした落ち着いたトーンでの運びの中にもじんわりと心に迫ってくるものがある。さすがはジェームズ・アイヴォリー監督!・・と納得できる(彼の作品ではE.M.フォースターの小説を映画化した「ハワーズ・エンド」と「眺めのいい部屋」も好きです。あ、「モーリス」もそうでした)。泣けるほどの傑作ではないが、良作と呼べる範囲に入る作品ではないか。

日本人である真田広之が海外の映画でがんばっているのを見ると、なんだか嬉しい気分になってエールを送りたくなる(ますますご活躍くださいませ)。★3.5
孤独な嘘

2005 イギリス 洋画 ミステリー・サスペンス
作品のイメージ:切ない
出演:トム・ウィルキンソン、エミリー・ワトソン、ルパート・エヴェレット

ミステリーでもサスペンスでもないことは、予想できた。「夫婦とは何なのか」を考えさせてくれる人間ドラマかと期待したのだが、その期待も外れた作品。郊外に住む上流階級の夫婦ジェームズ(トム・ウィルキンソン)とアン(エミリー・ワトソン)。家政婦の夫が車に轢かれるという事件から、それに関わる人がいろんな嘘をつき始めて、人間関係が複雑になっていくといったストーリー。

アンの気持ちがよくわからない・・いったい何が不満なのか。ジェームズがずっと独りで耐えている感じがして、最後まで痛ましい。人間的にも立派だし、作品で観る限り相当良い感じの夫なのに・・。ラストの展開は(ネタバレ自粛のため具体的にはかけませんが)、「それはぜひそうあってほしい」という意味で、納得できるものだった。アンには「自分の足で歩いて行って、世の中の厳しさを知っていただきたい」と、言いたい。

トム・ウィルキンソンは、「イン・ザ・ベッドルーム」の時と同様、こういう幅のある役が合っている。エミリー・ワトソンは、「奇跡の海」の時と同様、理解し難い女性をある意味うまく演じているのかもしれない。英国郊外の美しい風景とアンティークな家具が置かれた素晴らしい邸宅・・映像的には美しいのだが、その中で展開されるドラマが叙事詩的ではなく、背景にそぐわない。85分という短い時間の中で観る者に何を伝えたかったのか・・上流階級の虚飾の中で生きる人間を描写したかったのか・・?それにしては心理描写の生々しい演出が足りないと感じた(イメージを「切ない」にしたのは、ジェームズの立場から見て・・という意味です)。★2.0
マンダレイ

2005 デンマーク 洋画 ミステリー・サスペンス ドラマ
作品のイメージ:切ない、ためになる
出演:ブライス・ダラス・ハワード、ウィレム・デフォー、ダニー・グローバー、クロエ・セヴィニー、イザーク・ド・バンコレ、ローレン・バコール

テーマは違うものの「ドッグヴィル」の続編で、ヒロインも同じグレース
(なので、「ドッグヴィル」を観てからの方が入っていきやすいと
思います)。但し、「ドッグヴィル」との違いは、ヒロインの感情がかなり
細やかに描かれていること。また、自己主張する意思の強いグレースにな
ったという印象を受けるのは、ニコール・キッドマンがブライス・ダラス・
ハワードになったせいだけではない。なぜなら、黒人社会をマンダレイが
象徴していて、グレースは奴隷制度の解放から自由を与え民主主義社会へ
導く孤独な白人のリーダーを象徴しているから。

奴隷制度からの解放、自由、民主主義(多数決や正義の裁き)・・白人社
会が黒人社会を受け入れることができるのか・・テーマは相変わらず、か
なり深い。砂嵐に象徴される「共通の敵」を見出すことにより、お互い共
同体になろうとするのだが、果たして心を開いてお互いを信用することは
できるのか・・?そして、マンダレイの「ママの法律」とは・・?

それにしても、エンドロールの写真は衝撃的。睡魔との闘いの2時間の後
のエンドロールで目が醒めた感じ。エンドロールで流れる音楽は、「ドッ
グヴィル」
と同じような気がしたのだが。あと、この作品の場合は、南部
の綺麗な景色を背景にしてほしかった(ちなみに、「ドッグヴィル」の場
合は、どこにでもある「村」ということで、あのセットに意味はあると思
うが)。

作品全体のインパクトは、「ドッグヴィル」程ではない。
ザ・インタープリター

2005 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス
作品のイメージ:カッコいい
出演:ニコール・キッドマン、ショーン・ペン、キャサリン・キーナー、アール・キャメロン、シドニー・ポラック

国連本部での撮影が初めて許可された映画ということと、そしてこのタイトル(国連なのでおそらく同時通訳者)につられてレンタル。内容が通訳に関係あるのかと思いきや、たまたまニコール・キッドマン扮する通訳者シルヴィアが大統領の暗殺計画を聞いてしまって命を狙われるという平凡なサスペンス。

シルヴィアの過去も現在の仕事である通訳とは何ら関係がない。キッドマンがブースの中で通訳するのがカッコイイので、キッドマンのファンの方にはおススメかも。
チャーリーとチョコレート工場

2005 アメリカ 洋画 ファンタジー アドベンチャー
作品のイメージ:癒される、かわいい
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、デヴィッド・ケリー、ヘレナ・ボナム=カーター

童話を絵本にしたような作品。寒い夜にシチューを食べながら、子供と一緒に安心して家族みんなで楽しめそうな。ジョニー・デップのチャーリー役も、まるでティム・バートンの世界の案内役のピエロを見ているみたい。

観ていて確かに癒される。でもそれ以上の期待をして観ない方がよいかも。
スター・ウォーズ エピソードIII シスの復讐

2005 アメリカ 洋画 SF アドベンチャー
作品のイメージ:感動、切ない、カッコいい、スゴイ
出演:ヘイデン・クリステンセン、ナタリー・ポートマン、ユアン・マクレガー、イアン・マクダーミト

映像もすばらしいが、テーマも深い。シリーズの最初の作品ではダースベーダーが悪者、それをやっつけるジェダイの騎士、といった勧善懲悪の設定だったのが、第二弾以降は、悪い奴にも悪くなったなりの理由があるという感じになっていき、この最後の作品では「なぜジェダイの騎士が暗黒面に堕ちたのか」がテーマになっている。

人間は誰しも良い面と悪い面を持ち合わせている。過去に悲しい思いをした経験があったとする。二度とあんな思いはするまいと思って、つまり過去の学習効果で、同じようなことが起こらないよう未然に防ごうと、同じような外的刺激に対して過剰反応してしまうことがある。あまりにもそれにこだわってしまうことにより、周りが見えなくなり被害妄想になってしまうといったような。自分自身や自分の大切な人を守るために、外敵と思われるものが出現したら「やられる前に敵を倒さねば」という本能がはたらいてしまうこともあるかもしれない。これが自分の家族を守る本能の行動であるとすれば、愛するが故に他の人を傷つけてしまうこともあり得ることになる。そんなことを考えさせられる切ない作品でもある。
クラッシュ

2005 アメリカ 洋画 ドラマ
作品のイメージ:切ない
出演:サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ブレンダン・フレイザー

盛り上がりはなく、淡々としたストーリー。泣くまでの感動にはいたらないが、観た後から良さがじわっと感じられる作品。

人種差別がテーマというよりも、コミュニケーションの食い違いや価値観の相違からくる誤解や偏見がもとで人間と人間とが衝突を起こし、それが波紋のように広がっていく様が描かれていたように思う。

コミュニケーションがうまくいかなかった悲劇--デリカテッセンのオーナーは自分の店を誰かに荒らされ、すべての財産を失ってしまう。そして、以前善意でドアを新しいものに変えるようにアドバイスをしたが、お互いコミュニケーションをうまくとることができなかった鍵の修理屋を恨んでしまう。偏ったものの見方や歪んだ認知から人は人の善意を悪意ととってしまって悲劇へとつながってしまう。

たくさんの人種が住むロスでのそんな人間同士の衝突が、まるで写真に撮られたかのように次々と映し出されている。最後は切なさとやるせなさを感じさせるが、そんな中にも人を愛する心が暗闇に一筋の光を射しているような印象を与えている。逆に、歪んだ認知から愛が生まれることもある場面が織り込まれているのが、皮肉というかおもしろい。

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