あず沙の映画レビュー・ノート

しばらくお休みしておりましたが、そろそろ再開いたしました
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アラトリステ
2006  スペイン  洋画  アクション  文芸・史劇  
作品のイメージ:カッコいい、ドキドキ・ハラハラ、ためになる
出演:ヴィゴ・モーテンセン、エドゥアルド・ノリエガ、ウナクス・ウガルデ、ハビエル・カマラ
 

スペインの歴史を熟知していないと、ちょっとキツイ作品(スペインで撮影され、スペイン人スタッフが作り上げた全篇スペイン語のスペイン映画というだけに、スペインの方にとっては最高の歴史エンタメとなるのでしょうが、私個人にとっては難しい作品でした)。17世紀のスペイン。無敵艦隊をエリザベス女王に破られ、栄華に限りが見え始めた頃、その陰に孤高の剣士と称される男がいた。その名は、アラトリステ(ヴィゴ・モーテンセン/アラトリステ自身は架空の人物で、実在した人物をモデルにしているわけではないようです)。アラトリステは、剣士として13歳から己の腕だけを頼りに、死と背中合わせの戦場を生き抜いてきた。フランドル地方での戦いからマドリードへと帰還したアラトリステは、戦死した友との誓いを守るため、彼の息子イニゴを引き取る。そんな折、英国から来た異端者を殺せとの密命を受ける。しかし、その裏には宮廷内でのある謀略がうごめいていて、アラトリステたちはその渦の中に巻き込まれていく・・。

 

制作費はスペイン史上最高額というだけに、歴史スペクタクルとしての見応えは十分。剣に生きる誇り、共に戦う仲間たちへの忠義、そして愛する女性であるマリアへの愛を秘めた思いを胸に戦うアラトリステ・・義理・人情・正義を重んじる一人の男の勇敢な姿が力強く描かれている。但し、ストーリー自体は結構複雑というか、もともと長い原作を一つの映画にしたわけなので、ストーリー上のいろんな要素が詰め込まれ過ぎていて、シーンもとびとび。なので、原作を読んでいるか歴史にかなり詳しいかでないと、ちょっと置いてきぼり感を感じてしまう。権力者は誰なのか、アラトリステの敵対者は誰なのか、仲間は誰なのかを予習して観た方が、入って行きやすいように思う(私はwikiで復習しました。「80年戦争」、「ブレダの包囲戦」、「30年戦争」とか「ロクロワの戦い」って・・?と、その辺りはチンプンカンプンだったもんで・・お恥ずかしながら)。

 

アラトリステが、ときにはカピタン(隊長)とかディエゴ(ファースト・ネーム)で呼ばれたりしていて、前半は特に(?)混乱してしまった感が。異端審問所での断罪については、「宮廷画家ゴヤは見た」が少し予習になった(時代的には、「宮廷画家ゴヤは見た」の方が後になるわけですけど)。また「エリザベス・ゴールデンエイジ」では、ちょうどイギリス側からの史実が描かれているわけで、それを逆のスペイン側から見たバージョンになっていると思えば(「エリザベス・ゴールデンエイジ」の時代の方がちょっと前ですね)、結構面白い。しかし、画面自体はちょっと暗めで、マリアやイニゴの恋人が登場する以外のシーンは、埃まみれでの戦闘シーンが多くあまり華やかさは感じられない。

 

ヴィゴ・モーテンセンの魅力は、たっぷり堪能できる。ヴィゴのPVとまでは言わなくても、権力者に媚びず一匹狼的なアラトリステを演じるヴィゴの演技は渋いの一言に尽きる。なので、ヴィゴのファンにはたまらない逸品だと思う。しかし、特にヴィゴのファンではないという方の場合、スペインの歴史に詳しい方、歴史スペクタクルが特にお好きな方、原作を読んだ方、予習をして知識を得ている方にはおススメできるが、私のように予備知識ゼロで観たら、ストーリーの流れがわかりづらいという感想を持たれる方が多いのではないだろうか。また、ヴィゴ以外出演者に知っている人がいなかったので、ちょっとその点もなんとなく馴染めなかった(ご存じの方はご存じかと思いますが)。原作を読んでから再見ということも考えてみたが、原作はなんと5冊もあるらしく、まぁそこまでする気にもなれないというのが、正直な感想。原作に忠実ではなくてストーリーを大胆に割愛する部分があっても、もう少し説明を入れてほしかったなぁ・・なんて思ってしまった。★2.8

ランジェ公爵夫人
2006 フランス イタリア 洋画 ドラマ 文芸・史劇
作品のイメージ:切ない、おしゃれ
出演:ジャンヌ・バリバール、ギョーム・ドパルデュー、ビュル・オジエ、ミシェル・ピコリ

「恋の駆け引き」なんて言うと、なんとなくシェークスピアを連想してしまうが、本作はバルザックの小説を映画化したもの。ナポレオン軍の英雄モンリヴォー将軍は、突然消息がわからなくなったランジェ公爵夫人/アントワネットを探し続けていた。5年前毎夜舞踏会が開かれる華やかなパリの社交界で、モンリヴォー将軍とアントワネットは出会い、お互いに魅かれ合った。気位の高いアントワネットはモンリヴォー将軍の求愛をかわして、思わせぶりな態度をとりながら彼を翻弄させる。しかし、あることをきっかけに、モンリヴォー将軍との恋に溺れていったのは、アントワネットの方であった。しかし、結局・・。

最初は優位に立っていたはずのアントワネットがモンリヴォー将軍に心を奪われていく様子は、引き込まれるように見入ってしまった。自分に屈服していたはずの男性・・その男性との心理的力関係がある日逆転し、男性がその時から手のひらを返したように冷たくなってしまったら・・。不安になると同時にどんどんその男性への想いが募るというあたりは、アントワネットにすごく感情移入ができた。恋愛とは、相手を縛りながら、自分も縛られるものなのだ。相手を翻弄しているはずが、結局自分が翻弄されていることに。

冒頭のマヨルカ島修道院でのミサをしてシーンで、モンリヴォー将軍がアントワネットに「あなたは、かつて私のものだったのに!」と叫ぶのだが、男性ってやはり征服欲というか「昔自分のオンナだった」(表現が不適切だったらスミマセン)という思いが強いのかなぁ・・なんて普遍的な男女の関係についてまで、深く考えてしまった。そういう意味では、モンリヴォー将軍は、すごく男性的なのだと思う。かたや、女性はと言うと、軽く見られたくないという思いから最初は屈することはなくプライドを高く保ち続けていても、「彼のものになった」(身体的な意味ではなく)と感じた瞬間から従順になり、愛にのめり込んでいってしまう。しかし、最後の最後まで、ある種のしたたかさは持ち続けるもの。

登場人物も少なく二人の対話が中心なので、映画よりも演劇に向いているとも言えなくはない。しかし、美術はすばらしく、豪華な衣装や当時の社交界の華やかさが堪能できる。また、修道院のあるマヨルカ島の風景も美しい。原題の意味は、「斧に触れるな」。本作において「斧」が指すものとは・・?ラストのシーンで、モンリヴォー将軍がつぶやく言葉がとても印象的。この言葉で、二人の愛が成就するかどうかはもはや本作のテーマではなく、二人の恋愛の過程こそが人生そのものなのだと感じさせられた。斧の触れることなく貴族社会で円満に生きていくこともできたはずの二人が、斧に触れてしまったために・・。

「駆け引きの過程が長すぎる」、「じれったい」、などという酷評もあるのようだが、私的には忘れることのできない作品。二人のセリフや表情、身のこなし方一つ一つから、愛の魔力に取りつかれた男女の想いが溢れ出ているように思えた。★3.9
宮廷画家ゴヤは見た
2006 アメリカ スペイン 洋画 ドラマ 文芸・史劇
作品のイメージ:切ない、ためになる
出演:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド

ストーリー展開はそれほど複雑ではなく、時代に翻弄された二人の男女の運命がゴヤの目線で濃厚に描かれた歴史ドラマ。しかし、二人のラブ・ロマンスではない。18世紀末のマドリッド。国王カルロス四世の宮廷画家であるゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は、富裕な商人の娘イネス(ナタリー・ポートマン)とロレンソ神父(ハビエル・バルデム)の肖像画に取りかかっていた。その頃、カトリック教会ではロレンソ神父が指導する異端審問の強化が図られ、イネスがユダヤ教徒の容疑により審問所で取調べを受けることになる。しかし、19世紀に入って、ナポレオン率いるフランス軍がスペインを占領。ナポレオンの兄のジョセフが国王として君臨しスペインを統治。異端者審問は廃止され、捕えられていため囚人はすべて解放されることに。

宮廷に仕える身でありながらスペインのカトリック教会に対する反逆精神を持っていたゴヤは、教会を批判した版画をたくさん描いていた。オープニングとエンディングでは、その数々の版画が映されている。実際、イネスも居酒屋で豚肉を食べなかっただけで、ユダヤ教徒であるという嫌疑をかけられてしまったわけで・・。そこからもユダヤ教徒やプロテスタントを迫害しようとするカトリック教会の絶大な権力と暴走を、伺い知ることができる。

ミロス・フォアマン監督は、「ゴヤは時代の観察者」と表現し、ゴヤをまるでジャーナリストのような位置付けでこの作品を制作したのだとか。信仰心が強すぎるため広い心で自分と違う価値観を認めることができなくなり、それが徐々にエスカレートしていくカトリック教会のある意味狂信的な純粋さといったところを、鋭く描いていると言える。ゴヤは意識的に政治や宗教に関わっていたのではなく、あくまでも普通の人々の視点から時代を見ている。

もっとゴヤの内面が表現されていたり他の代表作(「裸のマハ」など)もたくさん出てくるのかと思いきや、時代の観察者という立場での風刺画や肖像画などの作品が中心となっていて、その辺りがやや物足りなかった。ゴヤは女性を美しく描いたのに、世の中を見る目は厳しかったということのよう(それにしても、王妃の馬上姿についてだけは、かなりブサイクに描いていましたね)。時代を民衆のスタンスから見届けてそれを後世の人々に残すことがゴヤの使命だったと考えると、それも納得できるものなのかも。

釈放された後のイネスについては、ナタリーの迫真の演技と言えるものなのだが、身も心もボロボロになっていく娘という感じで、あまりに哀れで観ているだけで正直つらかった。ゴヤが天使のモデルにしたというくらい美しかったイネスの姿はもはや・・。また、ナタリーが一人二役で、勝ち気な娼婦アリシアとイネスを絶妙に演じ分けているところが凄い(アリシアとは誰なのかについて、ネタバレになるため以下省略)。ハビエルも、時代の流れに翻弄されながらもうまく世渡りをして生き延びる野心溢れるロレンソ神父を、かなり余裕たっぷりに、しかも役柄を自分のものにしながら演じているといった感じ(人間の生臭さが感じられる点は、相当なレベルの高さです)。

映像については、すべてスペインロケを敢行したことが奏功し、かなり見ごたえのあるものに仕上がっている。音楽については、さすがに「アマデウス」ほどではないが、自然にその時代の映像と融合しているといった印象。「黒い絵」と呼ばれる14点の作品など、ゴヤについてもっと知識があればより楽しめた作品だと思うので、ゴヤについて自分なりにもう少し勉強してから再見してみたいと思う。★3.6
ダークロード -闇夜の逃亡者-
2006 スウェーデン 洋画 アクション ミステリー・サスペンス
作品のイメージ:カッコいい、ドキドキ・ハラハラ
出演:マッツ・ミケルセン、アレクサンダー・スカルスゴール、サミュエル・フレイレル

マッツ・ミケルセン様、

あなた様をお慕いしている極東に住む一ファンの感想です。

「しあわせな孤独」出演後には「デンマークで最もセクシーな男」に選ばれ、「フレッシュ・デリ」では演技力が高く評価され、「キング・アーサー」でハリウッドへ進出、「007 カジノ・ロワイヤル」では世界的に知名度を上げ、「アフター・ウェディング」ではファン層の幅を広げたあなた様が、なぜこんな映画に出演されたのでしょうか。

この邦題のつけ方からしてあまり期待はしていなかったものの、内容たるや酷すぎます。B級、いやC級以下の作品と言ってもよいでしょう。今までの作品とは違い、あなた様が主役を独占するということで、プロモーション・ビデオの感覚で鑑賞しました。しかし、画面が暗過ぎてあなた様のお姿がきれいに撮れていない、プロットが複雑過ぎてなんだかよくわからない、あなた様の悪役ぶりが光っていない・・などなど残念な要素ばかりです。

ストーリーはというと、もうどうでもいいような感じですが、便宜上書いておくと:
ベンチャー投資会社の経営で成功した実業家トーマス(マッツ・ミケルセン)。ある日トーマスの経営パートナーが何者かに殺害され、その容疑者として逮捕されてしまう。無実を訴えるトーマスだったが、そんな中過去トーマスに追い詰められて自殺を図ったはずの男モーガンから電話が。妻子の命が惜しければ、海外口座のアクセス・コードを教えろ、と迫られる。そして、トーマスは、妻子を守るために警察の目を盗んで逃走する・・といった感じでしょうか。

背景となる景色は北欧だけどストーリー展開はちょっとハリウッド的かなとも思い、オープニングは少し期待が高まりました。しかし、その期待感も失速・・。また、ビデオ・テープに写っていたもので真実がわかるところは、ゾクっとさせられました。でも、その後のシーンが意味不明。トーマスが極悪人なのかそうでもないのか、超中途半端な感じなのです。エンドロールに流れる音楽もいけません。なぜユーロビートなのでしょうか。この点からもわかるように、本作がはっきり言って駄作となっているのは、あなた様のせいではありません。演出に敗因があります。喰うか喰われるかのビジネスの非情さを描きたかったのでしょうが、全く描ききれていません。そして、プロットを分かりにくくしている脚本も、また問題です。

お願いです。ハリウッドのオファーを受けてください。世界中のファンがそれを望んでいるはずです。あなた様のお姿をロードショー劇場の大画面でまた観れる日を、心待ちにしています。

作品の内容(1.0)+マッツ・ボーナス(0.5)=★1.5
なお、マッツ・ボーナスとは、あなた様が長い足で走るお姿が観れたこと、そしてカッコよくビジネス・スーツを着こなしているお姿が観れたことの評価加算分です(「アフター・ウェディング」でのスーツ姿は、役柄上いかにも借り物のスーツを着たという感じでしたが)。
ザ・ダークウォーター ビギニング・オブ・パニック
2006 カナダ 洋画 ミステリー・サスペンス
出演:エマ・コールフィールド、デヴィッド・オース、トレイシー・ウォーターハウス、ダリル・シェトルワース

怖くもなかったし、ドキドキ・ハラハラ感もなかった作品。遺産相続によって莫大な資産を受け継いだケイトが、家族とともに遺産として残された豪邸に引っ越してくる。そして、そこで亡くなった父の姿や残忍な殺人の映像を見るようになる。心霊現象なのか、ケイトの妄想なのか、夢なのか・・?原題は、 “Deadly Inheritance”(「恐怖の遺産相続」みたいな感じ)。なのに、なぜこの邦題・・?

なんだか辻褄の合わないところだらけだし、全体として浅い仕上がりになっている。後半はなんとか観れるが、前半はかなり退屈。何度も途中下車しようと思ったけど、観た以上一応犯人が誰か知りたいという理由だけで、がんばって最後まで鑑賞。ラストで犯人がわかるんだけど、確かに意外は意外。でも、その意外性に驚くというより、「えー、ここまで引っ張っておいて、それはないんじゃないの?」と思ってしまった。「ホワット・ライズ・ビニース」のパクリのような部分もあり、ストーリーも斬新とは言い難い。いろんな人を怪しく見せかけて、結局犯人当てのミステリーにしているだけといった感じ。

サイキックな要素を取り入れるのであれば、もっと掘り下げようはあったと思う(ネタバレ自粛のため具体的には書けませんが)。母親からの超常的能力の遺伝も「恐怖の遺産相続」の一部・・と観客に感じさせる脚色を加えれば、結構おもしろかったかもしれない。そして、その能力は娘へと・・とかいくらでもサイコな方面で膨らませていけるのに。変にミステリーっぽくして、観客に犯人当てをさせようとしているから、中途半端になってしまっている。ミステリーならミステリーで、もっとヒネリがほしいところ。ホラーならホラーで、もっと怖いべき。サイコ・サスペンスならサイコ・サスペンスで、もっと深いべき。

莫大な遺産を相続しても良いことばかりじゃないのね・・ということくらいしか、他に感想と言える感想はない。消化不良な感じが残り、犯人は誰なのかアレコレ考えて損をしたような気が。比較的新しい作品だけど、あまり人気がない理由の方が氷解した。★1.3
アフター・ウェディング
2006 デンマーク 洋画 ドラマ ラブロマンス
作品のイメージ:切ない、カッコいい
出演:マッツ・ミケルセン、ロルフ・ラッセゴード、シセ・バベット・クヌッセン、スティーネ・フィッシャー・クリステンセン

マッツ・ミケルセンの魅力満載のスサンネ・ビア監督作品。インドで孤児たちの支援活動を行っているヤコブ(マッツ・ミケルセン)は、母国デンマークの実業家ヨルゲンから多額の寄付金のオファーを受ける。デンマークに帰国しヨルゲンに会ったヤコブは、ヨルゲンから娘の結婚式に出席してほしいと言われる。その結婚式でかつての恋人ヘレネに再会するヤコブ。ヘレネはヨルゲンの妻になっていて、娘のアナはヨルゲンの実の娘ではないことを知る。アナの実の父は、なんとヤコブだったのだ。この再会は偶然なのか、ヨルゲンが意図したものだったのか・・。

ストーリーは凡庸で、結婚式の娘のスピーチでその後の筋書きが見えてしまう。それに、結婚式だというのに過去の出生の秘密なんか穿るか・・というところが現実離れしている。新婚なのに、新郎を放っておいて実の父のことばかり考えているアナもいかがなものか。そんなだから、浮気されてもしようがない。また、結婚するくらいのいい歳になっているのに、両親と実の父に甘えてばかりのアナには、ちょっと鼻白んでしまった。ラストも、「インドの子供たちは一体どうなっちゃうのよ」と思ってしまった。インドの孤児たちを家族のように思っていたヤコブでは・・?やはり血の繋がりを選んじゃうの・・?それとも、ヨルゲンとの約束があったから・・?インドの子供たちへの想いがあったからこそ、家族の大切さや守るべきものを認識したから・・?

とは言え、スサンネ・ビアの作品だけあって、人物の感情が映像を通じて豊かに表現されている。目や口元の表情がクローズアップされて、そこからそれぞれの心情が痛いほど観客に伝わってくるような感じ。花や植物のフラッシュの挿入が心象風景の一部となっているのも見事。主要な四人の気持を緻密に丁寧になぞるように描いているところは、「ある愛の風景」「しあわせな孤独」と共通するものがある(アナの夫がこの四人の中に入っていないのは、ちょっとかわいそう)。脚本も悪くない。「愛していても、お互い傷つけ合うだけ」というヘレネのセリフが印象的。また、ヨルゲンにある決断を迫られたヤコブはそれと同様にインドの少年にある決断を迫るという相似形の構図を、自然に取り入れている。

本来ならばヨルゲンに感情移入して、「やるせない」と感じるべき作品なのだろうが、ちょっと別方向から鑑賞してしまった(以下、やや冷静さを欠きつつデレデレな感じで書きます)。内容はさておき、個人的には大満足の作品。というのは、マッツ・ミケルセンが光っている。もう、マッツ・ミケルセンのための作品と言っても良いのではないか。四人の中でのいちばんの主役は、ヨルゲンではなくヤコブだと思う。「キング・アーサー」では完全な脇だったのでしかたなかったとしても、「しあわせな孤独」では印象薄、「007 カジノ・ロワイヤル」のル・シッフル役では「カッコいい悪役だな」くらいの感想だったのが、本作で完全にゾッコンになってしまった。元プロダンサーだけあって、すごい体してるし。パーティーでダンスするシーンがあって、なぜか本作に不似合いな曲(The Weather Girlsの「ハレルヤ・ハリケーン」(“It’s Raining Men”)がかかるんだけど、マッツがその曲でアナ役のスティーネ・フィッシャー・クリステンセンとダンスする・・マジで彼女が羨ましかったわ〜。「007 カジノ・ロワイヤル」を再見して、マッツの魅力を検証せねば。

というわけで、作品自体は★3.3くらいなのだが、マッツの魅力のボーナス(+0.5)を加えて、★3.8。
プレステージ
2006 アメリカ 洋画 ミステリー・サスペンス ドラマ
作品のイメージ:ドキドキ・ハラハラ、スゴイ
出演:ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、スカーレット・ヨハンソン

クリストファー・プリーストの小説「奇術師」を、クリストファー・ノーラン監督が映画化した作品。本作自体が一つのマジックのような仕組みになっていて、監督から観客への挑戦状のように感じられる。集中して観ないと監督の仕掛けた細かいトリックを一回で全て見破るのは難しいが、その入り組んだような深甚さは見応えがある。「メメント」と同様に、複数回の鑑賞に耐え得る作品でもある。

19世紀末のロンドン、若き二人の男性、アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベイル)は、ある奇術師(マイケル・ケイン)のもとで一緒に修業を積んでいた。アンジャーの妻は二人の助手を務めており、水中脱出のマジックの舞台で失敗し溺死してしまう。アンジャーは、妻の溺死の原因はボーデンのロープの結び方だと思い、ボーデンを恨むことに。それ以来、二人は互いに奇術を競い合い、騙し合い、邪魔し合うようになる・・といった感じのストーリー。但し、時間軸がバラバラになっていて、アンジャーの妻が溺死する前後が交錯している。

タイトルとなっている「プレステージ」とは、手品における最終段階のことを指すらしい。(観客に種も仕掛けも無いことを証明するヽ稜А淵廛譽奪検法▲僖侫ーマンスを行う展開(ターン)、そしてマジックショーを完成させる0龍函淵廛譽好董璽検砲劉の段階に当てはまる)。パフォーマンスを得意とするエンターテイナーのアンジャーとアイデアに優れたボーデン。二人の騙し合いが見物。巧みな頭脳戦と心理戦。いくつかのどんでん返し。ラストで種明かしがされるのだが、それを聞いた観客は一つ一つのシーンの意味を思い出しながら飲み込む、といった作業を要求される。時代と舞台設定においては「幻影師アイゼンハイム」と共通する部分はあるが、プロット自体は本作の方が複雑で、内容もドロドロとしている。そして、たくさんの伏線が張り巡らされてある。その張り方も見事。

伏線を明かすとネタバレになってしまうので、キー・アイテムだけを列挙すると:日記、瞬間移動、鳥籠、替え玉、スパイ、水槽、猫、シルクハットなど。スパイ(スカーレット・ヨハンソン)については、どちらからどちらへのスパイなのか・・?誰が誰の替え玉なのか・・?ボーデンは自分の妻に対して、嘘をついているのかいないのか・・?日記はいつの時点のものか・・?ボーデンは、アンジャーの妻の死因となったロープの結び方を本当に覚えていないのか・・?といったところが、作品鑑賞後に話が弾むところだと思う。

キャストも豪華。主役の二人とスカーレット・ヨハンソンに加えて、マイケル・ケインも重要な役割を演じている。マイケル・ケインのセリフの一つ一つに注目しながら、細かいところを再度検証してみたいくらい。そして、本作にSFの要素を加えているテスラ博士役で、デヴィッド・ボウイが出てきたのにはビックリ!(しかも、フツーのおじさんって感じで役をこなしていました)

今月はノーラン監督強化月間ということで(彼の作品を観るたびに、毎度同じことを書くようで恐縮ですが)、またまたノーラン監督の世界に浸ってしまった。本作については、「SFの要素まで入れるなんて、そんなのあり?」「おおよそのオチの見当はついてしまう」「いろいろ伏線を張り過ぎていて、途中で眠たくなる」などのご意見もあるかと思うが、釈然としないというか謎だらけのこういった作風は、私は結構好きかも。★4.1
007 カジノ・ロワイヤル
2006 イギリス, チェコ, ドイツ, アメリカ 洋画 アクション スパイ
作品のイメージ:カッコいい、ドキドキ・ハラハラ、スゴイ
出演:ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、カテリーナ・ムリーノ

「007 慰めの報酬」の予習のための鑑賞だったのだが、「バットマンビギンズ」と同様、その目的以上に収穫があった作品。1967年にも映画化されていて、一応リメイクということらしいが、1967年版とは違い原作にかなり忠実な内容になっているとのこと。6代目ジェームズ・ボンド役に抜擢されたダニエル・クレイグのシリーズ初舞台作品でもある。

他の007シリーズの作品では、いわゆるソツなく仕事をこなすジェームズ・ボンドが活躍するが、本作ではソツがありすぎるボンドになっている。00のステータスに昇格したてのボンドは、失敗を繰り返しM(ジュディ・デンチ)に小僧のように叱られたり、恋に堕ちて仕事の脇が甘くなったり、カジノで負けて愚痴をこぼしたり・・。「人間的未熟さが描かれている」という批評もあるみたいだが、どちらかというとまだ新人だからしようがない不器用さが描かれて、なんだかかわいい。

アクションはド派手で、見応えはあり過ぎるくらいにある。テンポも速く脚本もウィットに富んだセリフが詰まっているため、ついていくのが息切れするくらい。145分とちょっと長めだが、その長さを感じさせない。本作の興行収入は、シリーズ最高記録を樹立したというのも頷ける。今回のボンド・ガールであるエヴァ・グリーンは、好みが分かれるかもしれないけど、まなざしがちょっとペネロペ・クルス似で、瞳の色が黒のパンツ・スーツによく似合うエキゾティックな感じの女優さん。

「カジノ・ロワイヤル」でのル・シッフルとの対決は、ポーカー。ポーカーのルール、特に手の役の強弱を知っていると、より楽しめると思う(私は、鑑賞後にポーカーのルールをネットで調べて復習しました)。ヨーロッパでのロケが奏功して、各地の絶景を鑑賞できるという特典も付いている。なので、観客は、まるでヨーロッパを旅行しているような贅沢な気分を味わうことができる。ベニスの町も出てくるのだが、そこで建物が崩壊するシーンが圧巻。

それにしても、ル・シッフルのあの拷問のしかたはちょっとね(でも、原作にもあるらしいんですよね、あのシーン)。もっと他の方法を思い付かなかったのかしら。ラストは、例のセリフで決めてくれる。「007 慰めの報酬」への序章であると改めて認識させられる、次回作への期待を高めてくれるラストである。★4.2
ミス・ポター
2006 アメリカ 洋画 ドラマ 伝記
作品のイメージ:感動、ほのぼの、癒される、かわいい
出演:レニー・ゼルウィガー、ユアン・マクレガー、エミリー・ワトソン、ビル・パターソン

ピーターラビットに興味がなくても、感動が味わえる作品(私も、ピーターラビットの絵はよく見かけるのですが、絵本は読んだことはないです)。絵本のストーリーを知らないとついていけないところは全くないし、「児童文学作家の伝記」という堅い感じもしない。ピーターラビットの生みの親であるビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)の少女時代の経験から始まり、一人の女性が人生の苦難を乗り越え道を切り開いていく過程が、ロンドンや美しい湖水地方を背景に、自然に描かれている。観る側も、そんな中にスーッと溶け込めるような感じ。

当時の英国上流社会で、女性が既成概念を超えた生き方を選択するなんて、考えられもしなかったことだろう。ビアトリクスは自分のやりたいことを職業にし、自分の好きな人と結婚して、自分の信念を貫くために自分の資産を使う。不幸な目にも遭いながらもそれに負けない、ステレオタイプな価値観を押しつけられてもそれに屈しないビアトリクスの生き方には共感でき、ある意味羨ましくも思う。(ビアトリクスの母親は当時のステレオタイプの象徴なんでしょうね)。

エンドロールを見て意外だったのが、歌が2曲しか使われていないこと。ビアトリクスの相手役のユアン・マクレガーが歌う”Let Me Teach You How To Dance”(「ダンスをおしえてあげるよ」)と、女性シンガーが歌う”When You Taught Me How To Dance”(「あなたがダンスをおしえてくれたとき」)。どちらの曲も、作品のイメージに合っている。2曲しかないが、音楽に飽きがくるなんてことも、全然ない。

レニー・ゼルウィガーは、あの独特の声、しゃべり方と表情が本作でも健在。彼女なりの「ミス・ポター」を一生懸命演じているのが、伝わってくる。但し、この役は彼女じゃないといけないとまでは言えない。ユアン・マクレガーは、純情で誠実な青年役にうまくハマっている。ユアン・マクレガーの姉役のエミリー・ワトソンは、いつにも増して貫録が・・。

タイトルを「ビアトリクス・ポター」ではなく、「ミス・ポター」としているところが、味がある。また、ビアトリクスがピーターラビットやその仲間たちを描くときに、描いている途中のキャラクターが紙上で動き出すのがかわいいし、微笑ましい。最初と最後にビアトリクスが同じ言葉を語るのだが、その言葉がしっかりと心に刻み込まれた。★3.7
ファーストフード・ネイション

2006 アメリカ, イギリス 洋画 ドラマ
作品のイメージ:ためになる
出演:グレッグ・キニア、イーサン・ホーク、アヴリル・ラヴィーン、パトリシア・アークエット

「スーパーサイズ・ミー」「ダーウィンの悪夢」を足して二で割って、地味にしたような作品。食の実態に迫っているところは前者と共通点があり、貧困の連鎖を描いているところは後者に似ている。ドキュメンタリー・タッチの社会派ドラマにしてはわかりやすいし、真面目に制作しているという熱意が観る側に伝わってくる。

但し、それほど深いドラマではない。まず、食の問題については、精肉工場のラインの流れが速すぎて解体作業が追い付かず、作業が杜撰になり食肉が大腸菌に汚染されてしまう、といった内容に尽きる。それ以上のものではない。食の問題を斬るのであれば、せっかくショッキングな屠殺シーンまで入れているのだから、そこから深く掘り下げて欲しかった。それに、ファストフード店でのアルバイトを止めることで自分自身を納得させたり、「フェンスを壊して牛を解放しよう」という学生のアイデアは、ちょっと稚拙な感じが。

貧困の連鎖については、「貧困→メキシコからアメリカへの密入国→セクハラも含めた劣悪な労働環境→利益至上主義/格差社会→貧困」というサイクルが端的に示されている。メキシコでは一日3ドルの稼ぎが、アメリカに渡れば時給10ドルに跳ね上がるのなら、自分が生きていくため家族のために密入国する人が後を絶たないのも、わかる気がする。いっそのこと、食の安全の問題と分散させた展開ではなく、貧困の連鎖の問題の方に焦点を当てたかたちで仕上げてもよかったのではないだろうか(そうすると、タイトルまで変える必要がありますね)。でも、二つの大きな問題を同時に扱うと、どうしても広く浅くなってしまうので。

それにしても、作品のつくり自体は予算を抑えた感じなのに、とにかくキャストが豪華。イーサン・ホーク、ブルース・ウィリス、グレッグ・キニア、パトリシア・アークエットにアヴリル・ラヴィーン・・etc.(テーマがテーマだけに、みんなギャラに関係なくボランティア感覚で出演しているのでしょうか)。 ★2.7

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